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過去~高校生編2
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しおりを挟む-side 桐生玲人-
慶太が変わった。
いや、元に戻ったと言ったほうがいいのか。
笑えてるんだ。
とても自然に。とても楽しそうに。
今までのあんなギスギスした作り物の笑顔なんかじゃなくて本物の笑顔。
少し前の俺たちの間にはこんな時間は流れてなかった。
言葉もあまりなかった。
あったのは身体のつながりだけ。
慶太からセックスの時にコンドームを使うように言われたときは正直参った。
意味もわかんなかったし。
直接あいつを感じられなくて物足りなくて。
でも、この笑顔が見られればいいか。
それだけで満たされていく。
「冷凍って何だよ!ったく。…でも、サンキュな」
「なに急に」
「いやなんだ…別に…。たださ、受験だって言うのに毎日作ってきてくれるから」
「ぁ…ううん。僕、ご飯作るの楽しいし」
「そっか。大学入ってもさ、学食とかじゃなくて弁当作って欲しいな、俺」
「…ん、そだね」
「………どうかしたか?」
「え?」
「いや急になんか……」
「なんでもないよ。ちょっと食べ過ぎて眠くなっちゃった。…それだけ」
「あっそ。…じゃ、今日は特別な事してやろっかな…」
「……なに?」
ぽんぽんと自分の膝をたたく。
「膝、貸してやるよ。寝な?」
こんなことするのは本当は俺よりも慶太のほうが全然似合うけど。
たまにはいいよ…な?
「膝…まくら?玲人が…。あははっ。似合わない!」
「お前っ。…じゃ、やめるわ」
「ごめん!うそうそ、ごめんね?……膝、借りていい?」
「……最初からそう言えよ。ほら」
もう一度膝をぽんと一度たたくとそこに慶太が頭を乗せてきた。
「どう俺の枕?マジ寝心地いいだろ?高いぞ」
「うーん、なんかね…ゴツゴツしてる」
「お前、マジ…ありがたみとか…感じてねぇだろ」
「そんなことないよ。ちゃんと感謝してる」
「はぁ、どうだか」
「…ねぇ、玲人?」
「あぁ?」
「玲人…」
「……どうした、慶太?」
「ごめん…ちょっと名前呼びたくなっただけ…」
二人の間にある優しい雰囲気を壊したくなくてそれ以上何も聞けなかった俺。
きゅっと目をつぶって俺のズボンをきつく握り締めるお前の気持ち。
お前の決意。
別れ。
まだ何も気づいてなんかいなかった。
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