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後日談4 紐 / 相川湊
【1】身に覚えのない小包
しおりを挟む今日、仕事から帰ってポストを覗いたら、僕宛に身に覚えのない小包が届いていた。
不思議に思いながらもリビングのソファでその小包を開けてみたら、真っ赤な紐が入っていた。紐?
広げてみて、僕はそれが何かようやく思い出した。買った記憶なんてないのに……!!
恭介さんと一緒に住むようになってから一ヶ月。もうすぐ、恭介さんのお誕生日だ。
お誕生日プレゼント、何がいいかなぁ……って、日々悩んでいたんだけれど、考えても考えてもイイものが思いつかない。兄に相談しても、ネクタイとかネクタイピンとか言われてしまって……それって、恭介さんへのプレゼントじゃなくて、自分が欲しいものだよね!? 恭介さんはネクタイとかネクタイピンは普段は使わないから。
一人で考えていても行き詰ってしまったので、恭介さんの顔を見ていたら何かいいものが思いつくかなって思って、バーに来た。そしたらちょうど常連さんが来ていたので、相談することにしたんだけど……
「誕生日プレゼント? そんなの、湊ちゃんでいいじゃないー!!」
すごく軽い調子で言われてしまった。ううん、そういうのじゃなくて……と言っても、それ以外の案は出てこなかった。僕は恭介さんのお誕生日プレゼントを考えるのに一生懸命だったから、それ以外のことはあんまりよく考えてなくて。だから、勧められるままにお酒を飲んでしまって、そしてうっかりと飲み過ぎてしまったみたいで。
「ほらほら、こんなのどう?」
見せられたスマホの画面には、男性用のセクシー下着が映っていた。
「ないです。ないない」
僕は即座に首を振った。
「えー、湊ちゃん似合うと思うし、喜んでもらえると思うんだけどな」
ひらひらレースがふんだんに使われた、しかも大事な部分がギリギリ隠れているだけの露出が高い下着は、可愛い女の子が着ているならまだしも、僕が着ても全然可愛くなんてないと思う。しかもそれって、パーティー用のジョークグッズか何かで、笑いを取るためのものではないんだろうか。
商品名には「セクシー」って書いてあったけれど、モデルさんに対して僕は色気を感じることもなかった。だから、その話はそれでおしまいになったと思っていたのに。
だけど、今日、これが僕宛に届いたってことは……あの後、自分でこれを買ってしまったということなんだろうか。うう、全然覚えてない……それに、これ、どうしよう……
赤い紐を握りしめながら途方に暮れていたら、玄関から物音がした。恭介さんが帰ってきたんだ!!
そういえば、今日は恭介さんは早上がりだって言っていた気がする。それに対して、僕は仕事が長引いて、帰宅が遅くなってしまっていたんだ。
「ただいまー」
恭介さんがリビングのドアを開けたとき、僕はまだ赤い紐を握りしめたままだった。
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