時駆け! 星空ふたごは歴史をかえてみせます

涼・麦穂

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第2章 運命をかえる!

2.神さまホルンちゃんはお話しする

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 たしかに、処刑場跡しょけいじょうあとではたくさんの遺骨いこつが発見されています。
 けれど、あれは農民たちのものではありません。ほんものの極悪人ごくあくにんや、病気びょうきくなった人たちのものです。

 なぜそんなことをしたかというと、処刑がおこなわれたことにしなさいと、お殿とのさまが命令めいれいしたからです。

 なぜお殿さまがそんな命令を出して、一揆いっきの結果がいまのように伝わっているか……。

 350年まえというのは、江戸時代えどじだいがはじまってから、すこしたったころです。
 このころ、日本全国の殿さまたちは、おいえりつぶしにならないように必死ひっしでした。
 問題がおこると、将軍しょうぐんさまから領地りょうちを取りあげられて、○○と名のれないようにされてしまったんです。責任を取らされて切腹せっぷく、なんてこともありました。

 そうすると、家族も家来けらいもみんなが路頭ろとうに迷うわけです。
 いまでいう、『ほーむれす』になっちゃう人もたくさん出て、そりゃあもうたいへんなことでした。

 で、松林藩まつばやしはんです。

 2万人もの人がお城に押しよせて、年貢ねんぐが重すぎると抗議こうぎしたのです。これはもう、政治の失敗です。お家お取りつぶしがとうぜんの大問題です。

 一揆いっきがおこったとき、松林のお殿さまはおとなりのはん出張しゅっちょうちゅうでした。
 お殿さまのいない松林城の、お留守番をしていた家老かろう……いまでいう大臣だいじんのような人たちは、おほりのカエルよりも青くなりました。
 なにせ、一揆がおきたのは、家老たちのせいだったからです。そして、一揆をおさめなければならないのも、家老たちです。

 お殿さまがいないのをいいことに、年貢を増やすおふれを勝手かってに出していました。松林藩はご近所の藩と比べて年貢が重かったのですが、多い年貢を、さらに多くおさめろ、と命令したのです。

 増やした分を、じぶんたちのふところに入れるためです。
 冷害れいがいによる凶作きょうさくが続くなかで、ですよ? 

 おかげで、農民たちの堪忍袋かんにんぶくろが切れてしまいました。

「いいかげんにしろ、これ以上はむりだ! いや、減らせ。ほかの藩と、年貢の量をおなじにしろ!」というぐあいに。

 あせった家老たちは、農民をだましてでも一揆をおさめようとしました。

 2万人の農民はとても大きな力です。
 でも、ばらばらになって村へ帰れば、武士ぶしに逆らうほどの力はありません。
 解散かいさんさせることさえできれば、おさえこめます。

 家老たちは、「近隣きんりんの藩と、年貢の量をあわせる」という約束をしました。

 信じた農民たちは、村へ帰っていきました。
 けれどなん日かあと、兵を送りこんで、一揆を計画・指導した人たちをとらえたのです。

 さらに、「が藩の殿さまは、はたいへんかくが高いお家なので、いままでの年貢の量で、ちょうど近隣とおなじくらいということになるのである」と、もとどおりにしてしまいました。

 すくなくとも、年貢を重くするという部分は取りけされたので、一揆が成功したと思った農民も多くいました。
 まったくうまく丸めこんだものです。

 つぎに家老たちは、出張ちゅうのお殿さまに報告と確認のお手紙を出しました。

『一揆はおきましたけれど、一部の悪党あくとうどもがみなをそそのかしたものです。
 みなに年貢の大切さをいて解散かいさんさせましたから、大きな被害ひがいはありませんでした。
 一揆をくわだてた者たちは残らず捕えました。捕えた不届ふとどき者どもは死刑しけいしょすべきとぞんじますが、いかがでしょうか』

 一揆の指導者を処罰しょばつできる理由は、山ほどありました。
 お城から出されたおふれに従おうとしないこと。
 大勢で集まってなにかしようとすること、それを計画すること。
 村々をとりしきる役人を飛びこえて、お城にじかに訴えを持ちこむこと。

 そうですね、ソラさん。下の人に訴えても対応してくれないから、上の人に訴えたわけです。越訴おっそといいますが……それのどこが悪いことなんだろうって、思いますよね。
 大勢で集まることも禁止きんしだなんて、へんですよね。

 でも、それが350年まえの決まりごとだったんです。
 一揆をおこせば罪になることは、農民たちもよくわかっていました。

 お殿さまは家老からの手紙に『よきにはからえ』と返事をしたので、処刑の準備じゅんびがすすめられました。

 でも、これをおかしいと思ったさむらいもいました。

 一揆がおきた理由は、不作ふさくだけではなく、強欲ごうよくな家老たちのせいでもあります。
 それを正そうとした、あっぱれな侍です。

 その侍……イオリさんですか? は、出張ちゅうのお殿さまのもとへと走りました。
 家老たちをさしおいて、お殿さまに直に訴えるなんて、お手打てうち……その場でりすてられたっておかしくありません。
 それを覚悟かくごしてのことです。

 はたして、お殿さまは耳をかしてくださいました。
 よきにはからえを撤回てっかいして、農民たちの罪を許す『赦免状しゃめんじょう』を出してくれたのです。

 ただし、条件をつけました。

『一揆の首謀者しゅぼうしゃらを処刑してはならない。けれど、表むきには処刑を行ったことにせよ』

 農民たちになんの処罰をしないのも、よくないことだと考えたからです。
 大勢で集まること、越訴をすることは、法をみだ重罪じゅうざいです。理由があれば法律ほうりつをやぶってもいい、とみんなが考えるようになってはいけません。

 農民たちを罰することもできないなさけない藩、と思われてもいけません。
 武士の体面たいめんをつぶしたとして、これまたお取りつぶしになるかもしれません。

 そこで考えたのが、「表むきには、処刑を行ったことにする」でした。
 
 表むきの記録が、江戸幕府に報告されました。
 そのおかげで松林藩は、ちょっと問題はあったけれど、取りつぶすほどではないってことになりました。

 重すぎる年貢はなくなって、農民たちも松林藩も無事。
 まあまあ、八方丸くおさまったわけです。

 
 いまに伝えられ、資料館しりょうかんで展示されているのが、この「表むきの記録」……というわけなのです。

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