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本編
【12】へなちょこSubの困惑 / 相川湊
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目が覚めたら知らない部屋に居た。
え? え? 一体何が!?
混乱する頭でなんとか昨夜の記憶を呼び覚ます。
そうだ、昨日僕はお酒とGlareに酔ってしまって、店長さんに声を掛けたんだ。
そして、ホテルに行って……
店長さんとのプレイでは、セックスもしてもらえるって聞いて、びっくりした。
店長さんのことは僕の完全な片想いだ。だけど、それが例えプレイの一環だとしても、セックスをしてもらったら疑似的にでも恋人の気分が味わえるんじゃないかってちょっとだけ期待してしまった。
しかも、敬語じゃなくて良いって言われたけれど、恐れ多くてタメ口なんてきけなかった。
店長さんは、プライベートだからってラフな口調で喋ってくれた。一気に距離が近づいたみたいで、嬉しくてクラクラした。
そして、セーフワードとNGを聞かれて……セーフワードってのは中学校のD/S性の授業で習った。それを言えば、DomのGlareを使った支配が効かなくなるって。セーフワードはプレイをするDomとSubが認識していれば何でもいいんだけれど、思いつかないときは『レッド』ってのを使えって授業で習ったので、今まではそれを使っていた。
だけど、店長さんに教科書に載っていた言葉を言うのが恥ずかしくて、僕は店長さんの作ってくれるカルーアミルクが大好きだから、思わず『カルーア』って言ってしまったんだ。
セーフワードって、好きなものじゃなくて、嫌いな食べ物とかを言う人も居るらしい。だけど僕はテンパって、うっかり好物を答えてしまった。店長さん、誤解してなきゃいいんだけれど……僕は自分の犯した大きなミスに、今更ながら落ち込んだ。
NGは正直わからなかったけど、店長さんにだったらなんでもされたいって思っちゃったから、ないって言ってしまった。
プレイででも抱いてもらえれば一生の宝物の記憶になると思ったし、店長さんはなんか酷いことしなさそうだったし……もし酷いことされても、それも思い出になりそうだからイイかなって思っちゃったから。
そしたら、ちょっと意地悪な表情をした後、名前で呼んでって言ってくれたんだ。
……恭介さん……
心の中でそっと名前を呼ぶ。
あれはプレイのときに言われたことだし、プレイが終わったら名前で呼んじゃいけないよな。でも、心の中ではもうしばらくだけ恭介さんって呼ばせて欲しい。
うっかり口に出して呼んでしまわないように、気をつけなきゃなと僕は思った。
それからプレイが始まって……
気が付いたら、恭介さんの足元に跪いて、恭介さんの顔を見上げていた。
そしたら、恭介さんが笑いかけてくれたんだ……!!
恭介さんは接客業だから、勿論お店でお客さんに向ける笑顔は何度も見たことがあるんだけれど。昨日見た笑顔はなんかそうじゃなくて、プライベートな笑顔って感じで、僕は惚れ直した。
Lickって色っぽいCommandを言われたときはドキドキしたし、初めてのCommandだったから上手にできたかわからなかったんだけれど、ご褒美のときには名前を呼んで貰えた。
そうだ、あの時、恭介さんは僕のことを確かに『湊』って呼んでくれた……
初めてお店に行った日に僕は恭介さんに身分証を提示しているので、恭介さんが僕の名前を知っていてもおかしくない。だけど、もう一年も前のことだし、僕のフルネームなんて絶対に覚えてないと思っていたのに……
昨日の記憶はそこで途切れている。
あとは、フワフワしながら、「恭介さん、好き」と繰り返していた気がするのは……夢だったと思いたい。
「……夢じゃなかったらどうしよう……っていうか、その前に、ここどこ!?」
僕はふかふかのベッドで寝ていた。布団の肌触りは良く、なんだかいい匂いがする。
部屋の中には、クローゼットと本棚。少なくとも、恭介さんと一緒に入ったホテルではなさそうだ。モノトーンでまとめられた寝室は、あまり物は多くないけれど、なんだか落ち着ける空間だと思った。
え? え? 一体何が!?
混乱する頭でなんとか昨夜の記憶を呼び覚ます。
そうだ、昨日僕はお酒とGlareに酔ってしまって、店長さんに声を掛けたんだ。
そして、ホテルに行って……
店長さんとのプレイでは、セックスもしてもらえるって聞いて、びっくりした。
店長さんのことは僕の完全な片想いだ。だけど、それが例えプレイの一環だとしても、セックスをしてもらったら疑似的にでも恋人の気分が味わえるんじゃないかってちょっとだけ期待してしまった。
しかも、敬語じゃなくて良いって言われたけれど、恐れ多くてタメ口なんてきけなかった。
店長さんは、プライベートだからってラフな口調で喋ってくれた。一気に距離が近づいたみたいで、嬉しくてクラクラした。
そして、セーフワードとNGを聞かれて……セーフワードってのは中学校のD/S性の授業で習った。それを言えば、DomのGlareを使った支配が効かなくなるって。セーフワードはプレイをするDomとSubが認識していれば何でもいいんだけれど、思いつかないときは『レッド』ってのを使えって授業で習ったので、今まではそれを使っていた。
だけど、店長さんに教科書に載っていた言葉を言うのが恥ずかしくて、僕は店長さんの作ってくれるカルーアミルクが大好きだから、思わず『カルーア』って言ってしまったんだ。
セーフワードって、好きなものじゃなくて、嫌いな食べ物とかを言う人も居るらしい。だけど僕はテンパって、うっかり好物を答えてしまった。店長さん、誤解してなきゃいいんだけれど……僕は自分の犯した大きなミスに、今更ながら落ち込んだ。
NGは正直わからなかったけど、店長さんにだったらなんでもされたいって思っちゃったから、ないって言ってしまった。
プレイででも抱いてもらえれば一生の宝物の記憶になると思ったし、店長さんはなんか酷いことしなさそうだったし……もし酷いことされても、それも思い出になりそうだからイイかなって思っちゃったから。
そしたら、ちょっと意地悪な表情をした後、名前で呼んでって言ってくれたんだ。
……恭介さん……
心の中でそっと名前を呼ぶ。
あれはプレイのときに言われたことだし、プレイが終わったら名前で呼んじゃいけないよな。でも、心の中ではもうしばらくだけ恭介さんって呼ばせて欲しい。
うっかり口に出して呼んでしまわないように、気をつけなきゃなと僕は思った。
それからプレイが始まって……
気が付いたら、恭介さんの足元に跪いて、恭介さんの顔を見上げていた。
そしたら、恭介さんが笑いかけてくれたんだ……!!
恭介さんは接客業だから、勿論お店でお客さんに向ける笑顔は何度も見たことがあるんだけれど。昨日見た笑顔はなんかそうじゃなくて、プライベートな笑顔って感じで、僕は惚れ直した。
Lickって色っぽいCommandを言われたときはドキドキしたし、初めてのCommandだったから上手にできたかわからなかったんだけれど、ご褒美のときには名前を呼んで貰えた。
そうだ、あの時、恭介さんは僕のことを確かに『湊』って呼んでくれた……
初めてお店に行った日に僕は恭介さんに身分証を提示しているので、恭介さんが僕の名前を知っていてもおかしくない。だけど、もう一年も前のことだし、僕のフルネームなんて絶対に覚えてないと思っていたのに……
昨日の記憶はそこで途切れている。
あとは、フワフワしながら、「恭介さん、好き」と繰り返していた気がするのは……夢だったと思いたい。
「……夢じゃなかったらどうしよう……っていうか、その前に、ここどこ!?」
僕はふかふかのベッドで寝ていた。布団の肌触りは良く、なんだかいい匂いがする。
部屋の中には、クローゼットと本棚。少なくとも、恭介さんと一緒に入ったホテルではなさそうだ。モノトーンでまとめられた寝室は、あまり物は多くないけれど、なんだか落ち着ける空間だと思った。
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