Accarezzevole

秋村

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Ⅲ奏人の過去

6

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 それは、確かにそうだ。屋敷にいる間、ソロは何かと奏人のもとへ通い他を相手にしなくなった。そのせいで寵愛を受けていた侍従たちからは反感を買い、さっそく嫌がらせが始まった。当時は奏人の傍に居てくれたのはシンだけだったので、小さな生傷が絶えなかったのを覚えている。

「だけど、遠征中は俺もいないし」

「そのせいで一人寝だったと言っている」

「毎日したいのを我慢してやってるって言ってたよねっ? 他の人はどうしたんだよ!」

「それはお前が毎日は無理だと泣くからだ。私はお前だから抱くのであって、他では意味がない。何を意味の分からんことを言っているんだお前は……」

「俺が悪いわけ?」

 若干呆れた顔でそう言われて、奏人は体を起こした。ソロは怪訝な表情を浮かべ、二人ベッドの上で向き合う。

「よし、線引きをしよう。色々あやふやだから、俺も不安定なんだ。変な気を起こす」

「線引き?」

「いい? ソロ。俺は、ペットだ」

「そうだな」

「で、オモチャでもある」

「そうだな?」

「だから別にいつ手放してもよくて、飽きたらポイだ」

「何故そうなる。お前を手放すつもりはないし、飽きる気もない」

「だーかーら、ペットだろ? オモチャだろ? そのうち飽きるに決まってるじゃんっ」

「もう一度言うぞ。何故そうなる? お前は一生涯、私だけのものだ。下げ渡す気もなければ、私以外に触れさせるつもりもない」

「古今東西オモチャは飽きるんだよ!」

「それは矮小な個体の話であって私には通用しないな」

「……」

「……」

 中々上手くいかない。線引きができない。奏人はどうすれば伝わるのかと、あの手この手で表現を変えながら訴えるがソロは頑なに否を通す。お陰でこの話はこれでもかと平行線が続き、日が傾いて完全に落ちても交わることはなかった。

「飽きるってば!」

「飽きる気はないと言っている」

「今だけだよっっ」

「何を根拠に、馬鹿馬鹿しい」

「俺に魅力がないから言ってんの!」

「お前は可愛いと言っているだろう? そこは譲らんぞ」

「アンタ、最初の『面白いから飼ってやる』的なキャラはどこいったんだよっ」

「お前の愛らしさに気付いただけだ。何が悪い」

 一向に交わる気配はなく。

「俺は可愛くないし愛らしくもないよっ。絶対的に断言できる!」

「それを決めるのは私であってお前ではないな?」

 まさに。

 面白いほどの。

「自分のことは俺が一番分かってます!」

「では鏡を見て物を言うことだ。こうも愛くるしい存在を私は知らん」

 平行線。

「そういうのやめろよ! は、恥ずかしいだろっ?」

「照れているのか? お前は本当に可愛いな、カナト」

「も~~~~っっ」

「埒が明かんな」 

 コロン、と音がしそうなくらい簡単に転がされてムッとする。

 起き上がろうとしても上に伸し掛かられて動けない。文句が言葉になる前に口を塞がれ、そのまま強引に深く口づけられた。

 どうにか挽回しようとするが、こうなってはソロの独壇場。手や足を多少バタつかせたところで、歯牙にもかけない。

「ソ、ロ……! まだ話は」

「私はお前に飽きることはないし、手放すこともない。以上だ」

 口早に言い切って、長い指を音良く鳴らした。

「嘘……だろ」

 愕然とした声で、そんなありきたりな台詞を呟く。嫣然と楽しそうなソロ。嫌な予感しかしない奏人。息を呑んで距離を取ろうと体を退いたが、すぐにもう一人のソロに繋ぎ止められてしまう。

 まさかの、ソロが二人。奏人を背後から抱き締めてピローに背を預ける男と、奏人の正面でニヤニヤしている男。どちらも同じ顔。正面のソロから背後のソロが現れた気もするが、どちらにも匂いと体温があった。何もかもが彼そのものだ。

 背後のソロが大きく奏人の足を左右に開いた。膝裏を抱えられて、あられもない姿を正面のソロに晒す。奏人は全身を真っ赤に染め上て起き上がろうと暴れたが、背後のソロはビクともしない。

「ソロ! 冗談は……っ」

 言い終える前に顎を後ろから掬われ、背後のソロに口づけられてしまう。強引なくせに、甘くて優しいキス。悔しいが、正直言ってソロとこうするのは嫌いじゃない。なんだかとても安心するからだ。日を追うごとに甘くなっているのには少々戸惑うが、それだって決して嫌ではなかった。

 怖いだけだ。ただ、それだけ。

 髪を撫でられて頬をなぞられ、より深く口づけられた。啄まれる唇が熱を帯び、ソロの思うがまま大人しくなってしまう。そのタイミングで、正面のソロが動いた。

「ンンぅ……っ」

 まだ力のない屹立を口に含まれ、くぐもった声がすり抜ける。また背後のソロが胸の突起を弄り出して、完全に力が抜けてしまった。頭の底では話し合いたい欲求がちゃんとあるのに、それを凄まじい勢いで上塗りしてゆく快感の波。ツン、と尖った突起を手指でクリクリと弄られると本当に弱くて、それを知っているソロが強弱をつけて愛撫してくる。

「っ、ぅ……ァ、ぁっ」

 乳輪ごと指で揉まれ、快感が深い。男に乳首を弄られて気持ちがいいだなんて恥ずかしいのに、もっと強くシテほしくて腰が大きく揺れた。唇が離れて、見上げた先。後ろのソロと目が合う。

 快感を追うことを拒むな。前々から言われ続けている台詞が、脳裏を過った。

 いいだろうか。言ってしまっても。呆れられるかもしれない。そう思うと怖いが、ムズムズした感覚は強まるばかり。結局、我慢ができなくて奏人は見上げた先のソロに訴えた。

「……気持ち、ぃ、ぃ……」

 目を細めるソロ。自分以上に奏人の体を知り尽くしている男が、今は二人。キスをされながら下になったソロに胸を弄られ、一層強く愛撫される。勝手に浮く腰が正面のソロに撫でられた。根本から強引に屹立を吸われる。益々快感を煽られ、どうしようもなく感じた。

 しかも腰が勝手に浮いてソロの方へ穿ってしまい、喉の奥に切っ先が触れて内腿が震える。あまりの快感に腰が引けた。だがすぐに腰を掴まれて、音がするほど強く吸われてしまう。

「ああぁぁぁ……、ぁ、ぁ……ッ」

 ゾクゾクするような快感が中央から全身に走り思わず首がのけ反った。ソロが何かをするたび、苦しいほどの快感が襲ってくる。それは一つも嫌ではなく、むしろ優しい指運びに体だけでなく胸の奥が熱くなってしまう。のけ反った先、後ろのソロとまた視線が重なる。自然と引き合うように唇が重なり、絡む指先をキュッと握った。徐々に深くなる口づけに夢中になって応じていると、屹立から正面のソロが唇を離す。

 腕を引かれて、四つん這いの体勢を取らされた。そのまま今度は正面のソロに口づけられる。撫でられる臀部。腰から下が文字通り浮いて、臀部を左右に広げられた。もう一人のソロだ。奏人にはもう、この先何をされるのかが分かっていた。おのずと潤む視界が、期待しているのか羞恥からなのか。何にせよ、予想通りの展開がすぐに寄越された。

「っ、ぁ……ンンぁ」

 浮いて不安定な両膝が、小さく震える。それでも臀部の位置は変わらない。

 わざとなのか、ピチャピチャと水音を立てて襞を舐める後ろのソロ。窄まりを丁寧に舐められて、奏人は正面のソロとキスをしながら快感に震えた。

 律界に落ちてきてから、ソロを受け入れるためだけに存在している最奥。

 正面のソロに胸を弄られて大きく腰が揺れ、上顎を舌先でなぞられて顔を背けた。軽くイキそうになったせいだが、キスを拒まれたと思ったらしいソロが眉根を寄せて顎をすくう。

「私を拒むのか」

「え……? ちが、イキそう……だった、から」 

 別にキスを拒んだのではない。そう伝えるとソロが奏人の屹立に触れ、今にも弾けてしまいそうなものに目を細めた。背後のソロが屹立を宛がい、挿入してくる気配に後ろを振り返った。見上げるのとほぼ同時に襞を割られて、熱いものが内壁を擦りながら深い位置まで入ってくる。 

 すっかり抱かれることに慣れてしまった体は、ソロが触れるたびにビクビクと震え、吐息すら熱く甘えたように喉をすり抜けた。

 だが。

「やはり、駄目だ。気に入らん」

「え……?」

 指を鳴らしたかと思うと後ろのソロが消えた。一人に戻ったソロが体を起こし、膝に乗せた奏人へ真下から挿入してくる。半ば強引に挿入されて、思わずソロにしがみ付いた。痛くはないが、ビックリした。

 髪を撫でられながらキスをされ、どうしたのかと尋ねる。

「お前を抱くのは私一人でいい」

 自分自身に嫉妬したらしい男が、深い位置まで屹立を押し込み内壁を突き上げてきた。

 初めのうちはあれだけ痛かった場所なのに、数回突き上げられるだけで視界が潤む。内側から抗いようのない快感が溢れて、ソロにしがみ付いて必死にイキそうになるのを逃がした。 

 あまりに早くイってしまうと、後々大変だからだ。体力が持たない。立て続けにイカされ続けることも当たり前になりつつあるので、せめて最初を少しでも遅らせたかった。

(ぁ、もう、気持ちぃ……我慢、したい……のに)

 ソロの首に顔を埋めて動かない奏人を訝しく思ったのか、ソロが奏人の体をそっとベッドの上に寝かせた。
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