Wit:1/もしも願いが叶うなら〜No pain, no live〜

月影弧夜見(つきかげこよみ)

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断章Ⅱ〜最終兵器にアイの花を〜

会敵

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「陣形が崩れる……今が攻め時、ここで畳みかける!」

「「「了解!」」」


 風を一身に受けながら、次なる標的に狙いを定め、落ち続ける。
 まだ外壁の上に到達していないサイドツーは2機。

 その1機、今いるところより若干左側に位置するサイドツーに、次なる狙いを定め、そちらに行くために体勢を変えながら落ち続ける。

 上空では、撃墜音が絶え間なく鳴り響いていた。……他の第3メンバーが頑張ってくれてるんだろう、ならば———、

「ここで斬り落とす!」

 
 刀を構えた瞬間、狙いを定めたサイドツーからの銃撃が始まった。
 なんとか銃弾はかわし続けてはいたものの、発砲の閃光のせいで前方が見えにく———あ。


「……やべえ、死んだ」

 抜けてしまった。
 さっきのサイドツーを斬り落とすこともなく、そのサイドツーを用いて方向転換をできることもなく、そのままサイドツーの横を抜けてしまった。


 ———つまり、俺———落ちる?


「うわ、うわ、うわぁぁぁぁぁあっ!!!!」

 耳の側で鳴り響く轟音と共に、今度こそ歯止めが効かなくなった体が落ち続ける。

 ……いや、ヤバい、フツーにヤバい、なんだかんだで絶体絶命だ。

 どこかに、足場として使えそうなサイドツーが……あ、いた。

 見つけたサイドツーは、その背面にコンテナ……と思しき黒い長方形のボックスを背負っていた。

 ……重量設計どーなってんだってデザインだが、そんな敵のことなんか気にしてる場合じゃない。


「とりあえず、アレに……!」

 受け身の体勢をとる。
 とりあえず、今は死なないことが優先だ、このサイドツーを斬り落とす……なんて選択肢は論外だ。

「っう!」

 ガゴンッ!

 大きな金属音が響く。俺はそのコンテナの上に着地することができた。

 しかしそのサイドツーは狼狽えることなく、未だに少しずつその高度を上げ始めていた。

「少しばかり……お邪魔させてもらう」




 安堵———した数秒後。

「のおわぁぁぁあっ?!」

 サイドツーが急激にスラスターを吹かし、左に激しく移動する。
 そしてそれに伴って、俺の体にも力がかかりつつあった。



「っぶねー、ふざけたことしやがって……!」

 なんとかコンテナの隅に片腕のみで掴まり、一応は事なきを得た。

 が、そのまま乗ってても振り落とされるだけか、ならばこのまま掴まってさえいれば———、


『み~~~っけ!』

 ……なんだ、今の女の声。
 ものすごく既視感が強いのだが。





 次の瞬間。
 俺の真横———サイドツーの真横を、銃弾が通り抜けた。


「おぉぉぉわぁぁぁあっ?!」

 ……と共に、サイドツーは上へと急速発進。
 しかし、なぜか上からは———あまりにも、生身の人が撃つ銃にしては銃声が響き、それが発された場所からは、こちらに向かい無数の銃弾が撃ち込まれ始めていた。


「———このままじゃラチがあかねえ、行くしか———!」

 掴んだ腕に力を入れ、コンテナの上へと飛び乗る。
 迫り来る銃弾。味方のもの———ということは分かっている、だが……


「ここで死ねないんだ、俺はまだ死ねないんだ……っ!」

 コンテナを前に走り、サイドツーとコンテナの結合部まで足を進め、そして迫り来る銃弾を———この刀で斬り落とす。

 あんなデカい銃弾を刀で斬り落とす……刀がどうなるかなんて、今は知ったこっちゃない、ただ今は———自分が生き延びることだけ考えるだけだ。

 目を大きく見開き、銃弾1つ1つの動きを目で捉える。素早く動くが、一度捉えてしまえば、弾道予測なんて簡単につく。

 だから、その予測弾道に合わせ———刀を振るだけ。本当になことだ。






 斬り落とした。
 10発———もの弾丸、その全てを———サイドツーの前で斬り落としてみせた。

 未だサイドツーは上昇中、だが後数秒で、あの外壁にたどり着く……!




 ———不意に、上を見てしまった。
 俺を、というかこのサイドツーを攻撃した味方の姿を。



「え、なん……なんで、アレ……!」



 外壁の縁に立っていたのは。
 その人界軍の……サイドツーと同じくらいの大きさをし、全身を黒い装甲で覆った、コレまた巨大な人型の機械だった。……信じられない。
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