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EX-1
しおりを挟むオレは放浪生活を始めてから4年ばかし立つ薄汚れた死に損ないだ。友人はオレのことをTとよんでいた。しかしこんな生活を始めてからみんなオレから離れて行った。母親は三年前に死に。親父は死んだふりしてオレから避け、兄弟も他人のふりをした。 どっちみちあんなクソ田舎にウンザリしていたのでそんなことはどうでもよかったが、腹がへった寒い夜なんかに母親の手料理がなつかしくなった。 11月のある日、おれは路地で雨に耐えていた、くるまったビニール袋の中で山盛りのミートボールスパゲティのことを思い浮かべていた。 「あぁマミー、このパンツの洗い方も分からない息子のために、洗濯した下着と、ママの特製スパゲッティ・ウィズ・ミートボールを早く届けにきてっ!」 でも、オレを迎えに来たのは髭モジャ丸眼鏡の大男、オレはこいつをコスモと呼んでいた。 オレ「ママは~?」 コスモ「なぁT、お前の母親は死んだだろ。」 オレ「ああそうだっけ?」 コスモは放浪生活のオレに困った事があると電話一つですぐに何処へでも自転車で駆けつけてくれた。 ヤツの乗ってる自転車はウサギの皮を固めて作ったフレームで出来ていたので、何処へでもスグに行く事が出来た。たとえ別の星へでも一晩あれば行く事ができるんだ。 オレはコスモが届けに持って来た紙袋の中身をごそごそ確認した。「えーと、痔の軟膏にイヤホンのスポンジ、パンツに靴下、それと・・そうそうこれこれギニーズの薬草入りバニラシェイク」 このバニラシェイクは、ある町のギニーズというミルク店にしか売ってない特製の薬草入りのバニラシェイクで。この薄く緑がかった白い液体を飲むととっても気分が良くなった。 オレ「あそこのオヤジ、どんな薬草が入っているかぜったい教えないんだぜ。それさえ解れば自分で作れるのによぉ。」 コスモ「おい、そんなもんばっかり飲んでるから母親が死んでることも忘れちゃうんだぜ。」 オレ「今なんか言った? ああ、そうか。」「そうだな、でも今更もう遅いってことさ。」 人はすぐ色んな物の中毒になる。コーヒー、酒、チョコレートアイス、ドラッグ、コンデンスミルク、カレーヌードル、まぁ何でもだ。 コスモ「ところでT、これからどうするんだ?。」 オレ「ああ、ここから少し行った所にある河の近くに良さそうな小屋を見つけたんだ。」「まぁ、ウマくいけばそこでひと冬越せればと思ってね。」 オレはひとけの無い泊まれそうな小屋やなんかがどのへんにあるのか感で見つけるのが得意だった。たいていは数日泊まっておいとまするって具合なのだが、たまに持ち主に見つかったりして叩き出されたりすることもあった。 オレ「なぁ、腹へったろ? 近くに美味いそば屋があるんだ いこーぜ。」 オレはいつもコスモが届けに来たときに礼がわりに飯をおごった。まぁ、金の無いときは逆におごってもらったが・・。 おれら二人は蕎麦屋ののれんをくぐった。席につき水が出され、おれは鳥そばと卵焼きをたのんで、コスモは肉そばとかやくご飯を注文した。 コスモ「金もってんの?」 オレ「ああ、まーね。」 「じつは、ちょっと前にいい稼ぎがあってね、ふところが豊なのさ。」 「何でか聞きたいか?」 コスモ「まあ。」 オレ「実はちょっと前にね・・・」 そばが来るまでオレはコスモに少し前にあった出来事を話しはじめた。 オレは一ヶ月前、ベノという町に来ていた。なぜベノに来たのかと言うと、この町にあるコーン沼には藻亀という大型の亀が多く居て、そいつを捕まえて稼ごうと思ったからだ。 なんてったってこの大型の亀の肉は味も良くヘルシーで栄養価値あり高く売れると聞いたからだ。 まずベノに着いてから路上の洋梨売りにコーン沼の行き方を聞いた。オレ「フムフム・・あっそ、あんがと。」 ヤツが言うには 東から西に行く列車に飛び乗り、コーン沼が見えたら怪我しなさそうな草の生えてる所に飛び降りろってことだった。 さぁ行き方は分かった、次は藻亀の捕まえ方だ。ちょうど歩いてると町の猟銃店を見つけた。中に入って見ると鹿の頭やスカンクの剥製などと一緒に藻亀の剥製もあった。 オレ「よし、ここなら捕まえ方教えてくれんだろ」おれはカウンターに居る男に話しかけた、すると。男「なんの許可もないお前みたいな乞食に藻亀を獲られちゃ問題なんだよ! さあ出て行け!」 オレは店を怒鳴り出された。 一応知ってはいたが、藻亀を獲るにはちゃんと許可がいるらしいのだ。金になるものには何でもそうやって面倒なルールを押し付けてくるのが社会ってものだが、オレにはそんなもん糞食らえだ。 オレ「まぁいいさ、藻亀の獲り方なんて大体はネットで見て下調べしてるんだ。」 しかし捕まえるには道具も必要だった。まずは竿。こいつはそこらへんの木の枝でも大丈夫、次に丈夫な釣り糸。これも大丈夫、実はさっきの猟銃店で見つけた高級釣り糸をかっぱらってきたのだ。「フフフ、ざまぁみろ。」 しかし一番問題なのは糸の先につけるエサになシルバーだった。藻亀はシルバー、すなわち銀に食いついてくる性質をもっているらしいのだ。 オレはふと思いつき、便所の鏡で自分の口の中を覗いてみた。しかしどの歯にも銀は被さっていなかった。銀歯どころか奥歯なんてほとんど残っていなかった。 オレ「クソっどうしようか・・」 だがオレはすぐ別の名案を思いついた。とりあえずその日はバーに行きビールを飲んで、どこかの軒下て寝ることにした。 おれは昼ごろまで軒下でゴロゴロしてから、前の日バーで聞いたある場所へいくことにした。途中の民家でスコップを勝手に拝借、そして昼過ぎの三時には目的地の墓場に着いた。 なぜ墓場かって? 墓を掘るからさ。目的は死体がつけているシルバーのリングだ。 夜中になるまで近くの無人野菜売り場の裏に隠れていることにした。 真夜中2時 墓場 オレ「さて、おっぱじめっか」 まず、良い墓石を使ってる金持ちそうな墓を掘ることにした。オレは30分で1メートル近くも掘ったがまだ棺には当たらなかった。その後急激にペースは落ち、ぜいぜい言いながら2メートルぐらい掘ったところでようやくバコッとスコップに棺がぶつかる音がした。もうすっかり汗だくのオレは、いちおう辺を見回したあと棺を乱暴に開けた。死体への恐怖心や気持ち悪さなんてまったく感じている暇なんてなかった。中の死体は女だった。ドレスを着たなんかの根っこってかんじだった。ライトで死体の手を照らすとほとんどの指に指輪が着けられていた。 オレ「ついてるな!ははっ」 さっきまで根っこに見えてた死体の女がお姫様に見えてきた。 オレは指から指輪をつぎつぎ抜いていった。どーしても抜けない指はビスケット菓子みたいに指を砕き割って指輪をうばった。銀のリング以外に金のリングや宝石のついた物まであった。オレ「すげぇ収穫 亀捕まえなくてもしばらく生きていけんなこりゃ。」 オレは急いでで穴を埋めてはその場から去った。 予定ではそのまま西(コーン沼方向)へ向かう列車へ飛び乗るつもりだったが、だいぶくたびれたのでいったん街へ戻りモーテルで寝ることにした。途中24時間やってる質屋で金の指輪を質入れ、33000になった。その金でストアでスナックとかビールなど買って“ブルーパイロ”っていうモーテルにin。 深緑色のソファにドサッと座る。ビールの栓を開けはんぶんくらい飲んだあたりでウトウトしだしそのまま落ちる。どれくらいだったか、たぶん数十分落ちてて目を覚ましベットに行きズボンぬいでベットの上に横になり眠る。 次の日の17時過ぎまで寝てて、小便しに起きるとドアの下から紙が入れられてるのに気づき見るとデリヘルのチラシ。それを見ながら開けっ放しだった残ったビールを飲みチップスを口いっぱいにほうばる。 オレ「ブルーパイロの104、痩せてて若い娘で。」チラシのデリに電話。 15分もしないうちに女が来る。ドアを開けると逆毛の若い娘が立っていた。オレは『まぁ、悪くないか』と思う。一緒にシャワーに入りすみずみ洗われる。デリ嬢「ドロだらけだよ?」オレ「そうだね」デリ嬢「・・・」オレ「可愛いね、いくつ?」デリ嬢「18」 やせっぽっちな娘で、かがむと背骨が浮き上がった。 ベットに行き、キスをするそれからどんどん下へと愛撫されて行き、アソコをくわえられる。 なかなか上手い、ツボをおさえた丁寧なフェラだった、イキそうなのをがまんしてつぎは69。もう出したくなりそのまま口の中でイク。 デリ嬢は電話かけ「いま終わりました」と報告、おれがベットの上でぼーっとしてるうちに、娘はそれからタバコ吸い、着替えて髪と化粧を整え出て行った。 オレはそのままベットの上でさっきの余韻で自分で一発シコる。それからまた眠って。夜中の一時ごろ起き出かける準備はじめる。この町を列車が通るのは4時前だ、通るといても停まらないから走っている列車に飛び乗ることになる、田んぼがあるカーブのあたりでスピードが少し落ちるらしいのでそこで飛び乗れとのこと。まあ、なんとかなるだろう。 モーテルを出でまた昨日の質屋に寄る、モーテル代とデリヘルで金を使ったので死体から盗った残りの金品類を質入れすることにする。ぜんぶで68000、うーん・・こんなものか・・。 とりあえず腹がへっていたのでファミレスに入る。300グラムのステーキとクリームコロッケ2個をたいあげる。 午前三時 そろそろ列車に飛び乗る場所の田んぼに向かう。 月がキレイに出ている。月が出ている時に太陽のことを考えてしまうと月が嫉妬してにらむらしい。 ではためしに太陽のことを考えてみよう。 小さい頃クレヨンで画用紙に太陽の絵を描いたことの話し。9割の子供は赤のクレヨンで太陽を描き1割の子供が黄色のクレヨンで描くという。オレは黄色だったな・・。 さて月はにらんでいるかな? オレは月を見てやった、たしかに睨んでいたよ。 可哀想なので月の話しもしよう。といっても何もなんも思いつかないな、あ、そうそう月って玉ねネギの皮の剥いた姿に似てるよな。いやそれなら丸ごと茹でたジャガイモにもにてねーか? ハハッ。こんなんじゃ月に悪い、もっとマシなこと話すことにした。月にありそうなモノ、うーん? よく落ちるトイレ用洗剤・・・、天気予報とセットになった生姜焼き弁当、占とセットのポテトサラダなんてのも売ってそうだな。それとガールフレンド拘束アパートメントなんてのもありそうだ。 そうすると月が「なかなかよさそうじゃん」って感じにオレを見た。 オレがぶつぶつ独り言を話してると馬糞の匂いがしてきた。回り見渡すと小さな馬小屋が建っていて、その回り一面に稲刈り前の田んぼが広がっていた。 田んぼの中を大きなアーチ状のカーブした線路があり、「そこだなっ」と思った。 時計を見ると3:38 でオレは線路の近くで列車が通るのを待った。 バッタが稲の中で跳ねている音がした。 しばらくすると遠くからガタガタと音がしてきた、東の方からオレが生まれる前から走ってそうな古い貨物列車が近づいてきた。やけにゆっくりと近づいてくるんで早く来ねえかとイライラしていた。 そして先頭列車がオレの横を突っ切った、オレは思ったより早いなと感じて飛び乗るのが恐くなった。どんどんと車両が通過して行きあせった、何回か飛び乗る仕草をして三回目ぐらいに思い切って列車につかまった、右足をのせる所が無くてブランブランさせながら掴まってると誰かが背中かのバックパックをつかんでオレごと引き上げてくれた。 オレ「ふう、たすかったよ、右足もって行かれるかと思ったぜ。」 男「無茶するね、あんた。」オレを引き上げた男が言った。 男はパオロという旅人で、妹に会うために24日間も旅をしているのだと言う。 パオロ「あんたはどこへ行くの?」 オレ「おれはすぐ降りるよ、もうすぐコーン沼近くに来たらね」 オレはパオロに藻亀獲りのことを話した、そうするとパオロも一緒にやりたいと言い出した。オレはべつにかまわないと即答した。パオロは子供の頃に良く遊んだ近所のヤツに感じがすごく似ていて初対面に思えなかった。 オレ「妹待たせちゃうよ?」 パオロ「いや、待ってなんかないさ ほんとは何処に居るのかさえ分からないんだ・・探しながら旅しているんだ。」 パオロは赤い手織りのネルシャツのポケットから小さいボトルを取り出しグビッと一口飲んんでそれをオレに投げてよこした。オレも一口飲んだ、強いウィスキーが入っていた。 コーン沼が近づいてきて、オレ達は飛び降りる準備をした。 だが飛び降りて怪我しなさそうな茂みなんて見当たらなかった、列車も結構なスピードを出していてヤバいと思っていたらパオロがいきなり列車から飛び降りた、やつは土の地面の上を何回転かしてオレの方を向いて早くお前も飛び降りろと仕草をした。オレも思い切って土の地面の上に飛び降りた、右の肘と肩を思いっきり地面で打ったが無事降りれてホッとした。パオロがゲラゲラ笑いながら近づいて来て、バンバンとオレの体を叩いて土をはらった。オレもゲラゲラ笑いがとまらなかった。 オレ「すげぇ ハハッ 早さで ヒヒッ 回転してやんの ぶはははっ」 パオロ「そっちだって、スゴい音で叩きつけられてやんの がっはっはっ」 オレらは沼の方に向かう間ずっと笑っていた、しかも酒やクスリやらでハイになって下半身に力が入らない状態で沼地を進んでいた。こんなんじゃとても狩りができそうもなかった。オレらは沼地にある古い小屋を見つけ、そこで休むことにした。焼き菓子みたいな焦げ茶色の小屋の中には寝床らしい木の台がちょうど2つあったのでそこで眠った。 オレらは寒さであまり眠れなかった。 パオロ「なあ、薪ストーブがあるぞ」 オレ「なんだ、これ着けりゃよかったな、クソ寒くて夢にペンギン出てきたぜ」 パオロ「皇帝か?それともフンボルト?」 オレ「さぁね、なんか冠羽がついてるやつだった」 パオロ「ならマカロニかな?」 パオロはストーブや回りをうろちょろとみながらどーでもいいオレの夢の中のペンギンの事を聞いて来た。 パオロ「薪どっかにあるか見てくる」 オレ「ああ。」 パオロが薪を探している間にオレは小屋の中を見て回ったが、有るのは まがったサボテン 鉄と木が組合わさったクソ頑丈なロッカー 上空300mから撮られたきっとこの辺の写真 もともと開かないのか開かなくなってしまったのか分からない窓 土や砂でざらざらしてるテーブルとイス そんなもんだった。 パオロ「外に少しだけ薪があったぞ」 パオロが薪をかかえてもどってきた。 オレ「いいね、ストーブ着けようぜ 寒いし頭も痛くてたまんねーんだ」 パオロ「なあ、腹へったな なんか食うもん持ってるか?」 オレ「ああ、ちょっとまってバッグに何か入ってるはずだ・・」 オレはバックパックの中からスナック、ピーナッツそれに宇宙飛行士御用達のアルミに巻かれたパンプキンタルトなど取り出してみたがどれも列車から飛び降りたときの衝撃で中身が粉々になっていた。 オレらはそれを広げた地図の上に全部あけて、その粉々になったものを指にくっつけるようにして食べた。 部屋が温まってきて、ようやく気力も湧いた。オレは藻亀狩りへ行く準備を始めた。準備と言ってもポケットに銀のリングと店からかっぱらった釣り糸をつっこんでおしまい、なんかマヌケな感じがしたがとりあえずこれで沼へと向かった。 途中、竿になりそうないい感じの枝を拾った。オレ「こいつは良い」 パオロ「んで、どうやって亀を獲るんだ?」 オレ「魚を釣るのと一緒さ、糸にエサを付けてそれを沼へ垂らして亀が食いつくのを待つ 食いついたら近くまで引き寄せて棒で頭をひっぱ叩いておとなしくなったら引き上げるって具合だ。」 パオロ「俺は何すればいいの?」 オレ「亀をひっぱ叩く役 殺しても良いし、気絶させるだけでも良いよ まぁどの程度で死ぬかは分かんねえけど。」 糸を垂らせそうな沼岸が目に入る。そこに行くため下っていると草のはえて無いツルツルした黄土色の土が出ている場所があってそこで滑って転ぶ。オレの後で来たパオロもそこで転ぶ。2人ともクソを漏らしたみたいにケツにドロが付いてしまった。 沼は曇りの日の黒い水だった。オレは糸に銀のリングをしっかり結び付けそれを拾って来た木の枝の先に付け沼の水面に垂らした。リングがすぅっと沈んでいき、3メートルぐらい沈んだ所で沼底に着いたのが分かった。オレは沼底より少しリングを上げてそこでキープした。 こうして実際に銀のリングを水に入れてみて『ホントにこんな物で釣れるのだろうか?』今更ながら不安になってきた。 オレ「まず一匹目釣れたらすぐ食ってやる。」 パオロ「ああ、丸焼きだ!」 7,8分経ったころだろうか、何かが食いついて竿の頭ががビクン!と下がった。 オレ「うあっ かかった!」 パオロ「なにっ!」 俺らはバタバタ慌てた。 オレはくわえてたタバコを口から落とし、パオロはいつの間にか用意してた50㎝ぐらいの棒を持ち、構えるような姿勢をとった。 竿を引いたが、びくともしなかった。 後ろの方でパオロが、引け!とか 焦んな!とか叫んでいる。 何回かグイグイ竿を引いてるとチョッとづつ近づいて来たのが分かった。 すると水面に亀の頭が出てきた。真っ黒でつやつやしていて、恐ろしく不気味だった。しかも臭そう・・ そのままゆっくりと竿を引いて行き、沼岸にこの不気味な物体を引き寄せた。 オレ「よし! ぶん殴れ!」 パオロに言った。 パオロは手首のスナップを効かせて、棒で亀の頭を殴った。 初めは亀も首を伸ばしたり、するどい爪のついた手を必死で動かしていたがそのうち大人しくなった。 オレは竿を離しパオロと二人掛かりで亀を沼から引き上げた。 藻亀は家庭用複合機ぐらいの大きさだったが、重さはもっとずっしりしていて、しかも体中に生えてる藻が水を吸ってよけい重くさせているようだった。 パオロ「うわっ!クセぇ~」 オレ「何なんだよコイツ、気持ちわりぃ」 さっき、一匹目は自分たちですぐ食ってやると言ってたが、そんな気はまったく無くなってしまった。 オレは亀の口の中から銀のリングを引っ張り出した。銀のリングはこれしか無いので、もし糸が切れて亀がリングを飲み込んでしまったら、もう釣れなくなってしまうのだ。 パオロ「こいつホントは気を失ってるだけなのかも もし目が覚めて沼の中に逃げたらどうする?」 オレ「なら首をちょん切るか、足をちょん切っとくかだな 足は四本あるから首を切った方が手っ取り早いだろうけど。」 オレはズボンの尻ポケットに入ってた折りたたみナイフをパオロにわたそうとしたが、パオロはペコスブーツの中から自分のナイフを取り出して亀の頭を引っ張って首をスルリと切り裂いた。 オレは内心、自分で亀なんて切り刻みたくなんか無かったのでパオロが居て良かったと思った。 俺らはその調子でその後も亀をアホみたいに獲りまくった。 夢中になって、日が落ち暗くなってるのすら忘れていた。 なんと21匹もの藻亀を2人で猟ったころには次の日の太陽が昇っていた。 オレ「ふぅ・・・こんぐらいでイイだろ これ以上獲ったらこの沼の生態系を壊しちまうぜ」 パオロ「ああそうだな もう酒飲みたいし終わりにしよう」 俺達のシャツやズボンは藻とドロと亀の血で汚れていた。 オレ「ひとつ言うの忘れてたよ・・」 パオロ「なんだい?」 オレ「これ(藻亀)運ぶ事。」 パオロ「・・・」 コーン沼から一キロぐらいの所にガソリンスタンドとコンビニエンスストアがあって、とりあえずそこで俺達は酒と食い物を買い、公衆電話から藻亀を買い取ってくれるらしいJ.Bという男に電話をした。 トゥルルルル・・・ ガチャ。 オレ「あ、J.Bさん?」 J.B「あっ、なんだ?」 恐そうな声だった・・。 オレ「あのぉ、藻亀捕まえたんだけど買い取ってもらえますか?」 J.B「あっ、何匹だ?」 オレ「えーと、20匹ぐらいです・・。」 J.B「そいつは死んでるのか?生きてるのか?」 オレ「死んでます 首ちょん切って・・。」 J.B「あぁそうか まぁいいだろ モノは何処にあるんだ?」 オレ「沼です 沼岸に置いたままで、運ぶ手段がなくてこまってるんです・・。」 J.B「チッ、まぁいい わかった 明日トラックで捕りに行くから、あんたは沼の入り口あたりで待っててくれ。」 オレ「あ、はい 何時ぐらいですか?」 J.B「朝の10時ぐらいに行く」 オレ「10時ですね、わかりました。」 ガチャ・・ツーー・・ パオロ「どうだって?」 オレ「買い取ってもらえそうだ、明日トラックで取りに来てくれるってさ」 パオロ「やったね」 オレ「まーな」 そして翌日 前の日飲み過ぎてむくんだ顔の眼の赤くした男2人が沼の入り口に向かったのは、約束時間の10時をとうに過ぎていた。 沼の入り口にトラックとその横に立ってる男の姿が見えた。 オレ「すみませ~ん! 遅くなって・・。」 俺らはペコリと頭を下げながらJ.Bであろう男に駆け寄った。 J.B「なんだ遅ぇな まぁいい、トラック乗んな。」 意外にいい人そうでほっとした。俺らはトラックに乗り、藻亀の所に案内した。 J.B「あんたら藻亀猟りは初めてだったのかい? 初めてでよく20匹も獲ったな。」 オレ「エサの銀の指輪が良かったんじゃないですかね?たぶん・・」 J.B「銀の指輪? はは、あんなもん光ればなんだっていいんだよ。」 オレ「はぁ・・」 トラックは途中までしか入れず、藻亀がある沼岸まで30メートルぐらい歩いた。 亀に少しハエがたかっていた。J.Bが言うには、もっと暑い時期だったらウジが湧いて使えなくなっていたらしい。 J.B「さぁ、トラックに積むぞ あんたらも手伝ってくれ。」 パオロ「あ、もちろんです。」 オレ「ええ、もちろん。」 一匹20kgぐらいの亀をひとり一匹ずつトラックまで抱えて運んだ。 パオロ「 ハァハァ・・しんどいな・・」 オレ「キツいな・・クセえし・・くそ重い!」 ようやく21匹の藻亀をトラックに積むと、J.Bがポケットから札を取り出し指で舐めながら数えはじめた。 J.B「どんぶり勘定で全部でまあ252,000だなぁ、いいかい?」 オレ「ええ、もちろんですっ なぁ? 」 パオロ「うん、いいよ。」 J.Bは金をわたすとサッサとトラックに乗り帰っていった。 俺達は252,000を半分に分けた。ポケットが札でパンパンになった俺らは近くの街に行き遊ぶことにした。 ガソリンスタンドの前にバス停がありそこから一番近くの栄えてるドゴという街へ向かった。二人とも汚れた服のままだったから回りの奴らが変な眼で見てきたが俺らは気にせずバスの中でも大声で臭い息をまき散らした。 1時間半バスに揺られようやくドゴに着いた。ベノなんかよりよっぽど栄えたデカイ街だった。 まず俺らは飯を食う事にした。 ステーキ500gとビールで腹をみたすと。そのあとキャバレーやパブ、ピンサロなどはしごして最後にダイナーでコーヒーを飲むことになり、そこでパオロとは別れることにした。 オレ「いや~ホント楽しかったよ また会おうな」 パオロ「こちらこそ・・楽しかったよ、またな。」 パオロはまた妹探しの旅へと向かった。 また奴とはどこかで会いたい・・。 オレ「ってなわけで、ちょっとばかり今ふところが暖かいのさ。」 コスモ「へえ、そんなことがあったんだ しかしオマエそれ犯罪すれすれ、いや完全に犯罪じゃないのか?」 オレ「ん? どこらへんが? 」 そば屋の店員「おまたせいたしました~ 鶏そばと卵焼きで~す。」 オレ「あ、俺です」 コスモ「だから、墓のやつとかさ・・」 そば屋の店員「おまたせいたしましたぁ~、肉そばとかやくご飯です。」 コスモ「あ、俺っす」 オレ「まぁ とりあえず食おうぜ ズズズッ・・。」 コスモ「うん ズズッ。」 オレ「うめぇな」 コスモ「ここのつゆイケる。」 オレ「ズズッ」 コスモ「ズバッ」 終わり。
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