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大学生編
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しおりを挟む「なんで、お前はそこまでそいつのことを思えるわけ?…言い方きついけどさ、お前以外にもいんだろ、相手が」
「…そうですね。……けど…」
「けど?」
「だけど…これは僕の初恋だから」
初めて恋をした。
恋なんてすることなど無いと思ってたのに。
ほんの少しでも愛されてると感じることが出来た。
一生味わう事などできないと思ってたのに。
僕の初めては。
いいことも悪いことも。
全部玲人とだった。
「初恋なんです。実らないと思ってたのに、それが実って。……初めて、僕、人を愛したんです。そして……うん、これが最後の愛、なんです、僕には。」
そう言い切って、僕は佐倉さんに笑って見せた。
けど、佐倉さんの表情は暗くて。
いきなり、ばちん、と思い切りデコピンをされる。
「痛っ!」
「痛いだろ?だったら痛いって言えばいい」
そしてもう一度、また強めにばちんとされる。
「ちょっと佐倉さん、痛いです!」
「痛いだろ?だったら泣けばいい!泣けよ…お前」
「……」
「泣かないだろ…お前は。…泣いてきて…ないだろ」
「…僕…」
「泣けよ。言え。全部吐き出せ!」
しんとした空間に彼の声が良く響く。
それは僕の心まで届いて。
僕はくるりと彼に背を向けた。
佐倉さんはそんな僕の肩をがっしりと掴む。
「デコピン、痛かっただろ?泣けよ…泣いていいから…」
ブンブン、と思い切り首を横に振る。
声は出さない。
出せない。だって……
身体をこわばらせる僕を無理に自分のほうに向かせようとせず。
佐倉さんは自分から僕の前へとゆっくり歩いてきた。
「ケイ、泣け。…あんだろ、言いたいこと。吐き出したいこと。…今、ここで俺が聞くから」
「……無理」
「…ケイ?」
もう一度首を左右に振って僕は顔を地面に向ける。
佐倉さんはそんな僕の目線に合わせようと少ししゃがんで腰の位置を低くする。
そんな彼と目が合った瞬間、全てがあふれ出した。
ぼろぼろと。
一度溢れ出した涙をとめることはできない。
「僕…僕…ッ…」
「…うん」
「僕…玲人…玲人が…好きっ…なの」
「…うん」
「愛して…っく…なのに…玲人は…」
「……」
「見て欲しかったの。…僕だけ…ひっ……僕だけに、笑ってほしかッ…」
「ケイ…」
「ほかの人……っなくて…僕だけ…」
「うん…だな」
「僕だけ…愛して欲しかった!」
叫んだ瞬間ぎゅっと抱きしめられる。
暖かい佐倉さんの腕の中に。
「愛して…るっ…だから…ッ…」
「…」
「だから……っく…彼の愛が…無くなってくの…見たくな…」
「……ケイ、お前…」
「もう…逃げたい…」
いつからだろう、傾き始めたのは。
僕らのお互いへの思いの重さ。
天秤は初めは平衡だったはずなのに。
いつしか僕のほうに傾きだして。
最終的に底が地についてしまった。
重りがどんどん僕の皿に乗っていって。
皿が重りに耐え切れなくて壊れてしまうのを。
見たくなんてない。
「逃げて…いいよね?」
「…あぁ」
抱きしめられていたはずの僕の身体が離されて。
佐倉さんが僕の顔を見つめて。
僕もそれから目を離さなくて。
彼の顔が近づく。
避ける事などせずに。
僕は、目を閉じた。
玲人と違ったぬくもりを。
初めて唇に感じた。
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