いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

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本編

【4】NGとセーフワード

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「有坂さんっていうんですね……」

 長冨の台詞からオレの名字を拾い聞いた男にうっとりとした顔でこちらを見つめられて、背筋がゾゾッとした。

「おい、長冨。何勝手なことを……」
「有坂も今はそんなに余裕ないだろ。Glareグレア浴びた瞬間無理だと思ったら、セーフワード言えよ。すぐに引き剥がしてやるから」

 長冨にそう言われてしまったらオレは黙るしかない。
 いつもこいつに迷惑を掛けているという自覚はあるのだ。
 オレは大きなため息をついて、グラスの中のウィスキーを飲み干すと、馬鹿デカイ相手を睨みつけた。

「NGはオレに触れること全般だ」

 触れられることすら嫌な相手にサブスペースに入れられることはまずない。というか、サブスペースに入ったことなど、人生で一度もないのだから。これが、そんな人生をひっくり返すような出会いであるはずがない。

「オレから有坂さんに触れるのはダメなんですね。それは、オレ自身だけでなく道具等も含めてということでいいですか?」

 相手からの確認にオレは頷く。

「道具って……当然だけど、セックスも含めて性的接触も全てNGだ」
「監視されているのがわかっているので、色っぽい有坂さんをモニターに映し出すようなことはしませんよ。ちなみに、有坂さんからオレに触れるのはOKですか?」

 触れたいとは全く思わないので、自分からこいつに触れるということは考えられないが。

「Commandで無理矢理に触らせようとするのもNGだ」
「わかりました。触れさせるようなCommandは使いません。でも、Commandを使わず有坂さんが自発的に触りに来てくれた場合、オレは避けたり逃げたりしなくてもいいですか?」
「ああ」

 避ける? 逃げる? それはいったい、どういう状況なんだと突っ込みそうになったが、深く考えないようにした。

「他にダメなことはないですね?」
 
 確認する言葉にオレは頷いた。

「あと……、万が一があった時の薬は?」
「オレが管理しているから大丈夫だよ」

 長冨が口を挟んでくる。
 普段、世話になることが多い長冨には、何かあったときのために薬を渡してある。

「……では、お任せします。一応確認ですけれど、あなたは有坂さんのパートナーじゃないですよね?」
「ただの友人だ」
「……よかったです」

 長冨の言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろした相手は、オレに向き直って口を開いた。

「他に決めることがなければ、セーフワードを教えて欲しいのですが……」
「セーフワードは……『土下座しろ』だ」

 言った瞬間、長冨が吹き出した。

「なぁ、久我くん。さっきの告白、有坂にとって完全にトラウマになってるよ」

 ガーンと、口にこそ出さなかったけれど、表情にそう書いてあった。
 めちゃくちゃわかりやすいな。こいつ、本当にDomなんだろうか。
 思わず、胡乱げに見てしまう。

「はい、じゃあ約束通り、鍵。場所は有坂が知ってるから案内してもらって。何事もなければ、2時間くらいは居てもいいけど……」
「サブスペースに入った場合は?」
「部屋に電話があって、受話器上げればこっちに繋がるから、それで連絡して」
「わかりました」

 久我が長冨から鍵を受け取り、オレたちは店の二階へと移動した。

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