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032 竜の逆鱗
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シャイラは周囲が唖然とする中リュシュランの真っ赤に染まったシャツをはだけさせた。
痛々しい傷跡が背中に数多く残っている。
だが、それよりも目を引いたのは首の付け根の近くにある3枚の鱗。
「くすっ、やっぱりちゃんと竜の血を引いているのね。ライアックの王子様は。」
シャイラはリュシュランを抱きしめたままそう呟いた。
「ねぇ、シルフィールは知っていて?この鱗の意味を。」
首を横に振って知らないと告げるシルフィールはシャイラが何をしようとしているのか分からない。
ただ、それが良い事であるはずがないという事だけはハッキリとしていた。
「これはね。竜の逆鱗というの。この3枚の鱗……左右にある鱗には何の意味もない。けれど、中央の鱗には役目があるの。」
シェイラは左右の鱗にゆっくりと指を進めた。びくりとリュシュランの体が動く。
「この中央の鱗は愛しいものが触れれば快感を……そして大切なものが触れれば愛おしさを感じると言われているわ。でも、それ以外の者が許しもなく触れればそれは竜の怒りを開放してしまう。だから決して触れてはならない。それが竜の逆鱗。開放された竜は怒りに自我を飲まれて暴虐の限りを尽くすの。そして後には何も残らない。破壊の権化と成り果てる。」
「姉上…まさか……。」
「くすっ。すべてを破壊し私の願いを叶えて頂戴。」
ゆっくりとシェイラの指がリュシュランの逆鱗に触れる。
その瞬間リュシュランの視界は真っ赤に染まった。
体がびくりと跳ねて全身を痙攣させる。
震える体を抑えようとするがそれもままならないようだ。
「ぅぐっ…あ……あぁあああ!」
「リュシュラン!」
シルフィールが叫ぶがそれよりも早く異変が起きた。
リュシュランの体が黒く染まり硬質な鱗に覆われていく。
ばきりと骨がおかしくなったかのような異音がリュシュランから響いた。
めきめきと音を立てて背の肉を突き破って現れたのは一対の翼。
まるでそれは竜の翼のように巨大になっていく。
体も顔も爬虫類のように変化して巨大化する。
奴隷の首輪は千切り飛び、服がびりびりと破れた。
全身が軋んでその姿は漆黒の竜の姿へと変貌する。
巨大な竜の姿となったリュシュランは苦しみから逃れるように城の壁を突き破って外へと飛び出した。
「あ、あはははは!凄いわ。完全に竜になった。それも漆黒の竜。」
シェイラはからからと笑った。
リュシュランが飛び出した為に部屋の一部が完全に破壊され外が丸見えになっている。
そして竜と化したリュシュランは上空へと羽ばたくと城が一望できる高さまで上昇した。
ぐるりと何度か旋回してある一点で宙に留まる。
そして巨大な咆哮を上げて力を収束させる。
強力な力が蓄えられて城に向かって解き放たれる。
光の光線は城を無残にも破壊していく。
数度に渡って光の光線を放ったリュシュランは再び城の残骸の上を飛び回った。
――――…
リュシュランが飛び出して城の崩壊が始まった瞬間、ルイスは動いた。
風の魔力を使って全員を包み込んだ。
球体のような風の結界はリュシュランの破壊行為をなんとかやり過ごして地面に降りる。
結界を解除したルイスはあまりの惨状に唖然としながらも、それを行ったであろうリュシュランの姿を探した。
上空を旋回している漆黒の竜。
金の瞳に理性の色はない。
今やリュシュランは完全に破壊の権化へと化していた。
暫く旋回していた漆黒の竜はルイスやシェイラ、ナイルズ、そしてシルフィールの姿を探していたのかその姿を見ると勢い良く突っ込んできた。
その視線の先にいるのはシェイラだ。
明らかにリュシュランは自らの逆鱗に触れた者を殺すためにこちらに向かっているのが分かる。
今のリュシュランの瞳にはシェイラしか映っていない。
リュシュランがシェイラを噛み砕く。
そんなイメージが全員の脳裏にはっきりと映った。
だが、漆黒の竜の牙がシェイラに届く事は無かった。
「シルフィール……なんで。」
シェイラの前に立ち塞がったシルフィールによってそれは止められた。
シルフィールの瞳はまっすぐリュシュランの瞳を捉えている。
シェイラに牙が届こうかという瞬間にシルフィールによって止められたリュシュランは大きく開けた口をそのままに微動だにしない。
「お願い!リュシュラン。シェイラ姉上を殺さないで。」
グルル…とリュシュランの喉が鳴る。
それでも口を閉じないままでいるのは決して躊躇っているからなのかシルフィールには分からない。
だが、何も言わないではいられなかった。
「ひどい事をいっぱいしたけど…それでも……家族なの。大切な私の家族だから殺さないで。お願いよリュシュラン。」
シルフィールの目から一筋の涙が流れる。
漆黒の竜と化したリュシュランはほんの少し口の力を弱めると僅かに後退した。
「嘘、まさか意識が戻ったの?」
シェイラはシルフィールの言葉を理解して僅かに引いたリュシュランを驚きの表情で見つめる。
リュシュランはゆっくりと体を引き、その口を閉じた。
「リュシュラン?」
シルフィールの声にぴくりと反応しながらもそっと目を逸らす。
「意識、戻ったの?」
その言葉を肯定するかのようにリュシュランはシルフィールの顔をぺろりと舐めた。
「ひゃあ!」
リュシュランに舐められてぺったりと腰を落としたシルフィールはリュシュランを見上げる。
「リュシュラン、元の姿に戻れそう?」
気まずそうに視線を男二人の方に向けるリュシュラン。
その視線の意味をシルフィールは理解できなかったがルイスはリュシュランの意図をしっかりと理解していた。
「すぐにご用意いたします。少々お待ちを。」
そう言ってルイスはその場からすぐに立ち去った。
「お、おいルイス殿……一体何を。」
「シュラ様のお召し物を用意します。」
「あっ……。」
ルイス以外のその場にいた全員の声が重なる。
そういえば竜化した際に服は破れてしまったのだと納得する。
リュシュランの服をルイスはすぐに用意した。
そして瓦礫の影で服を着替えて戻ってきたリュシュランはシルフィールに抱きついた。
「きゃ!」
声を上げたシルフィールに構わずにリュシュランはシルフィールの肩に顔を埋めた。
「ごめん。怖かったろ?」
少し震えた声にシルフィールはリュシュランの背にそっと手を回した。
「怖かったけど、ちゃんと止まってくれたわ。」
「君を失うかと思った。俺の手で殺したなんてなったら立ち直れない。」
「私も、あなたを失うかと思ったわ。傷だらけで死にかけてた。」
そう言ったシルフィールは首を傾げる。
今のリュシュランは明らかに傷一つ見えない。
視線に気が付いたリュシュランはシルフィールの肩から顔を上げてへらりと笑った。
「竜になったらなんか治ったみたいだ。竜は治癒力が高いらしい。」
「そうなの?」
「うん。なんか、大気中の魔素を取り込んで一気に治癒する感じで。」
「おまけに城を壊してみごとすっきりしたようじゃな。」
割り込んできた声にリュシュランは顔を向ける。
「誰だ?」
「お母様!」
「ん?お母様ってことはシルフィールの?」
「妾はカルラ・フレイン・ウェスリー。この国の女王じゃ。」
「んで、この国の女王様が俺に何の用?」
「大有りじゃ!城をこんなに破壊してどう責任を取るつもりじゃ?」
「あぁ。それか……どうせ、後継はシルフィールしか居ないんだろ?」
「そうじゃが。」
「なら俺の番のシルフィールが女王で俺が国王。何の問題も無いな。」
「な!問題だらけではないか。」
「シルフィール、俺と新しい国を作ろう。フレイン王国とライアック王国。二つをまとめた国…どうだ?」
「喜んで。」
「待て、勝手に決めるでない!」
騒がしい女王様の事はすっかり蚊帳の外に置いてリュシュランはシェイラと向き合った。
痛々しい傷跡が背中に数多く残っている。
だが、それよりも目を引いたのは首の付け根の近くにある3枚の鱗。
「くすっ、やっぱりちゃんと竜の血を引いているのね。ライアックの王子様は。」
シャイラはリュシュランを抱きしめたままそう呟いた。
「ねぇ、シルフィールは知っていて?この鱗の意味を。」
首を横に振って知らないと告げるシルフィールはシャイラが何をしようとしているのか分からない。
ただ、それが良い事であるはずがないという事だけはハッキリとしていた。
「これはね。竜の逆鱗というの。この3枚の鱗……左右にある鱗には何の意味もない。けれど、中央の鱗には役目があるの。」
シェイラは左右の鱗にゆっくりと指を進めた。びくりとリュシュランの体が動く。
「この中央の鱗は愛しいものが触れれば快感を……そして大切なものが触れれば愛おしさを感じると言われているわ。でも、それ以外の者が許しもなく触れればそれは竜の怒りを開放してしまう。だから決して触れてはならない。それが竜の逆鱗。開放された竜は怒りに自我を飲まれて暴虐の限りを尽くすの。そして後には何も残らない。破壊の権化と成り果てる。」
「姉上…まさか……。」
「くすっ。すべてを破壊し私の願いを叶えて頂戴。」
ゆっくりとシェイラの指がリュシュランの逆鱗に触れる。
その瞬間リュシュランの視界は真っ赤に染まった。
体がびくりと跳ねて全身を痙攣させる。
震える体を抑えようとするがそれもままならないようだ。
「ぅぐっ…あ……あぁあああ!」
「リュシュラン!」
シルフィールが叫ぶがそれよりも早く異変が起きた。
リュシュランの体が黒く染まり硬質な鱗に覆われていく。
ばきりと骨がおかしくなったかのような異音がリュシュランから響いた。
めきめきと音を立てて背の肉を突き破って現れたのは一対の翼。
まるでそれは竜の翼のように巨大になっていく。
体も顔も爬虫類のように変化して巨大化する。
奴隷の首輪は千切り飛び、服がびりびりと破れた。
全身が軋んでその姿は漆黒の竜の姿へと変貌する。
巨大な竜の姿となったリュシュランは苦しみから逃れるように城の壁を突き破って外へと飛び出した。
「あ、あはははは!凄いわ。完全に竜になった。それも漆黒の竜。」
シェイラはからからと笑った。
リュシュランが飛び出した為に部屋の一部が完全に破壊され外が丸見えになっている。
そして竜と化したリュシュランは上空へと羽ばたくと城が一望できる高さまで上昇した。
ぐるりと何度か旋回してある一点で宙に留まる。
そして巨大な咆哮を上げて力を収束させる。
強力な力が蓄えられて城に向かって解き放たれる。
光の光線は城を無残にも破壊していく。
数度に渡って光の光線を放ったリュシュランは再び城の残骸の上を飛び回った。
――――…
リュシュランが飛び出して城の崩壊が始まった瞬間、ルイスは動いた。
風の魔力を使って全員を包み込んだ。
球体のような風の結界はリュシュランの破壊行為をなんとかやり過ごして地面に降りる。
結界を解除したルイスはあまりの惨状に唖然としながらも、それを行ったであろうリュシュランの姿を探した。
上空を旋回している漆黒の竜。
金の瞳に理性の色はない。
今やリュシュランは完全に破壊の権化へと化していた。
暫く旋回していた漆黒の竜はルイスやシェイラ、ナイルズ、そしてシルフィールの姿を探していたのかその姿を見ると勢い良く突っ込んできた。
その視線の先にいるのはシェイラだ。
明らかにリュシュランは自らの逆鱗に触れた者を殺すためにこちらに向かっているのが分かる。
今のリュシュランの瞳にはシェイラしか映っていない。
リュシュランがシェイラを噛み砕く。
そんなイメージが全員の脳裏にはっきりと映った。
だが、漆黒の竜の牙がシェイラに届く事は無かった。
「シルフィール……なんで。」
シェイラの前に立ち塞がったシルフィールによってそれは止められた。
シルフィールの瞳はまっすぐリュシュランの瞳を捉えている。
シェイラに牙が届こうかという瞬間にシルフィールによって止められたリュシュランは大きく開けた口をそのままに微動だにしない。
「お願い!リュシュラン。シェイラ姉上を殺さないで。」
グルル…とリュシュランの喉が鳴る。
それでも口を閉じないままでいるのは決して躊躇っているからなのかシルフィールには分からない。
だが、何も言わないではいられなかった。
「ひどい事をいっぱいしたけど…それでも……家族なの。大切な私の家族だから殺さないで。お願いよリュシュラン。」
シルフィールの目から一筋の涙が流れる。
漆黒の竜と化したリュシュランはほんの少し口の力を弱めると僅かに後退した。
「嘘、まさか意識が戻ったの?」
シェイラはシルフィールの言葉を理解して僅かに引いたリュシュランを驚きの表情で見つめる。
リュシュランはゆっくりと体を引き、その口を閉じた。
「リュシュラン?」
シルフィールの声にぴくりと反応しながらもそっと目を逸らす。
「意識、戻ったの?」
その言葉を肯定するかのようにリュシュランはシルフィールの顔をぺろりと舐めた。
「ひゃあ!」
リュシュランに舐められてぺったりと腰を落としたシルフィールはリュシュランを見上げる。
「リュシュラン、元の姿に戻れそう?」
気まずそうに視線を男二人の方に向けるリュシュラン。
その視線の意味をシルフィールは理解できなかったがルイスはリュシュランの意図をしっかりと理解していた。
「すぐにご用意いたします。少々お待ちを。」
そう言ってルイスはその場からすぐに立ち去った。
「お、おいルイス殿……一体何を。」
「シュラ様のお召し物を用意します。」
「あっ……。」
ルイス以外のその場にいた全員の声が重なる。
そういえば竜化した際に服は破れてしまったのだと納得する。
リュシュランの服をルイスはすぐに用意した。
そして瓦礫の影で服を着替えて戻ってきたリュシュランはシルフィールに抱きついた。
「きゃ!」
声を上げたシルフィールに構わずにリュシュランはシルフィールの肩に顔を埋めた。
「ごめん。怖かったろ?」
少し震えた声にシルフィールはリュシュランの背にそっと手を回した。
「怖かったけど、ちゃんと止まってくれたわ。」
「君を失うかと思った。俺の手で殺したなんてなったら立ち直れない。」
「私も、あなたを失うかと思ったわ。傷だらけで死にかけてた。」
そう言ったシルフィールは首を傾げる。
今のリュシュランは明らかに傷一つ見えない。
視線に気が付いたリュシュランはシルフィールの肩から顔を上げてへらりと笑った。
「竜になったらなんか治ったみたいだ。竜は治癒力が高いらしい。」
「そうなの?」
「うん。なんか、大気中の魔素を取り込んで一気に治癒する感じで。」
「おまけに城を壊してみごとすっきりしたようじゃな。」
割り込んできた声にリュシュランは顔を向ける。
「誰だ?」
「お母様!」
「ん?お母様ってことはシルフィールの?」
「妾はカルラ・フレイン・ウェスリー。この国の女王じゃ。」
「んで、この国の女王様が俺に何の用?」
「大有りじゃ!城をこんなに破壊してどう責任を取るつもりじゃ?」
「あぁ。それか……どうせ、後継はシルフィールしか居ないんだろ?」
「そうじゃが。」
「なら俺の番のシルフィールが女王で俺が国王。何の問題も無いな。」
「な!問題だらけではないか。」
「シルフィール、俺と新しい国を作ろう。フレイン王国とライアック王国。二つをまとめた国…どうだ?」
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