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第三章 林間合宿と主なき神獣
第一幕 林間合宿の準備(1)
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ゴールデンウィークが終わり、平穏な日常が戻ってきた本日の六時限目は林間合宿の班決めが行われ教室は賑やかだ。
しかし、自身の席に座る夏目の内心は穏やかではない。何せ、ぼっちの身で班決めとなれば必ずと言っていいほど最後まで残る。
だが、声を掛けられるような友人はいない。
(燐や桜がいてくれたらどれほど助かることか……)
そんなことを内心で言い、ため息を吐く夏目。
燐と桜は隣のクラス、なんなら二人は同じクラスで夏目だけが別という。席で机に肘をつき絡めた指を額に当て俯く。
このままだと、担任の男性教師が「逢真、まだ決まっていないのか? 誰か入れてやれ」とか言い出すに違いない。それをされると教室内の空気が重くなり居た堪れなくなる。
(こういう時、担任が勝手に決めてくれたらいいのに……)
と、心の底から思う。案の定、一人残された夏目の予想通りに。
「ん? 逢真は一人か? おい、どの班でもいいから入れてやれー」
と言い出す。
「じゃあ、僕らの班に入る?」
気を利かせてくれた男子の班が夏目を入れてくれた。
「あ、ありがとう……。よろしく……」
が、名前を覚えていない夏目は誰か分からないことに直面。とりあえず、愛想笑いで挨拶を交わすのが限界だった。
(だ、誰だっけ?)
班は男子三人組。目立つ容姿ではなく、どこにでもいるごく普通の仲良し三人組といったところ。
この班なら何事もなく終えられるだろう、と考える夏目の耳にコソコソと話し声が入る。
「あいつ、なんで隣のクラスの秋山と一緒にいたんだ?」
「仲良いのか? そんな風には見えないけどな」
「そういえば、会長の妹の東雲とも一緒の部活だろ?」
「いいよな~。美人の同級生と先輩と同じ部活とか。部室で何やってんだろうな」
「エロい妄想やめろよ。それに、逢真ってぱっとしないしエロいことなんか起きねえだろ」
男子同士で話すところに数人の女子も話に加わる。
「なにキモイこと言ってんのよ」
「ほんと男子ってすぐそういうこと言うよね」
「逢真みたいな何の取り柄もない奴が、そんなことできないでしょ? 一人でいることが多いぼっちなんだし」
「それは言えてる。モテるタイプじゃないよね~。わたし、顔とか好みじゃないし」
などと笑いながら言いたい放題の会話。その全てが夏目の耳に入っていることを彼らは知らないのか、それともわざと聞こえるように言いたいのか。何にせよ、聞かされる身にとっては不愉快だ。
こうして、班決めが終わり精神的に疲労が半端ない夏目。放課後、早足で教室を出て部室へ向かう。
旧部活棟に向かう道中で考える。
やはり、教室は居づらい。仲が良い者同士で固まり、色々な話が飛び交い騒がしい空気感が夏目には合わない。そう思い、昼休みや放課後は早々に教室を出て行く。
(美哉や燐たちと一緒にいる方がずっと楽で良い)
気を遣う必要もなく、夏目自身が話しやすいと思っていることも大きいだろう。何より、同じ目的を持っている。
一年、遅れて入学し神殺しとして生きていく。何か悩みごとや困っていることがあれば幼なじみであり今では恋人の美哉に相談ができる。弱い己を強くしてくれた頼もしい仲間の燐がいて、決闘後から会話が増え友人となり名前で呼び合うようになった桜もいてくれる。
(こういう思考だから、ありふれた日常からかけ離れていくのだろうか……)
フェンリルとの大切な約束もあり、左足のことそれ以外のことに関してもクラスメイトに話すことは決してない。
(歩む道が既に別れているし当然か。別に仲良くなる必要はないよな)
と勝手に考え自己完結。
グラウンドから部活に精を出す部員の掛け声、部活棟から楽しげな部員同士の笑い声が聞こえる。
「俺の日常もこんな平穏に続けばいいな」
空を見上げそんなことを呟く。
歩き出し旧部活棟の三階の奥の一室。そこは、神話オカルト研究会の部室だ。
扉を押し開け部屋の中へ。既に来ていた部長こと美哉が、入ってくる夏目を視界に捉えると花が綻ぶように笑って見せる。
「来ましたね。夏目」
「美哉はいつも早いな」
「部長ですからね。それに夏目を出迎えるのも楽しみの一つなんです」
「なんだそりゃ」
美哉との会話は楽しい。ここに来るまで、無駄に考えていたことがどうでもよくなる夏目。
鞄をソファーに置き座ると足音が二つ近づいてくる。
部室の扉が押し開き、炎のように赤い髪のポニーテールを揺らし碧眼が夏目と美哉を映し男勝りな口調で言う。
「む? わたしと桜が最後だったか」
秋山燐だ。秋山組の娘であり美哉とも姉妹のように仲が良い。炎を扱う巫女の一人だ。
「あたしたちの方が少し遅かったみたいね」
燐の隣にいるのはセミロングの亜麻色の髪、茶目の小柄な彼女は東雲桜。こちらも東雲家の巫女で結界を扱う。
これで部員が全員揃い、三人の顔を見た美哉は一言。
「全員、来たことですし部活を始めましょうか」
しかし、自身の席に座る夏目の内心は穏やかではない。何せ、ぼっちの身で班決めとなれば必ずと言っていいほど最後まで残る。
だが、声を掛けられるような友人はいない。
(燐や桜がいてくれたらどれほど助かることか……)
そんなことを内心で言い、ため息を吐く夏目。
燐と桜は隣のクラス、なんなら二人は同じクラスで夏目だけが別という。席で机に肘をつき絡めた指を額に当て俯く。
このままだと、担任の男性教師が「逢真、まだ決まっていないのか? 誰か入れてやれ」とか言い出すに違いない。それをされると教室内の空気が重くなり居た堪れなくなる。
(こういう時、担任が勝手に決めてくれたらいいのに……)
と、心の底から思う。案の定、一人残された夏目の予想通りに。
「ん? 逢真は一人か? おい、どの班でもいいから入れてやれー」
と言い出す。
「じゃあ、僕らの班に入る?」
気を利かせてくれた男子の班が夏目を入れてくれた。
「あ、ありがとう……。よろしく……」
が、名前を覚えていない夏目は誰か分からないことに直面。とりあえず、愛想笑いで挨拶を交わすのが限界だった。
(だ、誰だっけ?)
班は男子三人組。目立つ容姿ではなく、どこにでもいるごく普通の仲良し三人組といったところ。
この班なら何事もなく終えられるだろう、と考える夏目の耳にコソコソと話し声が入る。
「あいつ、なんで隣のクラスの秋山と一緒にいたんだ?」
「仲良いのか? そんな風には見えないけどな」
「そういえば、会長の妹の東雲とも一緒の部活だろ?」
「いいよな~。美人の同級生と先輩と同じ部活とか。部室で何やってんだろうな」
「エロい妄想やめろよ。それに、逢真ってぱっとしないしエロいことなんか起きねえだろ」
男子同士で話すところに数人の女子も話に加わる。
「なにキモイこと言ってんのよ」
「ほんと男子ってすぐそういうこと言うよね」
「逢真みたいな何の取り柄もない奴が、そんなことできないでしょ? 一人でいることが多いぼっちなんだし」
「それは言えてる。モテるタイプじゃないよね~。わたし、顔とか好みじゃないし」
などと笑いながら言いたい放題の会話。その全てが夏目の耳に入っていることを彼らは知らないのか、それともわざと聞こえるように言いたいのか。何にせよ、聞かされる身にとっては不愉快だ。
こうして、班決めが終わり精神的に疲労が半端ない夏目。放課後、早足で教室を出て部室へ向かう。
旧部活棟に向かう道中で考える。
やはり、教室は居づらい。仲が良い者同士で固まり、色々な話が飛び交い騒がしい空気感が夏目には合わない。そう思い、昼休みや放課後は早々に教室を出て行く。
(美哉や燐たちと一緒にいる方がずっと楽で良い)
気を遣う必要もなく、夏目自身が話しやすいと思っていることも大きいだろう。何より、同じ目的を持っている。
一年、遅れて入学し神殺しとして生きていく。何か悩みごとや困っていることがあれば幼なじみであり今では恋人の美哉に相談ができる。弱い己を強くしてくれた頼もしい仲間の燐がいて、決闘後から会話が増え友人となり名前で呼び合うようになった桜もいてくれる。
(こういう思考だから、ありふれた日常からかけ離れていくのだろうか……)
フェンリルとの大切な約束もあり、左足のことそれ以外のことに関してもクラスメイトに話すことは決してない。
(歩む道が既に別れているし当然か。別に仲良くなる必要はないよな)
と勝手に考え自己完結。
グラウンドから部活に精を出す部員の掛け声、部活棟から楽しげな部員同士の笑い声が聞こえる。
「俺の日常もこんな平穏に続けばいいな」
空を見上げそんなことを呟く。
歩き出し旧部活棟の三階の奥の一室。そこは、神話オカルト研究会の部室だ。
扉を押し開け部屋の中へ。既に来ていた部長こと美哉が、入ってくる夏目を視界に捉えると花が綻ぶように笑って見せる。
「来ましたね。夏目」
「美哉はいつも早いな」
「部長ですからね。それに夏目を出迎えるのも楽しみの一つなんです」
「なんだそりゃ」
美哉との会話は楽しい。ここに来るまで、無駄に考えていたことがどうでもよくなる夏目。
鞄をソファーに置き座ると足音が二つ近づいてくる。
部室の扉が押し開き、炎のように赤い髪のポニーテールを揺らし碧眼が夏目と美哉を映し男勝りな口調で言う。
「む? わたしと桜が最後だったか」
秋山燐だ。秋山組の娘であり美哉とも姉妹のように仲が良い。炎を扱う巫女の一人だ。
「あたしたちの方が少し遅かったみたいね」
燐の隣にいるのはセミロングの亜麻色の髪、茶目の小柄な彼女は東雲桜。こちらも東雲家の巫女で結界を扱う。
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