リトルアルト

まぁさとう

文字の大きさ
16 / 20

ダッシュの後悔

しおりを挟む
 地上に出ると、2人の姿はなかった。村に向かったのだろう。
「じゃっ、またね」
 アルトはセズに軽く別れを告げる。
「ああ、また会おう」
 セズも軽く返す。
 2人は同時に背を向けた。

 アルトは少し歩いて、ボロボロになったバルカスとダッシュが支え合って歩いているのを見つけた。かなりゆっくり進んでいる。
「バルカス!ダッシュ!」
 アルトが声をかけると、2人はゆっくり振り返る。
「おめぇ、なんでそっちから来るんだよ。普通逆だろ」
 バルカスの声はいつもと比べ、ひどく弱々しい。
「僕もバルカスとダッシュを追ってたんだ。そしたら2人を殺そうとしてるドラゴンを見つけてね。ちょっと話してきたんだ」
「は?」
 2人は揃って間の抜けた声をあげる。
「あの話の通じないドラゴンと話してきたって?君は本気で言ってるのかい?」
ー話が通じない?そうは思わなかったけどな。
「うん。彼はセズって言うんだ」
「信じられねぇけど、まじで言ってるみてぇだな。そんで?ドラゴンとは何を話したんだよ?」
 バルカスはどうやら信じてくれたようだ。ダッシュはまだ信じられないようで、「何を言ってるんだこいつ」と思っていることが丸わかりだ。
「どうやら僕は元ドラゴンで、彼の弟らしい」
 アルトは簡潔に述べた。
「はぁ?」
 また揃った。
「おめぇ、そりゃいくらなんでもぶっ飛んでるぜ」
「そうだぞ。からかっているとしか思えないね」
 今度はバルカスも信じてくれなかった。まぁ、信じられないのも仕方ないと思った。
「まぁ、信じてくれなくてもいいや。とりあえず、そこで休んでて。村の人を呼んでくる」
 アルトは村に向かい歩きだす。
「ああ、助かる」
「頼むよ」
 2人はその場に仰向けになった。

 アルトが村に着くとライが出迎えた。
「冒険者様。イノシシは倒されましたか?」
 ライが期待のこもった目で見つめてくる。
「あ、2人に聞くの忘れてた。でもきっと大丈夫だよ。それより3人くらいついてきてくれないかな?バルカスたちが怪我をしちゃって。僕だけじゃ運べないから」
「分かりました」
 そう言ってライは走って行って、ガタイの良い若者を2人連れて戻ってきた。
「じゃあ、行こうか」
 アルト達は2人の元へ向かった。

「なぁ、ダッシュ。アルトは冗談言ってるんだと思うか?」
 バルカスは仰向けでダッシュに話しかける。
「話の内容だけ見れば、とても信じられないね。でも、そんな冗談に何の意味があるのかもわからない」
 ダッシュは冷静な答えを返す。
「でもよぉ、何で俺らは助かってんだ?あいつが俺らにとどめを刺さないなんて、考えられねぇ」
「それもそうだね」
 ダッシュは同意する。
「それに何より、あいつが嘘をついてるようには見えなかった」
 バルカスは真剣な顔をしている。
「そうだね。僕もアルトは嘘をついていないと思う」
 ダッシュは再び同意する。
「じゃあアルトは元ドラゴンなのか?」
「それについては信じていないよ。ドラゴンが嘘をついていたり、勘違いしているんだろう」
「うーん」
 バルカスは腕を組んで唸った。

「おーい。戻ってきたぞー」
 アルトはバルカスとダッシュが見えたので手を振った。
「おー。ここだここだ」
 バルカスは仰向けのまま片手をあげる。
 アルト達はバルカスとダッシュの側まで寄る。
「じゃあ、僕がダッシュを運ぶから、3人はバルカスを頼む」
 そう言ってアルトはダッシュを背負い歩き出す。3人も協力してバルカスを担ぐ。
「すまないね」
 背中からダッシュの声が聞こえた。
「しょうがないよ。セズはドラゴンの中でも有名らしいからね。確か、灼熱とか言ったかな」
「灼熱、、、そうか!ドラゴンは熱系の魔法を使えると言っていなかったかい?」
 ダッシュは何か謎が解けたようで、興奮している。
「何で?」
「あいつと戦ったとき、ナイフが刺さらなくて負けたんだ。もしかしたら熱系の魔法で剣先を溶かしたのかなって」
「聞いてないな。ところで、僕の話を信じてくれたの?」
 アルトは少し嬉しく思った。
「ああ。元ドラゴンのところ以外はね」
ー僕は信じてるんだけどな。そこは流石に信じてくれないか。
「でももし熱系の魔法を使えるなら、僕と兄弟って話も信憑性が高まるんじゃない?」
「確かに近親者の魔法は似るけど、、、。やっぱり信じられないね」
 ダッシュは一瞬考え込んでから、断言する。
「それよりさ、ダッシュはよくあの作戦飲んでくれたね」
 アルトは作戦を話すとき、ダッシュに反対されるかと思っていた。
「作戦って?」
「イノシシの」
 アルトは短く答える。
「何でって、なかなかいい作戦だったじゃないか。あれ以上の作戦が思いつかなかったんだ。代案もなく反対するのは良くないだろ?」
 ダッシュはまだピンときていないようだった。
「まぁそうだけどさ。だってダッシュは魔法が使えるイノシシを見にこの依頼を受けたんだろ?だったら戦ったり、生け捕りにしたかったんじゃないかなって」
「あ、、、。うわぁぁぁぁーーーーーーっ!!!」
 ダッシュは柄にもなく大きく悲痛の叫びをあげた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

処理中です...