リトルアルト

まぁさとう

文字の大きさ
15 / 20

ドラゴンの闘争

しおりを挟む
 ドラゴンはアルトを乗せ、地の底を降りていた。ドラゴンは下に向けて羽ばたいているので、アルトは鱗に捕まっていないと上に吹き飛ばされそうだ。
 地面が近づき、ドラゴンは減速する。そしてゆっくり着地した。アルトはドラゴンから降りる。そこは漆黒の世界だと思っていた。しかし、地の底の壁はところどころ赤く発光しており、薄暗いが十分周りが確認できるくらいには明るかった。ただ、周りには何もなかった。壁と地面があるだけだ。それとここは涼しい。

「明るいんだね」
「ああ、これは火石だ。何故か発光している。我が住み着いた時にはなかったのだがな。そんなことはどうでもよい。以前のお前の話が聞きたいのだろう?」
 ドラゴンは床に座り、顎を地面につける。
「うん。あ、でもその前に君の名前、聞いてなかったね」
 そういいながら、アルトも壁際にあぐらをかいて座った。
「我が名か。名乗るのは久しぶりだな。我が名はセズ。かつては灼熱の2つ名で通っていた」
 ー灼熱かぁ。最強なんかよりよっぽどカッコいいじゃん。

「それにしてもお前、先程から言葉遣いが気色悪いな。コロコロと変わりおる。それも記憶喪失の弊害か?」
「そう?自分では気にならないんだけどな」
 アルトはそういいながら、過去の言動を思い返していた。確かにそうだったかもしれない。
「もしやお前。いや、そんなことがあり得るのか?」
 は不思議そうな顔をしている。
「なんのこと?」
「これはあくまで我の予想だ。だがこれ以外考えられん。お前は、、、」
 重い雰囲気が伝わる。アルトは唾を飲む。
「複数の意識を持っているのかもしれん」
 短い沈黙があった。アルトは唐突な言葉に頭がついていかなかったのだ。
「まず、以前のお前は我の弟だ」
 セズは困った顔で静かに告げた。
「え、、、」
 アルトはまたしても声が出なかった。

 セズは続ける。
「ドラゴンというのは闘争本能が強い生き物だ。だから、かつてドラゴンには数多くの勢力が存在したが、長い争いの末、我らが一族ともう1つだけが生き残った。その時の我らが一族には4頭の長寿種がいた」
「ちょっとまって。長寿種って?」
 冷静さを取り戻しつつあるアルトが言った。
「長寿種とはその名の通り、長生きするもののことだ。長生きしたものは魔法を覚え、圧倒的な強さを手に入れる」
「へぇ。それって僕とセズと、、、あとの2人は?」
「父と兄だ。父は無数に子をなし、長い時をかけて、3頭の長寿種の息子を得たのだ。これはどの一族よりも多かった。だからこそ争いで勝ち残れたのだ。最後に残った一族は長寿が3頭しかいなかった。だが最初、彼らと我らの戦力は拮抗していた。それはお前がまだ魔法を覚えていなかったからだ。やがてお前は魔法に目覚め、拮抗は崩れた。お前は我と共に長寿種2頭を討ち、我らが一族が、種の頂点に立つのは目前に思えた。だが、我らが一族は滅びた」
 淡々と話していたセズの声が少し落ち込んだ。
「裏切りか」
 それ以外には考えられなかった。
「裏切りというよりは反乱の方が正しいな。1頭の弟が煽動して、お前と兄と父の寝首を掻くように仕向けたのだ。我は直前にその動きに気づき、ここへ逃げ延びた」

「そうなんだ。ところで、逃げ延びたってどこから逃げてきたの?」
 アルトはちょっとした興味で尋ねた。複数の意識を持っているとか、元はドラゴンとか訳の分からないことから目を背けたかったのかもしれない。

「ここら辺で最も高い山だ。いいところだった。あの山にいると、なぜか力がみなぎるのだ」
 アルトはその山に心当たりがあった。おそらく帝国との間の、ドラゴンの棲みつくあの山だ。
「その山なら今もドラゴンが棲みついているよ。多分敵対してた一族だよね」
 アルトは一応教えた。
「そうか。我も復讐してやりたいところだが、メスもいなければ、仲間もいない。お前だけでも生きていれば、状況は違っただろうがな。今からでも力になってくれないか?」
 アルトはこのドラゴンの力になりたかった。だが、
「ごめん。多分今の僕じゃ、バルカスとダッシュを貧弱って呼べるような君の力にはなれないと思う」
 アルトは率直な意見とともに断った。
「そうか。そうだな。その2人ももう目覚めてる頃だろう。送ってやる、乗れ。」
 セズは少し残念そうだった。
「ああ、ありがとう」
 アルトは再びセズにまたがった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

処理中です...