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第三章 林間合宿と主なき神獣
主なき神獣は居場所を得る(4)
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腕に抱えられたヨルムンガンドの具合いを見た燐は一度、頷く。
「うん。大丈夫だ、といっても傷だらけでそうは見えないかもしれないが、ヨルムンガンドの持つ神通力であればすぐ傷も癒えるだろう。今は、肉体的にも精神的にも疲れて眠ってしまったという感じだな」
その説明に胸を撫で下ろす夏目と桜。フェンリルは、やれやれという風に首を軽く左右に振りながらも安堵しているのが分かる。
燐は、捕らえた使徒を一箇所に集め纏めて拘束。三人の中で、口が聞けるのは花折一人。彼女に尋問が始まった。
目的が、ヨルムンガンドということは分かっている。それ以外の目的を喋らせたい燐は、花折へ声を掛ける。
「お前たちの目的はなんだ? ヨルムンガンドを拉致し、誰に引き渡すつもりだった?」
燐の尋問に、花折は睨み上げ鼻で笑い言い放つ。
「ハッ。小娘に答える理由があるとでも? わたしは何一つとして喋る気はないわ!」
声を張り上げ、一切答えるつもりはないと態度でも示す。そうか、と短く言う燐はため息を一つ吐き出す。
「これは、あまり使いたくはない手段だったが仕方がない」
冷淡に告げ、桜に視線を向けた。視線に気づき、懐から何かを取り出し燐へ手渡す。二人の行動の意味が分からず首を傾げる夏目。
それは、針なし銃型注射器だ。中に入った液体は紫色をしている。
「……あれは何だ? というか、何故にあんな物を持ち歩いてるんだ桜は?」
見るからに学生が持ち歩くものではない。それを桜が持っていることに疑問を抱き訊いてしまう。
「お兄様が、敵から情報を聞き出すために持って行きなさいって。美哉先輩のように拷問とか、あたしはできないから。燐も苦手だし、夏目くんはできる?」
美哉の拷問、と聞き以前に出会った使徒の女を思い出しその時に美哉が何をしたのか、あれは己には荷が重く無理だと桜の問いに首を左右に振る。
「誰もできないとなると、薬に頼るしかないわけ。そこで、あの自白剤が必要なの。あれは、その自白剤が入った注射器よ。使徒とか、無力化した神殺しから情報を引き出すための道具ってわけ」
桜の説明を聞き、生徒会長って何でもありだなと思う夏目。その話を聞いていた花折は暴れ出す。
「ふ、ふざけるな! そんなもので、わたしを……!」
その抵抗を、燐が力づくで抑え込み注射器を花折の皮膚に当て引き金を引く。プシュッ、と音が聞こえ中身の薬が注入されていく。
花折は、目を開き全身をビクつかせ口が開いた状態に。
「あっ、ああっ……」
と声をもらし動きが完全に止まった。銃型の注射器を離し、花折から情報を引き出しに掛かる燐。
「指示者は誰だ?」
問われた内容に花落は掠れた声で言う。
「く、空海様……。神殺しの御方……」
「なんのために?」
「わ、わたしは、空海様のためにヨルムンガンドを捧げる……」
「それでヨルムンガンドを拉致したはいいが逃げられた、ということか」
「捕らえて、空海様と契約を交わさせるのが、わたしの役目……」
「空海と言う神殺しの命令か?」
「わたしの独断……。空海様に喜んでもらうため。うふふ……」
話しながら笑い出す花折は、突然に天を仰ぎ見ては口の端を吊り上げ叫ぶ。
「うふふっ。あはははっ! ヨルムンガンドを捧げて褒美を貰うのよ!」
焦点が合わない目をし、笑みを浮かべ恍惚とした表情で口の端から涎が垂れていく。
「あの御方の愛を受けるの! わたしの全ては空海様のもの! 空海様の子を孕み産み、寵愛を受け続けるのよ! ああっ……、空海様、愛しています! ずっとずっと! うふふっ!」
壊れた人形のように笑いながら、永遠に同じ名前を繰り返し叫ぶ花折に恐怖を感じてしまう夏目は頬が引き攣った。
これ以上、訊いてもまともな答えは聞き出せそうにないと判断した燐。花折の腹部へ一発入れ、鳩尾に深く拳がめり込み殴られ頭が前に倒れる。
意識を強制的に奪い、これで使徒の全員を無力化に。
桜は、スマホを取り出し電話で連絡を入れている。使徒の回収だろうと、理解し夜空を見上げ息を吐く。
「やっと、終わった……」
呟き、ふとあることを思い出す。
(美哉に電話してない……。どうしよう……?)
と内心で考えるが、時刻は既に深夜の三時だ。こんな時間に電話をするのは、常識的に考えてありえないし迷惑だろう、それにもう眠っているだろうと思い込み自己完結。
それに夏目自身も疲労が溜まり休みたい気持ちが強い。体力も限界で、早く寝たいしどうせ明日には帰るのだから電話をしなくても平気だろう。
「夏目たちは先に戻っていてくれていいぞ」
「あとのことは、あたしと燐に任せて」
「助かる。じゃあ、お先に」
燐と桜に事後処理を任せフェンリルと共に宿舎へ戻る。部屋に戻ってくると、タオルを用意しヨルムンガンドを包み込み寝かせた。
疲れ果てている夏目を気遣うフェンリルが伝える。
「愚弟は、我輩が見ている。主も疲れているだろう? 眠るがいい」
「ありがとう。そうさせてもらう……」
フェンリルの言葉に甘え布団の上にそのまま倒れ込む。着替えることも億劫で、上着だけを脱ぎ捨て。目を閉じればすぐに睡魔が襲い、身を委ね意識を手放す。
翌朝、小鳥の囀りで目が覚めた夏目は布団から体を起こす。
「んっ……。ふぅわぁ~……」
背筋を伸ばし、タオルに包んだヨルムンガンドを見れば、護るように囲み眠るフェンリル。その光景が微笑ましく笑みがこぼれる。
「やっぱ兄、なんだな。それはそうと……、くんくん」
あのまま眠ったせいで、今更ながら汗臭いのではないかと臭いを嗅ぐ。汗臭さというより、血の臭いの方が強い。
お風呂へ直行、と一般生徒いながい関係者のみなので気兼ねなく朝風呂。
「ふぅ~」
さっぱりし部屋へ戻ると、フェンリルとヨルムンガンドが目覚めており夏目が戻ってくるの待っていた様子だ。
「目が覚めたんだな。具合いはどうだ?」
「一晩、眠ってもう大丈夫だよ!」
「嘘は言っていない。ただ、お腹が空いた、と朝から五月蝿いがな。全く、静かに待てぬのかこの愚弟は」
訊けば、笑顔で元気よく返す。フェンリルも、そうつけ加えつつ起きて早々に騒がしいと怒る。それに対して、ヨルムンガンドも泣きそうな顔でこちらも怒り出す。
「だって、お腹が空いたんだもん!」
「まあまあ」
神獣兄弟を宥める夏目の部屋へ、燐と桜がやってくる。
「全員、起きているな」
「朝食の用意ができたわよ」
ヨルムンガンドを腕に抱え食堂へ向かう一行。
テーブルの上に並ぶ和食。ご飯、塩鮭、卵焼き、味噌汁、漬物。
ご飯と味噌汁はおかわり自由とのことで、食卓につきさっそく頂く。
神獣の分も用意されており、椅子に座ったフェンリルは前足をテーブルに置き器用にトレイの上に並ぶ朝食にかぶりつく。ヨルムンガンドも、テーブルの上に乗ってこちらもトレイに並べられたご飯に夢中。
神獣なので、人間の食べ物を口にしてもなんの問題もない。
「はぐはぐっ。ごくんっ。おかわり!」
ヨルムンガンドは、誰よりも食べるのが早くさっそくおかわりを所望。
白い炊きたてのご飯と味噌汁をおかわりしてまた夢中で食べる姿が愛らしい。
「それで、あの後はどうなったんだ?」
燐と桜に、事後処理の報告を訊く。
「使徒は、秋山家が回収し取り調べをする運びだ。聞き出した情報も既に報告済み」
「ヨルムンガンドは、夏目くんに一任という形で収まるみたいね」
「そうか。良かった」
抹殺の件に関しては取り消しとなり安心する。このまま、ヨルムンガンドも連れて帰ることに。
朝食を夢中で食べ口いっぱいに頬張るヨルムンガンドを見て、誰もが微笑みを浮かべた。
こうして、林間合宿の神獣騒動は一件落着。
「うん。大丈夫だ、といっても傷だらけでそうは見えないかもしれないが、ヨルムンガンドの持つ神通力であればすぐ傷も癒えるだろう。今は、肉体的にも精神的にも疲れて眠ってしまったという感じだな」
その説明に胸を撫で下ろす夏目と桜。フェンリルは、やれやれという風に首を軽く左右に振りながらも安堵しているのが分かる。
燐は、捕らえた使徒を一箇所に集め纏めて拘束。三人の中で、口が聞けるのは花折一人。彼女に尋問が始まった。
目的が、ヨルムンガンドということは分かっている。それ以外の目的を喋らせたい燐は、花折へ声を掛ける。
「お前たちの目的はなんだ? ヨルムンガンドを拉致し、誰に引き渡すつもりだった?」
燐の尋問に、花折は睨み上げ鼻で笑い言い放つ。
「ハッ。小娘に答える理由があるとでも? わたしは何一つとして喋る気はないわ!」
声を張り上げ、一切答えるつもりはないと態度でも示す。そうか、と短く言う燐はため息を一つ吐き出す。
「これは、あまり使いたくはない手段だったが仕方がない」
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それは、針なし銃型注射器だ。中に入った液体は紫色をしている。
「……あれは何だ? というか、何故にあんな物を持ち歩いてるんだ桜は?」
見るからに学生が持ち歩くものではない。それを桜が持っていることに疑問を抱き訊いてしまう。
「お兄様が、敵から情報を聞き出すために持って行きなさいって。美哉先輩のように拷問とか、あたしはできないから。燐も苦手だし、夏目くんはできる?」
美哉の拷問、と聞き以前に出会った使徒の女を思い出しその時に美哉が何をしたのか、あれは己には荷が重く無理だと桜の問いに首を左右に振る。
「誰もできないとなると、薬に頼るしかないわけ。そこで、あの自白剤が必要なの。あれは、その自白剤が入った注射器よ。使徒とか、無力化した神殺しから情報を引き出すための道具ってわけ」
桜の説明を聞き、生徒会長って何でもありだなと思う夏目。その話を聞いていた花折は暴れ出す。
「ふ、ふざけるな! そんなもので、わたしを……!」
その抵抗を、燐が力づくで抑え込み注射器を花折の皮膚に当て引き金を引く。プシュッ、と音が聞こえ中身の薬が注入されていく。
花折は、目を開き全身をビクつかせ口が開いた状態に。
「あっ、ああっ……」
と声をもらし動きが完全に止まった。銃型の注射器を離し、花折から情報を引き出しに掛かる燐。
「指示者は誰だ?」
問われた内容に花落は掠れた声で言う。
「く、空海様……。神殺しの御方……」
「なんのために?」
「わ、わたしは、空海様のためにヨルムンガンドを捧げる……」
「それでヨルムンガンドを拉致したはいいが逃げられた、ということか」
「捕らえて、空海様と契約を交わさせるのが、わたしの役目……」
「空海と言う神殺しの命令か?」
「わたしの独断……。空海様に喜んでもらうため。うふふ……」
話しながら笑い出す花折は、突然に天を仰ぎ見ては口の端を吊り上げ叫ぶ。
「うふふっ。あはははっ! ヨルムンガンドを捧げて褒美を貰うのよ!」
焦点が合わない目をし、笑みを浮かべ恍惚とした表情で口の端から涎が垂れていく。
「あの御方の愛を受けるの! わたしの全ては空海様のもの! 空海様の子を孕み産み、寵愛を受け続けるのよ! ああっ……、空海様、愛しています! ずっとずっと! うふふっ!」
壊れた人形のように笑いながら、永遠に同じ名前を繰り返し叫ぶ花折に恐怖を感じてしまう夏目は頬が引き攣った。
これ以上、訊いてもまともな答えは聞き出せそうにないと判断した燐。花折の腹部へ一発入れ、鳩尾に深く拳がめり込み殴られ頭が前に倒れる。
意識を強制的に奪い、これで使徒の全員を無力化に。
桜は、スマホを取り出し電話で連絡を入れている。使徒の回収だろうと、理解し夜空を見上げ息を吐く。
「やっと、終わった……」
呟き、ふとあることを思い出す。
(美哉に電話してない……。どうしよう……?)
と内心で考えるが、時刻は既に深夜の三時だ。こんな時間に電話をするのは、常識的に考えてありえないし迷惑だろう、それにもう眠っているだろうと思い込み自己完結。
それに夏目自身も疲労が溜まり休みたい気持ちが強い。体力も限界で、早く寝たいしどうせ明日には帰るのだから電話をしなくても平気だろう。
「夏目たちは先に戻っていてくれていいぞ」
「あとのことは、あたしと燐に任せて」
「助かる。じゃあ、お先に」
燐と桜に事後処理を任せフェンリルと共に宿舎へ戻る。部屋に戻ってくると、タオルを用意しヨルムンガンドを包み込み寝かせた。
疲れ果てている夏目を気遣うフェンリルが伝える。
「愚弟は、我輩が見ている。主も疲れているだろう? 眠るがいい」
「ありがとう。そうさせてもらう……」
フェンリルの言葉に甘え布団の上にそのまま倒れ込む。着替えることも億劫で、上着だけを脱ぎ捨て。目を閉じればすぐに睡魔が襲い、身を委ね意識を手放す。
翌朝、小鳥の囀りで目が覚めた夏目は布団から体を起こす。
「んっ……。ふぅわぁ~……」
背筋を伸ばし、タオルに包んだヨルムンガンドを見れば、護るように囲み眠るフェンリル。その光景が微笑ましく笑みがこぼれる。
「やっぱ兄、なんだな。それはそうと……、くんくん」
あのまま眠ったせいで、今更ながら汗臭いのではないかと臭いを嗅ぐ。汗臭さというより、血の臭いの方が強い。
お風呂へ直行、と一般生徒いながい関係者のみなので気兼ねなく朝風呂。
「ふぅ~」
さっぱりし部屋へ戻ると、フェンリルとヨルムンガンドが目覚めており夏目が戻ってくるの待っていた様子だ。
「目が覚めたんだな。具合いはどうだ?」
「一晩、眠ってもう大丈夫だよ!」
「嘘は言っていない。ただ、お腹が空いた、と朝から五月蝿いがな。全く、静かに待てぬのかこの愚弟は」
訊けば、笑顔で元気よく返す。フェンリルも、そうつけ加えつつ起きて早々に騒がしいと怒る。それに対して、ヨルムンガンドも泣きそうな顔でこちらも怒り出す。
「だって、お腹が空いたんだもん!」
「まあまあ」
神獣兄弟を宥める夏目の部屋へ、燐と桜がやってくる。
「全員、起きているな」
「朝食の用意ができたわよ」
ヨルムンガンドを腕に抱え食堂へ向かう一行。
テーブルの上に並ぶ和食。ご飯、塩鮭、卵焼き、味噌汁、漬物。
ご飯と味噌汁はおかわり自由とのことで、食卓につきさっそく頂く。
神獣の分も用意されており、椅子に座ったフェンリルは前足をテーブルに置き器用にトレイの上に並ぶ朝食にかぶりつく。ヨルムンガンドも、テーブルの上に乗ってこちらもトレイに並べられたご飯に夢中。
神獣なので、人間の食べ物を口にしてもなんの問題もない。
「はぐはぐっ。ごくんっ。おかわり!」
ヨルムンガンドは、誰よりも食べるのが早くさっそくおかわりを所望。
白い炊きたてのご飯と味噌汁をおかわりしてまた夢中で食べる姿が愛らしい。
「それで、あの後はどうなったんだ?」
燐と桜に、事後処理の報告を訊く。
「使徒は、秋山家が回収し取り調べをする運びだ。聞き出した情報も既に報告済み」
「ヨルムンガンドは、夏目くんに一任という形で収まるみたいね」
「そうか。良かった」
抹殺の件に関しては取り消しとなり安心する。このまま、ヨルムンガンドも連れて帰ることに。
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