愛ゆえに

宮浦透

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1話 めいめい

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 「次これ、この映画」
 カーテンから入る陽はやけに明々と部屋全体に広がった。
 「それ見たら今日三本目なんだけど」
 「大丈夫。千早なら」
 朝、家に千早が来た時は恋愛ものを見た。互いに感化されてそれしか考えられなくなった。二本目はシリアス。またやっぱり感化して泣きそうにもなった。そう並ぶなら次はきっとホラーだと思ったが、そんな訳はなかったらしい。
 「そろそろ大丈夫じゃないかも。愛唯とは、違うし」
 「でも折角二人で家でゆっくり出来るし…」
 「だらだらするって、どう?」
 今までの映画鑑賞はだらだらとはまた違うものなのか。二人でこんなことを出来るなんて、一生の記憶に残るほどの最高の休日になるような気がしていたが、それは千早にも同じことを言えるわけではなかったらしい。
 「…分かった。そのホラー、見よ」
 「いいの?」
 「すっごい良い笑顔になった」
 ずっと前から見たくても、一人ではとても見れなかった映画だ。ましてや二人で見れるなんて、笑みが溢れても仕方ない。
 「その代わり怖くてもこっち近づいたらダメだから」
 ソファーの上で触れ合っていた体が少し離れる。
 「…我慢する」
 「うそうそ、しっかり隣で見るって」
 こんなやり取りは、もう一ヶ月前には存在した。この関係が生まれたのも同時期だから、始まった時からずっとだ。
 「明日、千早はどっか行くんだっけ」
 「サイクリングかな、誘われてるし」
 トールケースからDVDを出すのを手間取るうちに、明日一緒に遊べないことを知る。大体の休日は千早は自転車を遠くまで走らせている。映画鑑賞しか趣味を持っていないと、ここまで一緒にいる時間は減ってしまうらしい。
 「私がサイクリング行くって言ったら、変?」
 「急にどうしたの、大丈夫?」
 戸惑った千早の顔を横目に、訳を話す。
 「一緒にいる時間減るから」
 「…なら、次一緒に映画館行こ、映画見れるよ」
 サイクリングに興味が微塵もないことは恐らく知られている。それほどまでに家を出ることは少ない私生活を送っているのだ。
 「たまには映画館も楽しそう」
 「じゃあ今度ね」
 それを合図にホラー映画は流れ始める。腕は自然と絡み合った。また二時間、楽しくなれる。
 「早く、映画館行こうね」
 「おう」
 まだまだ、きっとこれから先は長い。
 蝉の聲が響くのも気にならない。

 それ程までに、楽しみで、仕方ない。
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