リトルアルト

まぁさとう

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2000年前の戦友

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 バルカスとダッシュもプロだった。
 唖然としたのは一瞬で、次の瞬間には戦闘態勢にはいっていた。
 バルカスは剣を抜き、ダッシュはナイフを構える。しかし、ドラゴンは20メートルほどの上空にいるため、手出しができない。ドラゴンが羽ばたくたびに、強風が吹きつける。
 2人はドラゴンの先程の飛行から、逃げることは不可能と判断していた。そのため、背を向けずに、ドラゴンがなんらかのアクションを起こすのを待つしかないのだ。
 暑い。2人の感覚は共に研ぎ澄まされていた。自分の額に滲む汗がはっきりとわかった。沈黙が長く感じられる。
 短い沈黙はドラゴンにより破られた。
「貴様らか。我に大剣を落としたのは。これは宣戦布告ととっていいのか?」
 ドラゴンの低く重い声は頭に大きく響く。
「待ってくれ!僕らはイノシシを退治するためにっ!」
 ダッシュが慌てて答える。
「そうか、わかった。ならばこれから我が行うのは、戦いではなく断罪というわけだ」
 その言葉に2人は武器を強く握りしめ、さらに集中する。
「ははっ。全然わかってねぇじゃねぇか。こいつはやべぇぞ」
 バルカスは笑った。
「ああ、そうみたいだね。戦うしかなさそうだ」
 ダッシュも笑い返す。たが2人の言葉にはこれ以上ないほどの緊張が滲んでいた。

 戦いはドラゴンの突進によって始まった。
 ダッシュは咄嗟にナイフの柄を木に当てて、向かってくるドラゴンの方へ向ける。バルカスはダッシュの作戦を瞬時に理解し、ナイフの下に潜り込む。バルカスは馬鹿だが、戦闘において、尋常じゃないほど勘が働くのだ。ダッシュはナイフを10メートルほどに伸ばし、バルカスはそれを下から支える。尖った巨大ナイフの先にドラゴンが迫る。ドラゴンは串刺しになり大量の血を吹き出しながら地に伏せる。

 ・・・はずだった。そうでなくてはおかしいのだ。巨大になったナイフの柄は木によって支えられている。ナイフが刺さらないわけがないのだ。
 だがナイフは刺さらなかった。ドラゴンはナイフの柄で木をなぎ倒し、さらにバルカスとダッシュを跳ね飛ばしたのだった。

 アルトは橋に向かって走っていた。
ーふう。そろそろ橋か。イノシシはちゃんと倒せたのかな?まぁ、2人なら大丈夫だと思うけど。
 その瞬間、ものすごい音とともに地面が揺れた。橋の方だ。橋を落としたにしては遅すぎる。アルトは何か嫌な予感がして、走る速度を上げた。
 アルトの視界には信じられない光景が広がっていた。地に伏した2人の仲間と、その目の前でとどめを刺そうと片足を上げる赤色の巨大なドラゴンの姿だ。状況がまるで理解できない。アルトは混乱した。混乱しながらも、どうにかして2人を助けなければとおもった。
「やめろっ!」
 声が出た。これが最善だったかはわからない。だが今のアルトは叫ぶのがやっとだった。
 ドラゴンは上げていた足を元に戻し、アルトの方を振り向く。そして少し目を見開いた。
「なぜだ?なぜお前が生きているのだ、アルト?」
 ドラゴンは低く重いが、驚愕の伝わる声を上げた。とても懐かしい声だった。
「俺のことを知っているのか?」
 アルトは名前を呼ばれ、答えはわかっていたが、一応確認する。
「何を言っているのだ。お前と我は古き戦友。そうだな、あれは2000年ほど前か?」
 言っている意味がさっぱりわからない。だがアルトは、ドラゴンの口調や雰囲気で、自分達が知り合いであることを確信していた。
「俺が2000年以上生きてるっていうのか?」
「だから驚いているのだ。お前から感じられるのは、確かに2000年前のアルトの気配そのものだ」
 アルトはドラゴンの声を聞けは聞くほど、深い親しみをおぼえていた。話は信じられない。だが、このドラゴンが嘘をついているとはとても思えなかった。
「実は俺、記憶を失ったんだ。それも1月と少し前のことだ。俺は早く記憶を取り戻したいと思ってる。だから2000年前の俺について、教えてくれないか?」
「ふむ。では話そう。だがここで話すのもなんだ。我が棲家へ案内する」
 そう言ってドラゴンは地の底の方を振り返る。
「だが、その前に」
 ドラゴンはもう一度バルカスとダッシュの方を向き、片足を上げる。
「待ってくれ!そいつらは俺の今の仲間だ。殺すのはよしてくれ」
 いつのまにか2人が殺されかけている状況を忘れていたアルトは、再びドラゴンを制止する。
「こんな貧弱な奴らが仲間?かつてはこの我を差し置いて、最強の2つ名で恐れられていたのだがな。まぁよい。では乗れ」
ー2つ名が最強ってなんだよ。ちょっと安直すぎないか?
 そんなどうでもいいことを思いながら、アルトはドラゴンにまたがった。
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