あくまで復讐の代行者

ゆーにゃん

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第四章

四人目 復讐は当事者のみならず その四

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 目隠しは、連れ込んだ場所を知らせないためか。用意周到だな。

 とはいえ、この身体じゃ動けない。服は血で汚れ、腕や手に力が入らず杖もまともに掴めない、脚も傷だらけで立ち上がることも無理。
 まあ、その心配はいらないか。

「……主!」
「グレモリー……」

 砂場で上体を起こすと同時にグレモリーが駆け寄る。グレモリーだけではなく、アスモデウスもバアルも駆け寄り止血と汚れを落としてくれる。

「帰りましょう、主」
「ああ……」

 バアルに抱き上げられ家へ。

 リビングのソファーに腰かけ、魔力による治療で傷が完治。治療するグレモリーは珍しく泣きそうな悲痛な顔、アスモデウスとバアルまでも憤怒の顔つき。
 悪魔もそんな人間らしい感情を見せるのだな。

 ちょっと、悪いことしたかも……。これも、僕の計画通りでこの怪我は想定内だったんだが。

「グレモリー、そんな顔をしないでくれ。僕は平気だ。アスモデウスもバアルも、大丈夫だからそんなに怒るな」
「しかし、主! 痛みを感じないからといって、ここまで痛めつけ虐げられる瞬間をただ黙って見ていることしかできないのは……私にとって辛いのです……」
「ええ。夏目ちゃんの思惑通り、命令で動けなかったとはいえ、ここまでされるとお姉さんでも怒るわ」
「そうだな。俺も、久々に腸が煮えくり返るぞ!」
「…………すまない」
「いえ、主が責任を感じる必要はありません。ただ、もうこのようなご自身の身体を使うのはおやめください」
「分かった。もうしない」

 こんなにも心配してくれて、怒ってくれるのは姉さんがそばにいてくれたあの時以来だな。すっかり忘れていた。誰かにそんな風に思われることが嬉しいと感じることを。
 今後は、僕自身を復讐のために使うのはよそう。グレモリーたちに必要以上、心配も負担もかけたくない。

 それはそうと、あれは上手くいったのだろうか?

「グレモリー。例の動画は録れたか?」
「はい。主の命令通り、収めております」

 グレモリーから、いつも使う僕のスマホを受け取り中身を確認する。そこには、僕に暴力を振るう佐藤の姿がしっかりと録画されていた。
 綺麗に録れている。さあ、これを編集して知らしめてやる。貴様らの行いを、電子の海に流してな。

 僕は、最初から警戒していなかったわけじゃない。むしろ、何か裏があると踏んで用意をしていた。

 まずバアルには、自身を含むグレモリーとアスモデウスを不可視に、グレモリーには僕のスマホで動画の撮影、アスモデウスには僕を無痛症にするよう命じていた。そして、あの神社には僕一人で向かったように見えて、ずっと三人の悪魔がそばにいたということだ。

 編集では、僕の顔にはモザイクをかけ、声は機械音に変換し奴らの顔を声はそのままにしてそれを動画サイトのユアチューブにアップする。

 奴らの顔も隠した方がいいのだろうが、これも復讐の一端だ。動画タイトルは『無抵抗の人に暴力を振るう虐めの青年』と。概要欄には『高校時代にとある女子高生に暴行や強姦、脅迫し虐めを行ってきた小年少女。この動画はその一人である』と。

 忘れてはならない、動画主のプロフィールには加害者の名前から当時の高校、並びに親の職業、その当時の虐め問題についての訴えの内容の一部も書き記す。

 もう一つの動画も一緒にアップ。それは学校側から、名誉毀損で訴えるや保護者からは事実無根で迷惑だと、警察に相談してもまともに取り合ってくれなかった、その時のやり取りの音声データを。分かりやすいようにと、編集で字幕入りにして。

『これ以上、言いがかりをつけてくるうようなら警察に訴えますよ。――――さん』
『なっ⁉ 訴えているのは私たちの方でしょ! 娘の日記に書かれていたことが全て嘘だと言いたいんですか⁉ 理事長!』
『はあー……。何度も説明したはずです。そのような虐めの事実はないと。生徒たちにも聞きましたがね、そんなことはしていない。彼女の妄想だと。教育委員会でも、そのような事実は確認できないと報告が上がっていました。ですので、これ以上は学校の今後にも関わることになりかねない。私共としても穏便に済ませたいのですよ。騒ぎを起こすとなれば、名誉毀損として警察に相談せざるを得ない。分かるでしょう?』

 他にも、

『いい迷惑です。私共の子供は、――――さんの娘さんには何もしていないと口を揃えて言っているんですよ? なのに、何度も言いがかりをつけられて子供たちも参っているんです。いい加減にしてもらえませんか? 虐めの事実はないと何度も言っているではありませんか』

 保護者の代表はそう言い放ち、

『保護者としても、一人の刑事としても、誰一人として虐めはないと証言していますし、何より証拠がなければ立証はできません』

 と刑事でありながら何もしなかった。

 これが全て。

『――――』は僕らの名前のため機械音に変え、父さんの部分も機械音に変換。

 編集は、僕の指示を聞いてバアルが全てしてくれた。

 父さんと一緒に学校へ行った時、こっそりと音声を録音していたんだよ。もしものためにとな。まさか、こんな形で役に立つとは思わなかったよ僕自身。

 でも、そのお陰で当事者のみならず姉さんを死に追いやり、認めることも謝罪することも助けてくれることもしなかった関係者全員に復讐できて良かったよ。

「ここから先、地獄を見るといい」

 パソコンの画面に表示される動画を眺め笑みを浮かべ言い放つ僕。そのそばには、三人の悪魔も一緒に動画を眺めながら。

 アップした二つの動画は瞬く間に再生回数を稼ぎ、ネットやSNSで拡散されていく。
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