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第1章 1節 出会い
地味子の夢
しおりを挟むあれから、俺と天音は昼休みの度に屋上で
会うようになった。
天音は歌い、俺は見張りをしながら
弁当を食う。
最初は聞かれてると分かって、天音はあまり
大きな声で歌えてなかったが、日増しに声が
出てきた。
ある日、俺はずっと気になっていたことを聞くことにした。
「なぁ、天音。お前さぁ、アーティスト
目指してたりすんの?」
天音は唐突な質問に戸惑っているようだった。
「・・・分かんない。」
「折角、キレイな歌声なんだし、歌うの
好きなんだろ?」
天音は押し黙っている。
少しすると、天音は言った。
「そんな簡単じゃないよ。歌で食べていける
人なんてほんの一握りなんだから。
それに、私みたいな地味子じゃどうにも
ならないよ。」
「まぁ、そうなんだろうけどさ。」
と言うと、天音はムスッとしていたが、
構わずに続ける。
「目指すのは自由じゃん!最初から
諦めてる奴は、何も叶えられなくね?」
「・・・」
天音はその通りだと思った。でも、
「でも、それで叶わなかったら?」
「う~~ん、そん時考えれば良くね?」
「はぁ?」
「いや、だって、諦めたくなかったり
もう少し頑張れば届きそうって思えるなら
続ければいいだろうし、本当に無理って
思ったらそこで辞めればいいじゃん。」
「はぁ~、アンタねぇ・・・」
呆れた、という態度で踵を返そうとする
天音に、探人は言う。
「だって、もったいないじゃん!!
歌ってる天音、めっちゃカッコいいし」
「!!なっ!何言って!?」
「・・・それに、・・・あ~もうっ!!
俺は天音の歌声が好きだっ!!」
天音は顔を背けた。
俺も、顔から火が出そうなくらい恥ずかしい。
(バカッ)
ボソっと天音が言った。
「あぁ、馬鹿で結構。俺はお前の最初の
ファンだからなっ!!」
そう言うと、天音は声を出して笑った。
俺は恥ずかしくて怒ったが、すぐに
どうでもよくなった。
笑い終えると天音は言った。
「探人、ありがとう。私、本当は
ずっと前からそうなりたいって
思ってはいたんだ。でもさ、
やるって決めるのが怖くてずっと逃げてた。
今日、探人に言われて、自分が
どうしたいのか、やっと分かったよ。」
「そっか。じゃあ、天音は星を
見つけたんだな。」
「?星?」
「うん、自分の輝く可能性のこと。」
そう言うと、天音は急に俺を叩いて、
「もう、アンタ最高っ!!」
と笑った。
この最高の日は、まさに最高だったんだと
思う。そして、最高の後はもちろん・・・
辛いことが起きるものだ・・・・・
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