全てが生

宮浦透

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7.この恋は嘘まみれ

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 「明日遊びに行かない?」
 「ううん。ごめん。予定があるんだ」
 今日も私は君に嘘をつく。これもきっと未来への投資だと信じてる。
 「そっか。なら仕方ないね。また今度」
 「またね」
 そう手を振って楽しかったデートは過ぎ去って行った。明日遊べないわけじゃない。言えば逆に暇なほどだ。
 しかしここですぐに誘いに乗るほど軽い女とは思われたくない。たまに断ることで彼からの愛を増幅させるのだ。告白すれば付き合えるかもしれない、というラインの前後を彷徨わせる。
 ある一定の距離を保たれたとき、人はそれ以上へ踏み込もうとする。それは相手が恋愛関係なら尚更だ。
 それに気づいた時、私は当時好きだった彼に実行した。初めは順調だった。しかし満を持し付き合った途端、彼の様子がおかしくなった。
 何故だか分からなかった。付き合った途端に「誘いを断りすぎ」と文句を言われるようになったのだ。
 そこまでおかしいことをしたように思えない。もっと踏み込んで好いてくれても良いはずだ。私の考えたこの法則に基づけば私が狙った人間は皆私の虜になるはずなのだ。
 だから今回はリベンジマッチをしているということだ。今の彼は純粋無垢だ。何を言っても信じてくれる。私が嘘をついているなどとは思っていないのだ。
 暗闇にポツポツと一定間隔に並ぶ光の下を陽気に跳ねるように帰路を辿る。家までに少し距離があるが、それがまた考える時間を与えられている気がしてとても気に入っている。
 「これで彼も、ずっと私の虜ね」
 今回こそは上手く行ってみせる。一度の失敗は二度もしない。
 「本当の綺麗な女は嘘で着飾るのよ」
 私は綺麗に着飾った服が崩れることも気にも留めず早歩きで帰ることを選んだ。
 真っ暗なはずの路地がとても明るく見えた。
 これから、私は必ず彼を虜にしてみせる。



 「本当、ずっと虜だよ」
 着飾ったはずの綺麗な服を汚く着ているところを見つけたあの日から、僕は既に君の虜だ。
 きっと君は僕がこの路地で君を見つけて後をつけ、出先でナンパをしたことなど知らないだろう。
 「その完璧に嘘をつききれないところが、本当に可愛いね」
 無数の光が並ぶこの道で、僕は未だ彼女を見つめている。
 吸っていたタバコを道端に投げ捨て道を引き返す。
 煙の残り香が道に佇んでいる。
 また明日、彼女の後をつけることにしよう。
 きっと可愛い彼女が見れる。



 この恋は、なんて楽しいんだ。
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