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大学生編
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しおりを挟む「ダチ…か。何、カラオケ行ったりとか、ゲーセン行ったりとか?」
「ううん。僕、お金はあんまり使えなかったから…いつも、普通におしゃべりして。…それだけなんだけど…」
「…だけど、楽しかった?」
「……すごく」
「だろうな」
「…え?」
「今、お前、すっげぇ笑顔が自然だから」
そこで始めて気づいた。
自分が笑っていたことに。
確かにあの時。
あのころが一番幸せだったのかもしれない。
玲人が隣にいて。いつも微笑んでくれて。
もう片方にはあっちゃんがいてくれて。いつも笑わせてくれて。
もう、戻れはしないのだけれど。
「じゃあ、楽しい高校生活だったわけだ」
「……ぁ…はい」
「…でもないんだ」
「…楽しかった。きっと両親の事があって以来初めて毎日が楽しいと思えた。でも…」
「うん」
「でも…僕は欲張りになり過ぎたんだと思います」
「欲張り?」
「はい。全部が欲しくて、全部を手に入れたくて。…結局全部を失った」
「……」
「高校生のときなんです」
「…なにが?」
「彼と出会ったの」
最後はちゃんと佐倉さんの顔を見据えて言った。
言えた。
「そっか」
「…そうです」
「ごめん。一個聞いてもいい?」
「どうぞ」
「その『彼』がその指輪の『彼』?」
「…はい」
そう言われて僕の手はおのずと右手中指へ。
もう癖になってしまった。
この指輪をくるくると回すのが。
「僕ね…本当に、どうしようもないんですよ」
「…ケイ?」
「僕はバカだから。バカだから…」
「……いいよ、もう。」
「バカだから、外せないんです。この指輪」
「お前…」
「バカだから、そばにいたいんです」
「……」
「バカだから……僕だけを見てほしいくせに。見てくれなくても離れられないんです」
先ほどまでの笑みとはまったく違う。
自嘲気味の笑いが込み上げる。
「もしかしたら、もう愛されてないのかもしれない。…そう思っても彼を想っていたいんです」
バカだけれど。
ううん。
バカでいい。
両親の話を聞いても感情を表に出さなかった佐倉さん。
でもこの時、眉を寄せて少し顔をゆがめて僕を見ていたこと。
僕は気づいてなかったんだ。
彼の思いに。
僕はまだ気づかず彼の優しさの上にあぐらをかいていた。
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