星々の光を打ち消してしまうほど輝く月が、彼女の自由を奪った

一月ににか

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アイスティー

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「なるほど。僕の視線はあなたにとって毒になるのですね。そして、考えていることを伝達するすべを持っているから、あなたは本来言語をもちいない」

 彼女からたくさんのイメージを直接見せられ、僕は思わず目を閉じた。
 かわりに彼女の顔を思い浮かべる。彼女はまさに、かつて地球人が遭遇したという宇宙人そのものの姿をしていた。鈍色にびいろの肌、長い手足、体に対して大きな頭。想像通り、いや、想像以上に美しい姿をしている。

「私はお前に正確な情報を伝達するすべを持ち、お前が何を考えているのか察することができる。お前は気味が悪い。対話するためには私がお前に合わせるしかない。面倒だから目は開けておいていい。月が憎いのではない。震えるまぶたと感情の方が不快だ。お前一人の視線なら大した問題にならない。どうして私はこんな目に遭った。憎いのは人間だ」

 どこにでもいるような女性の声に僕は目を見張った。
 ああ、これが彼女の声なのか。彼女が地球に来てから習得した人間の女性の声。脳に響く声にぼくはうっとりと目を細めた。
 それにしても、一度に発する情報量が多過ぎる。
 
「申し訳ないのですが、人間は一度に多くの情報をやり取りできません」
「不便な生き物だ」
 彼女は不服そうなようすで、もう一度グラスを手にした。

「アイスティー、お好きですか?」
「悪くはない。それより、私の疑問に答えろ」
「ええと、どうしてこんな目にってことですね。
 あなたが多くの人々に目撃されたのは、中秋の名月のせいだと思います。今日は、一年で一番月がキレイに見える日だと言われているのです。
 普段はロクに気にかけていない人たちも、この日だけは月を見上げてしまう。そういう日なのです。僕もそうでした。そして、あなたを見つけた」
「忌々しい。月はいつ見ても綺麗なものだろう」
「確かに。そうですね」

「では、明日の夜であれば空を飛んでも問題はないということだな」
「おそらくそうでしょう。昨日の夜は問題がなかったように」
「そうか」
 彼女は腕組みをし、思案するそぶりを見せた。おそらくこの仕草も、地球人を真似たものだろう。彼女はこの地球に順応し、僕に合わせてくれている。

 地球人が気に入らないからこの惑星を後にする彼女は、本質的にやさしいのだろう。科学力の違いは一目瞭然だ。彼女たちが本気を出せば、地球人を根絶やしにすることもできるだろうに。

「侵略されたいのか?」
「僕個人としては」
「お断りだ」

 彼女はゆっくりと立ち上がり、僕に近付いた。大きな瞳に射すくめられて、身動き一つとれない。彼女は座ったままの僕を見下ろした。
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