僕は本当に幸せでした〜刹那の向こう 君と過ごした日々〜

エル

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大学生編

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ーside 桐生玲人ー


一ヶ月くらい前か。

なんとなく慶太の情緒が不安定になった気がした。

普通に振る舞おうと努力しているのが手に取るように分かった。


ただ俺にはその理由が分からない。


誰よりもあいつのそばにいるはずなのに何も出来ない。

無力な俺。


そんな時だった。

二つ下の後輩に告られたのは。


顔もまぁかわいい。

自分でもそれが分かってるようなタイプ。

しぐさや服装、全てがそれを物語っている。


でも俺には慶太以外は全てのっぺらぼうのようなもの。

裏を返せば慶太以外は誰でもいい。


そいつと関係を持った。

ホテルだったりそいつの家だったり。

そいつは調子に乗って「桐生先輩」からなぜか「レイ」と俺のことを呼びだした。


そして最近になってやたらと俺の家に来たいと言うようになる。

俺の家。

すなわち慶太の家。

俺らの家。


断った。

何度も何度も。


今更だと思われるかもしれないが、俺は慶太と住むようになってからあの家に他のやつを入れたことがない。

それは約束だったから。

慶太との約束だったから。


でもあまりにしつこくて。

しつこすぎて断るのも面倒くさくて。

鬱陶しくて。


慶太がバイトから帰る前に帰せばいいかと。


バカだから。

救いようのない俺は。

そう思ってしまった。


こいつとやる事なんか一つしかなくて。

家に着くなりヤリ始める。

キスをして。

適当に慣らして。

突っ込んで。

腰振って。


慶太の繊細で俺を心の底から沸き立たせるような艶っぽい声なんかと違って。

こいつの喘ぎはただ下品で、はしたなくて、うるさくしか感じない。

夢中で俺に腰を摺り寄せてくるこいつに少しの魅力も感じない。

慶太だったら、もっと悦ばせてやりたいと思うのに。


でも身体は正直で。

反応して、自分の欲を吐き出した。


相手の叫び声と。

ごちゃごちゃとした自分の頭のせいで。


全然気づかなかった。

玄関が開く音も。

慶太がそこに立っていることも。


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