いつか、愛に跪くまで

夏芽玉

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本編

【14】勘違い上等

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「昨日、あいつが店に入ってきたときにGlareが出ちゃって。店内のお客さんが何人かてられてさ。距離があったから、敏感な人が軽くあたっただけで大ごとにはならなかったんだけど」

 昨夜の長冨と久我のやり取りを思い出す。

 フロアに行った長冨が戻ってくるのが少し遅かったのも。久我がボックス席に誘導されず、VIPルームに通されたのも。迷惑を掛けたお詫びに、ドリンクかデザートを奢りたいと久我が言っていたのも。
 全てはそれが原因なのだと長冨は言った。

「全然気づかなかった……」
「まぁ、有坂だからな」

 軽い長冨の口調に、オレは軽くため息を吐いた。

「でも、元々はお互いを紹介しようと思って、久我くんとのアポイントはあの時間を指定してたんだわ」

 オレは思わず、長冨の顔を見る。

「久我くんが有坂に一目惚れをしたのは想定外だったけれど。お互いに不快感がなさそうだったらお試しプレイはオレから提案しようと思ってた」

 その言葉に、オレは眉を顰める。

「おい……」
「もし上手くいかなくても、後でオレとプレイして十分ケアするつもりだったんだけど……まさか、有坂がサブスペースに入るなんてな。あんなに蕩けた有坂を初めて見て……自分で仕組んでおきながら、正直妬けたわ」
「……長冨?」

 長冨の最後の言葉に、オレは言おうとしていた文句を飲み込んだ。

「有坂は、あいつのこと、気に入ったんだろ?」
「っ……、それは……」

 昨夜、ここであいつを拒絶したときほどの拒否感はオレの中にはもうない。
 咄嗟に拒否する言葉を紡いでしまいそうになるのは……羞恥心からだということも、薄々気づいている。最初はあんなにも突っぱねていたのに、たった一度のプレイであっさりと心が傾くだなんて。オレはそんなに流されやすい性格だっただろうか?

「……一目惚れしたのは、初恋の相手に似てたからかもしれないって言われた……」

 絞り出した言葉は、自分で言っておきながら、なんだか拗ねてるみたいだと思った。

「ありゃ。見知らぬ初恋相手にまで嫉妬してんの? もうそこまで絆されちゃったんだ?」
「ち、違っ……! 初恋相手の身代わりだなんて……」
「ただのプレイ相手、パートナーになるだけならそんなことはさして気にならねぇと思うけどな。身代わりで好きになられるのは耐えられないとか。なんか、もうそれって恋なんじゃね?」
 
 長冨の切り返しにオレは言い返す言葉を持っておらず、小さく唸ると膝の上で手を握った。

「たった一回のプレイで好きになるなんて、そんなの勘違いかもしんないし……」
「恋なんてみんな、結局は勘違いみたいなもんだろ。でも、それで幸せになれるんなら、勘違い上等じゃねーの?」

 少なくともオレよりは恋愛経験がありそうな長冨には、これ以上何を言っても言い負かされてしまう気しかしない。

「でも……」
「考えたってわかんねーなら、当たって砕けたらいーんじゃね? 砕けたらオレが拾ってやるよ」

 ニヤニヤ顔の長冨に、オレは悔し紛れに口を開いた。

「……長冨の恋バナ聞かせろよ」
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