6 / 11
5.君とその小さなウエディングベル
しおりを挟む
今から一年ほど前、旅行船が遭難した。
未だに助けが来ず、百人前後の旅行客が無人島に流れ着いた。
僕は彼女と二人旅行に来ていた。
皆が食料や水不足でバタバタと死んでいく中、僕と彼女だけは生き延びた。
昔から僕は本が好きだった。
おかげで生きるための知識には困らず、今もなおここで二人暮らしている。
「ここままずっと変わらず死んでいくのかな」
一年ほど前、とは言うものの正確に言えるものではない。
流石に一年も経てば電子機器などは尽きていくし、転がる死体の山から使えるものを拝借しても、限界がある。
これからの不安は大きいものだ。
この旅行が終われば結婚式を挙げるつもりだった。
綺麗なチャペルで、大勢の家族に囲まれて幸せな人生を送るつもりだった。
しかしそれももう叶うことはない。
おそらく家族は僕を死んだと思っているし、僕ももうそこまで長くは生きれないことはわかっている。
「せめてもの報いか…」
僕は立ち上がった。
小さなベルのキーホルダーを、君の手に持たせた。
君はその腐敗臭をもろともしないような綺麗さで、小さなウエディングベルを手にした。
君はもう、いない。
君は優しかった。
死にかけた人たちを助けたり、食糧を分けたり、死んだ人を火葬してあげている様子も見た。その度君は涙を流した。
そうしているうちに彼女は病気になった。栄養失調だと思う。自分の最低限の食糧も分けていたのだ。
気づけば彼女は死んでいた。
おそらく、僕は優しくなかった。
助けられなかった不甲斐なさと、自分の愚かさを恥じた。
しかし自分を呪えなかった。
「ごめんな」
こんな人間でごめん。と懺悔と共に彼女の口へキスをした。
これでもう恐らく君の元へ行けるだろう。
右手に握ったウエディングベルを、僕も優しく上から包み込んだ。
悔しいが、ここで僕の人生は幕を閉じるとしよう。
このメモ書きが発見されたのはさらに一年後。ヘリコプターが空から船を発見したことから事態が進んだ。
多くの死体が山のように積まれている場所から少し離れて、二人の死体が抱き合うように死んでいたと当時その無人島に救助に来た人が答えている。
未だに助けが来ず、百人前後の旅行客が無人島に流れ着いた。
僕は彼女と二人旅行に来ていた。
皆が食料や水不足でバタバタと死んでいく中、僕と彼女だけは生き延びた。
昔から僕は本が好きだった。
おかげで生きるための知識には困らず、今もなおここで二人暮らしている。
「ここままずっと変わらず死んでいくのかな」
一年ほど前、とは言うものの正確に言えるものではない。
流石に一年も経てば電子機器などは尽きていくし、転がる死体の山から使えるものを拝借しても、限界がある。
これからの不安は大きいものだ。
この旅行が終われば結婚式を挙げるつもりだった。
綺麗なチャペルで、大勢の家族に囲まれて幸せな人生を送るつもりだった。
しかしそれももう叶うことはない。
おそらく家族は僕を死んだと思っているし、僕ももうそこまで長くは生きれないことはわかっている。
「せめてもの報いか…」
僕は立ち上がった。
小さなベルのキーホルダーを、君の手に持たせた。
君はその腐敗臭をもろともしないような綺麗さで、小さなウエディングベルを手にした。
君はもう、いない。
君は優しかった。
死にかけた人たちを助けたり、食糧を分けたり、死んだ人を火葬してあげている様子も見た。その度君は涙を流した。
そうしているうちに彼女は病気になった。栄養失調だと思う。自分の最低限の食糧も分けていたのだ。
気づけば彼女は死んでいた。
おそらく、僕は優しくなかった。
助けられなかった不甲斐なさと、自分の愚かさを恥じた。
しかし自分を呪えなかった。
「ごめんな」
こんな人間でごめん。と懺悔と共に彼女の口へキスをした。
これでもう恐らく君の元へ行けるだろう。
右手に握ったウエディングベルを、僕も優しく上から包み込んだ。
悔しいが、ここで僕の人生は幕を閉じるとしよう。
このメモ書きが発見されたのはさらに一年後。ヘリコプターが空から船を発見したことから事態が進んだ。
多くの死体が山のように積まれている場所から少し離れて、二人の死体が抱き合うように死んでいたと当時その無人島に救助に来た人が答えている。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
こども病院の日常
moa
キャラ文芸
ここの病院は、こども病院です。
18歳以下の子供が通う病院、
診療科はたくさんあります。
内科、外科、耳鼻科、歯科、皮膚科etc…
ただただ医者目線で色々な病気を治療していくだけの小説です。
恋愛要素などは一切ありません。
密着病院24時!的な感じです。
人物像などは表記していない為、読者様のご想像にお任せします。
※泣く表現、痛い表現など嫌いな方は読むのをお控えください。
歯科以外の医療知識はそこまで詳しくないのですみませんがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる