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本編

【10】プレイホテル

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 バーの閉店作業を終えて、夜の街を相川と歩いた。
 オレたちはすぐ近くにあるプレイホテルに入った。


「プレイはセックスあり? なし?」
「えっ!? ありって言ったら、抱いてもらえるんですか……!?」

 ホテルに入って確認したら、なんかめちゃくちゃ驚かれた。あと、プライベートなので気楽な口調で喋ることにした。相川にも楽にしていいと言ったけれど、敬語は外れなかった。
 相川はそこそこ遊んでると思ってたけれど、勘違いだったのだろうか。

「ああ、お互い気が乗ればだけど。ていうか、いつもはどーしてんだ?」
「えっと、いつもは……無しですけど……」

 無しなのか。
 もしかしたら、相川にも誰か好きな人が居るのかもしれない。
 なんとなく、そんな気がした。

「ふぅん……じゃ、セーフワード教えて。あとNGはある?」
「セーフワード……は、カルーアで。NGは……えーっと、とくになしで」

 その様子から、NGがとくにないというのはその言葉通りに捉えるのはどこか危険だと感じた。軽く遊べる相手だと思って誘いに乗ったけれど、たどたどしい返事を聞く限り、読み違えたのではないかという気持ちが大きくなってくる。

 ……相川は多分、プレイには不慣れだ。

 このやり取りに、既視感がある。大学時代の有坂も、初めてのプレイのときは似たような感じだった。ただ、有坂には明確なNGがあったけれど。

「本当に、何しちゃってもいいんだ?」

 失った恋を忘れるために選んだ相手のはずなのに、些細なことで有坂を思い出してしまう。無意識に、似ているところを探してしまっているのかもしれない。心の中で軽く苦笑しながら、わざと口元を歪めて言うと、相川は真っ赤になって俯いた。

「……店長さんがしたいことなら、なんでもされてみたいです」
「んー、じゃあ、まずは店長さんじゃなくて名前で呼んでもらおっかな」
「……えっと、恭介さん……?」

 名前を認識されていたことに軽く驚いた。
 仕事中は名札ネームプレートをつけているので、相川がオレのフルネームを知り得ないわけではないけれど、役職で呼ばれるのは名前を覚えていないからだと思っていた。

「あの、それより1つお願いがあるんですけど……」

 とても申し訳なさそうな顔をして相川が口を開く。

「今日のプレイはGlareなしでお願いできますか?」
「……は?」

 オレはとても間抜けな顔をしていたと思う。
 オレが最後にプレイをした相手は有坂だ。有坂が相手だと、ありったけのGlareを搾り取られるようなプレイになる。それでも足りなかったのだ。それが、今度はGlareなしとは……妙なのを引き当ててしまっただろうか。
 顔を顰めて固まっているオレにどう思ったのか、慌てた口調で相川が弁解をする。
 
「僕、Glareに対してすごく敏感で……カウンターに居るときからずっと恭介さんのGlare感じちゃってて、実はもうかなりクラクラしてて……」

 入口付近に突っ立ったまま喋ってしまっていたが、よく見たら相川はいつの間にか後ろ手でドアに縋り付くように立っていた。

「じゃあ、もう始めてもいいカンジ?」

 そういえば、今日は相川はいつもより多くアルコールを摂取していたかもしれない。Glareとアルコールの影響で理性が揺らいで、欲を抑えるのが辛いのだろう。

「お願いします」

 オレは相川の言葉を聞くと、部屋の中央にあるベッドに腰掛けた。

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