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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜
Side-黒(ヒノカグツチ): 実戦
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「……11時方向、高度328に敵影確認! 神話的概念生命体です、数は5628、来ます!」
その声が鳴り渡ったのは、先程の作戦行動説明より僅か5分ほどした後だった。
それまでの航行は順調にも程があるぐらいで、敵機の存在など微塵も認められはしなかったが———。
「総員、第一種戦闘配置! 右舷砲雷撃戦よーい!」
神話的概念生命体、機神によって作られた非炭素系概念付与生命体の総称である。
『敵対者を排除する』という命令じみた概念が付与されたコイツらに対しては、あらゆる通話手段———それこそ、コックの思考投影能力すら通話、対話としての意志疎通の意味をなさなかった。
「魔力支援砲、てーーっ!」
しかしコイツらの厄介なところはその数である。個々で何かしら特異な攻撃方法を持っているわけではなく、基本的に特攻を狙ってくる。
が、数が圧倒的に多い上、スピードも速いのだ。
そのため、第一次、第二次真珠海作戦は、コイツらのために潰されたと言っても過言ではないほどに、人界軍に多大な損害を出している。
「数、減らしきれません! 30秒後接触します!」
『撃ち方止め! 正面魔力障壁展開! 本艦に傷をつけさせるな、いいな!』
「しっしかし司令、魔力障壁展開直後、この艦も魔力障壁に衝突するのでは……そこの試運転もロクに行っては……」
『知らん、気合いで乗り切れ!』
「「ええっ?!」」
『幸い魔力障壁の形状は歪曲している、下手に神話的概念生命体に直接激突されるよりマシだ! 反動推進型エンジン故進むのが多少遅くなるとは言えど、この艦を用いて魔力障壁を押す!』
「なんて無茶苦茶な……」
『荷電粒子砲を使うか?……そっちの方が倫理的にも無茶苦茶だともぉっ! 魔力障壁、前面展開っ!!!!』
可視化された黄色の魔力障壁が展開された直後、艦内に衝撃が走る。
「うおわあっ!!」
魔力障壁と本艦が接触したのだ。
「続いて神話的概念生命体と接触します!」
『衝撃緩和用意をしろ!……よし、気合いで乗り切れっ!!!!』
マジでそのつもりかよ、と艦内クルーが一斉に口をポカンと開けた瞬間だった。
「おおおわあああっ!!」
「きゃああああっ!!!!」
『来たか特攻……! 意外と衝撃は通る、か……魔力障壁の損傷状況は……っ?!』
「魔力障壁……っ、損傷率……57、59%……ただ今60%を突破しました、敵機魔力点総数は残り4259!」
「視界があっ、視界が見えないっ!!!!」
「クソ、奴らめ……魔力障壁前で爆散などしやがって……!」
「損傷率80%突破! このままでは危険です!」
『ならば……コック、お前の出番だ、目覚めろ!』
『エンジェルユニット機構起動、コックピット-ver.2-、起動。魔力概念加速式正面主砲、発射シーケンスに入ります』
いつものように陽気に話す機巧天使はそこにはおらず、兵器の1機構として組み込まれた、意志のない機械の声のみが流れ出す。
「魔力概念加速式正面主砲、発射シークェンスに入りました!」
シークェンスの言い方にも違いがあるのも、コックの無機物感を助長させる。
『魔力概念充填、超加速開始…………』
「損傷率94%!……敵機魔力点未だ3000を切っていません!」
『魔力概念加速巡行……出力最大……』
「損傷率98%を突破! 計算上3秒後に完全消失します!」
「2秒後発射だ、いいなコック!」
『最大出力維持……加速巡行中』
「損傷率99.———8%! 晴れます!」
『出力、臨界……っ!!!!』
「聞いていたなコック、発射だっ!!!!」
先程まで爆煙で覆われていた視界は、今度は瞬く閃光に包まれる。
「おわあああっ!!!!」
「本艦にも多少被害が出ています、このまま照射は……」
「構わん、続けろ! ヤツらの大半を焼き払ってくれる!!!!」
「敵機魔力点……急激に減少! 1357、1268、1121、987……!」
「その勢いだ、しかし……敵機の減りが意外と遅い……?」
「敵機、回避行動をとっています! ただぶつかってくるだけの能無しじゃ……!」
「なかった、というわけか……!」
「敵各機方向転換、こちらへと向かってきます!」
「…………ぬぅ……ホーミングレーザーだ! 敵各機をロックオンしろっ!」
瞬間、こちらに向かって突進を続ける敵各機の周りに、橙色に縁取られた四角模様が現れる。
その数、数百個以上。ディスプレイは、重複した囲いのオレンジで埋め尽くされていた。
ディスプレイに大量のみかんでもぶつけたのかとでも言いたくなるほど穢らわしい光景であった。
「ホーミングレーザー、一斉掃射!……っ?!」
「魔力反応……直下200mからですっ!」
既にレーザーが敵各機1機1機に対して降り注ぐ爆裂の雨の中、その中を下から1つ貫く、蒼き閃光があり。
その下よりの閃光は、瞬く間に16とその数を増した。
「……第7、8、9、10機動小隊の援護射撃です!」
「ようやく来たか———!」
艦内が大きく揺れる。
次秒、ディスプレイには黒い煙が立ち込める。
「第1滑走路に敵機被弾! 電磁カタパルト、破損しました!」
「その他被弾なし、致命的損傷、皆無!」
「今になってまた被弾か……敵各機の状況は?」
「魔力点反応43!……もうすぐ鉄の雨を抜けます!」
「目標地点まで残り10!」
「敵各機魔力点反応、完全消失っ!……大穴方面、標的Z反応点、以前変化なし!」
「急速降下、及び潜航を図る!……エンジンブースターを4時の方向に向けろ!」
ヒノカグツチ両部に付けられたエンジンブースターがゆっくりと真下に向かってその向きを変え、それに伴い艦正面の向きも下へと向けられる。
「左舷魔力支援砲は全て大穴に向けておけ、魔力障壁出現初期位置も大穴方面に固定!」
「魔力支援砲損傷なし、全て8時の方面に向きました!」
「いよぉし……全艦、最大船速! 急速降下、開始っ!!!!」
その声が鳴り渡ったのは、先程の作戦行動説明より僅か5分ほどした後だった。
それまでの航行は順調にも程があるぐらいで、敵機の存在など微塵も認められはしなかったが———。
「総員、第一種戦闘配置! 右舷砲雷撃戦よーい!」
神話的概念生命体、機神によって作られた非炭素系概念付与生命体の総称である。
『敵対者を排除する』という命令じみた概念が付与されたコイツらに対しては、あらゆる通話手段———それこそ、コックの思考投影能力すら通話、対話としての意志疎通の意味をなさなかった。
「魔力支援砲、てーーっ!」
しかしコイツらの厄介なところはその数である。個々で何かしら特異な攻撃方法を持っているわけではなく、基本的に特攻を狙ってくる。
が、数が圧倒的に多い上、スピードも速いのだ。
そのため、第一次、第二次真珠海作戦は、コイツらのために潰されたと言っても過言ではないほどに、人界軍に多大な損害を出している。
「数、減らしきれません! 30秒後接触します!」
『撃ち方止め! 正面魔力障壁展開! 本艦に傷をつけさせるな、いいな!』
「しっしかし司令、魔力障壁展開直後、この艦も魔力障壁に衝突するのでは……そこの試運転もロクに行っては……」
『知らん、気合いで乗り切れ!』
「「ええっ?!」」
『幸い魔力障壁の形状は歪曲している、下手に神話的概念生命体に直接激突されるよりマシだ! 反動推進型エンジン故進むのが多少遅くなるとは言えど、この艦を用いて魔力障壁を押す!』
「なんて無茶苦茶な……」
『荷電粒子砲を使うか?……そっちの方が倫理的にも無茶苦茶だともぉっ! 魔力障壁、前面展開っ!!!!』
可視化された黄色の魔力障壁が展開された直後、艦内に衝撃が走る。
「うおわあっ!!」
魔力障壁と本艦が接触したのだ。
「続いて神話的概念生命体と接触します!」
『衝撃緩和用意をしろ!……よし、気合いで乗り切れっ!!!!』
マジでそのつもりかよ、と艦内クルーが一斉に口をポカンと開けた瞬間だった。
「おおおわあああっ!!」
「きゃああああっ!!!!」
『来たか特攻……! 意外と衝撃は通る、か……魔力障壁の損傷状況は……っ?!』
「魔力障壁……っ、損傷率……57、59%……ただ今60%を突破しました、敵機魔力点総数は残り4259!」
「視界があっ、視界が見えないっ!!!!」
「クソ、奴らめ……魔力障壁前で爆散などしやがって……!」
「損傷率80%突破! このままでは危険です!」
『ならば……コック、お前の出番だ、目覚めろ!』
『エンジェルユニット機構起動、コックピット-ver.2-、起動。魔力概念加速式正面主砲、発射シーケンスに入ります』
いつものように陽気に話す機巧天使はそこにはおらず、兵器の1機構として組み込まれた、意志のない機械の声のみが流れ出す。
「魔力概念加速式正面主砲、発射シークェンスに入りました!」
シークェンスの言い方にも違いがあるのも、コックの無機物感を助長させる。
『魔力概念充填、超加速開始…………』
「損傷率94%!……敵機魔力点未だ3000を切っていません!」
『魔力概念加速巡行……出力最大……』
「損傷率98%を突破! 計算上3秒後に完全消失します!」
「2秒後発射だ、いいなコック!」
『最大出力維持……加速巡行中』
「損傷率99.———8%! 晴れます!」
『出力、臨界……っ!!!!』
「聞いていたなコック、発射だっ!!!!」
先程まで爆煙で覆われていた視界は、今度は瞬く閃光に包まれる。
「おわあああっ!!!!」
「本艦にも多少被害が出ています、このまま照射は……」
「構わん、続けろ! ヤツらの大半を焼き払ってくれる!!!!」
「敵機魔力点……急激に減少! 1357、1268、1121、987……!」
「その勢いだ、しかし……敵機の減りが意外と遅い……?」
「敵機、回避行動をとっています! ただぶつかってくるだけの能無しじゃ……!」
「なかった、というわけか……!」
「敵各機方向転換、こちらへと向かってきます!」
「…………ぬぅ……ホーミングレーザーだ! 敵各機をロックオンしろっ!」
瞬間、こちらに向かって突進を続ける敵各機の周りに、橙色に縁取られた四角模様が現れる。
その数、数百個以上。ディスプレイは、重複した囲いのオレンジで埋め尽くされていた。
ディスプレイに大量のみかんでもぶつけたのかとでも言いたくなるほど穢らわしい光景であった。
「ホーミングレーザー、一斉掃射!……っ?!」
「魔力反応……直下200mからですっ!」
既にレーザーが敵各機1機1機に対して降り注ぐ爆裂の雨の中、その中を下から1つ貫く、蒼き閃光があり。
その下よりの閃光は、瞬く間に16とその数を増した。
「……第7、8、9、10機動小隊の援護射撃です!」
「ようやく来たか———!」
艦内が大きく揺れる。
次秒、ディスプレイには黒い煙が立ち込める。
「第1滑走路に敵機被弾! 電磁カタパルト、破損しました!」
「その他被弾なし、致命的損傷、皆無!」
「今になってまた被弾か……敵各機の状況は?」
「魔力点反応43!……もうすぐ鉄の雨を抜けます!」
「目標地点まで残り10!」
「敵各機魔力点反応、完全消失っ!……大穴方面、標的Z反応点、以前変化なし!」
「急速降下、及び潜航を図る!……エンジンブースターを4時の方向に向けろ!」
ヒノカグツチ両部に付けられたエンジンブースターがゆっくりと真下に向かってその向きを変え、それに伴い艦正面の向きも下へと向けられる。
「左舷魔力支援砲は全て大穴に向けておけ、魔力障壁出現初期位置も大穴方面に固定!」
「魔力支援砲損傷なし、全て8時の方面に向きました!」
「いよぉし……全艦、最大船速! 急速降下、開始っ!!!!」
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