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第1章 1節 出会い
新学期
しおりを挟むあれから数日後、夏休みは終わり、早くも
2学期が始まった。
以前の俺なら、学校に行くのが憂鬱で堪らないはずだった。だが、今の俺は違う!!
あの日の誓いを果たす為、
俺はがむしゃらだった。
とはいえ、だからすぐにどうこうなる訳では
ない。現実はそんなに甘くないし、今まで
きちんと勉強してこなかった為、テストの
赤点回避に必死だった。
「はぁ~~~、こんなんで星を探す余裕なんて
ないじゃん!!」
とは言ってみるものの、そうなった原因は
自分にある。
(グ~~)
腹がへった。ひとまず、昼飯を食べよう。
弁当を持って教室を出る。
向かったのは屋上に出る扉の前。
そう、友達のいない俺はボッチ飯を食う為に、
ここに来ている。
(♪~♪~♪~)
歌が聞こえた。
屋上は鍵がかかっていて誰も入れないはずだ。
でも、それは明らかな肉声だった。
(キレイな歌声だなぁ)
気付けば、扉に手をかけて少し開け、
覗いていた。
そこで歌っていたのは、特段の美人でもない。
むしろ、いわゆる地味子というやつだった。
でも、何故だろうか、目が離せない。
その歌う姿をもっと見ていたい。
そう思う程に、扉にかけていた手に力が入る。
(ギィッ)
「!!誰っ!?」
(しまった、気付かれた!!)
と思ったものの、逃げ出す前に慌ててその場ですっ転んでしまった。
「いてて。」
「・・・ねぇ。」
(あ~、やっちゃった)
最早、言い訳などできそうにない。
「あ~、ごめん。つい、歌が聞こえたもん
だから気になって。大丈夫、別に誰にも
言わないし。」
信用できない、と言いたげな顔でこちらを
不安そうに見ている。
「はぁ~、大丈夫だよ。俺、友達いないから、
ここでボッチ飯してたとこ。」
少し安心したのか、ため息をつくと地味子は
言った。
「このことは忘れて。」
「何で?」
「何でって・・・はぁ~、こんなのバレたら
いい笑い者でしょ?」
(まぁ、そうだろうな)
内心、そうは思った。
地味子が屋上で歌ってるって話だけなら、
いい笑い話にされるだろう。
だが、そうじゃない!
「確かに、その歌を聞いてもない奴は
そう思うだろうな。」
「えっ?」
(・・・・・・・)
どうやら地味子は頭が追い付いて
いないようだ。仕方なく、探人は続ける。
「だ~か~ら~、そんなキレイな歌声で
歌ってるって知ったら、馬鹿にできる訳
ねぇだろ!」
地味子は顔を隠した。
いくら人付き合いが苦手でも、これは分かる。
「なっ?何、言ってんの!!私みたいな地味な
子が歌ってるってだけで、そんなの・・・」
(めんどっ)
正直、思いはしたが敢えては言わずに、
続けた。
「あっそう。じゃあ、もう歌わないんだ。」
地味子はモジモジしている。
何がしたいんだ、と少しイライラするが
昼休みの時間を無駄にしたくなかった。
「あ~、もう。俺はこのことにノータッチ。
誰にも話さないから、お前は歌ってれば
いいじゃん!どうせ、またここに来るから
人が来ないか見張りくらいしてやんよ!」
「えっ?いいの?」
コクリと頷き、踵を返そうとすると。
「待って!」
「あ?まだ何かある?」
「・・・」
何か言ったようだが、声が小さくて
聞こえなかった。
「何?」
「天音(アマネ)!私、天音!あなたは?」
ポリポリと頭をかいて答える。
「探す人で、探人(サクト)。」
「・・・ありがとう、探人。」
「~~~!」
何だか恥ずかしくなって、逃げ出すように
その場をあとにした。
(キ~ンコ~ン、カ~ンコ~ン)
昼休みの終わりを告げる鐘の音がなった。
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