星々の光を打ち消してしまうほど輝く月が、彼女の自由を奪った

一月ににか

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月下の遭遇

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 私は追われていた。
 時間から、人々から、この惑星から。

 遠く、果てしなく遠く離れた惑星ほしから私はこの惑星にやってきた。まもなく寿命を迎える故郷から、移住できる場所を探して。
 擬態能力も、環境に適応するだけの能力も持ち合わせている。何にだってなれる私たちは、水分さえあればどこでだって生きていける。この惑星ほしは私たちにとって悪くない場所だった。けれど、心が拒む場所に居続けることなどできない。

 この惑星ほしの生態系の頂点に君臨する人間の感性は、私にとって不快すぎた。感覚器官を五つしか持たないせいだろう。この惑星ほしの人間は視覚に頼りきっている。悪意・善意・猜疑さいぎ・関心、さまざまな感情が織り交ぜられた視線は完璧に擬態した私を鋭く突き刺した。不愉快で吐き気がした。

 降り立った日の次の夜に、私はこの惑星ほしに見切りをつけ、山中に隠した母船に戻ることに決めた。
 目に付いた高層ビルに侵入し、ありのままの姿に戻り天を見上げる。

 この惑星ほしはいけ好かない。けれど、あの夜空に光輝く月と呼ばれる衛星だけは美しいと感じていた。降り注ぐ波長が心地いい。不思議なものだ。実際に降り立った時には何の魅力も感じなかったというのに。
 決して手に入れることはできないと理解していながら、私は月に向かって飛び上がった

 大きな衝撃を受けたのは、その時だった。世界が反転する。制御を失った身体が地上に引っ張られた。

 なぜ。この惑星ほしに棲む人間たちは、夜空にも星にも月にも興味など示さないのではなかったか。誰もがうつむき、世をうれい、不満を漏らしながら生きているのではなかったのか。
 どうして私は視認された。ほんの数人程度の視線でこれほどダメージを受けるはずがない。多くの人間の目に曝されることがなければ、私は自由に宙を舞うことができる。それなのに。どうして。どうして。どうして。

 考えている内に私の身体は地面に叩きつけられた。
 その時私の前に現れたのが、この薄気味悪い人間だった。
 体の自由が利かないまま、私は人間の棲み家に連れ込まれた。
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