いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

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本編

【6】VIPルーム

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 オレが大学生になってからは、何度か欲の発散相手にそういうお店に所属しているプロを選んだことがあった。だけど、オレが相手のGlareを感じることができることができないまま、プレイが終わってしまうことが続いてしまった。

 例外的にGlareを感じられた相手が一人だけ居たが、やたらとSubを見下してくる男で、プレイが始まったらまず最初にオレがセーフワードを言えないように口を塞ぎ、その後はオレが望まない暴力的なプレイを要求してきた。おかげでオレは欲を発散するどころか、逆にサブドロップに陥った。

 サブドロップとは、Subがバッドトリップのような状態になることだ。望まないプレイを強要されたり、Commandを遂行した後に十分褒めてもらえCareされなかったりすると起こる場合がある。

 そうならないためにも、プレイの前はセーフワードを決めることなっている。セーフワードがあれば、SubはDomからのGlareによる支配を無効にできる。Subの同意も得ずに、故意にセーフワードを言わせないようにしてのGlare支配は犯罪行為だ。

 幸い、店内での出来事だったため、店員が様子がおかしいことに気づいてすぐに救急車を呼んでくれたのだが、パートナーも居らず、薬も効きにくい体質のオレはそこからの復帰にも二週間ほど入院を必要とした。

 夏休み中だったので、学業に影響が出なかったのがせめてもの救いだった。退院後、利用した店から謝罪とスタッフの解雇を伝えられた。オレの相手をしたスタッフは、その日が初出勤で、店側としても想定外のことだったらしい。

 それ以来、そういうサービスの店も利用していない。



 長冨と関係を持つようになったのはその頃だ。

 新学期になっても夏からの体調不良を引きずっていたオレは、ぐったりとしながら大学の講義を聞いていた。たまたま隣に座った長冨が、同じ高校出身であるオレの様子に気づいて声を掛けてきたのが切っ掛けだった。

 オレは長冨のGlareはなんとか感じることができた。それ以来、お互いに不調があったときにはプレイをしている。実際は、オレのほうが体調不良に陥りやすいので長冨に頼りっきりなのだが。

 お互いに恋人やパートナーができたときには、この関係は解消することになっている。

 長冨に恋人ができて一時的に関係を解消したことは過去に何回かあるが、長冨が破局するたびに復縁している。長冨は恋人とはあまり長く続かない傾向があるようだ。
 よって、断続的ではあるけれど、結果的にここ十年程関係が続いていることになる。






 オレは久我から鍵を受け取ると、濃い茶色をしたアンティーク調のドアを開けた。
 本来なら、2時間程後、この部屋にはオレと長冨が居るはずだった。

 電気を点けると目の前に広がるのは、ラグジュアリーな空間。バーの二階なので流石に夜景が見えるような窓こそはないが、一流ホテルの一室のような内装になっている。有名人がお忍びで使うこともある特別室だからだ。タレントなんかもこっそり訪れることがあるらしい。

 入口付近の電話で、階下の食事は全て注文できるようになっている。ティーセットやカクテルなどは、入口近くのソファとローテーブルでも楽しめるが、ランチやディナーにも対応できるように、部屋の左奥にはダイニングスペースもある。そして、右奥には控えめにではあるけれどベッドスペースが。


 オレは、何も言わずにソファに腰かけた。


 久我が入口のハンガーラックにコートを掛けて、バゲッジラックに鞄を置く。

 そういえば、こいつ、店に入ってきてすぐだったな、と今更ながらに思う。ちなみにオレのコートは下のクロークに預けてある。

「有坂さんは、よくこの部屋を使うんですか」
「さあ、どう思う?」

 オレはこの男に何一つ許してない。勝手に名前を呼ぶなと言いたい気持ちを抑えながら、入口で所在なさげに佇む相手を見返した。

「さっさとGlare寄越せよ」

 嫌なことは早く終わらせるに限る。
 Grareが全く感じられなかったり、不快なGlareを出したりしたら、その瞬間セーフワードで終わらせてやる。

「じゃあ、少しずつ出しますね。キツくなったら教えてください」

 こいつはいったい何を言ってるんだ?

 と、冷静に考えられたのはそこまでだった。
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