リトルアルト

まぁさとう

文字の大きさ
18 / 20

皇帝

しおりを挟む

 青年は、宝石などで装飾された大きな扉を開く。一礼して頭をあげると、中の様子がうかがえた。
 シャンデリアの輝く、煌びやかで広い室内には、白く長いテーブルが1つ置いてあった。
 一番奥の椅子には40前後の男が、姿勢良く座っている。そして、その前には料理が並べられていた。
 青年はその男の方へ歩いて行き、近くでひざまずく。
 その男の表情は固く、眼光は鋭い。前にいるで、震え上がるような威圧を感じる。
 青年の頭には覇者という2文字が浮かんだ。そう、この男には、覇者の風格が備わっていた。紛れもない王の器である。
「皇帝陛下。ご報告でございます」
 青年はひざまずき、床を見たまま言った。
「顔を上げてよい。報告を続けろ」
 青年は皇帝の言葉に顔を上げる。
 近くで見ると、その筋肉は服の上からでもわかる程に鍛えられている。
 皇帝は目の前の肉の乗せられた石に、手元の水をかけ、フォークで石を突く。すると肉は音を立てて焼けはじめた。
 火石は、水に濡れたまま衝撃を与えると、火はおこらないが、熱を発するのだ。
「はっ!王国では、火石の値段が上昇を続けています。戦争を仕掛けてくるのは目前かと」
 皇帝は、肉になにかの液体を注ぐ。今度は水ではない。よく見ると液体は赤色をしていて、血であることがわかった。
 青年は肉の味が損なわれるのではないか、と思ったが、勿論そんなことは口にしない。
「この肉は今朝狩ったイノシシのものだ。イノシシは、散歩をしている私を見つけ、襲いかかってきた」
 皇帝は急に話しはじめた。
 青年には皇帝がなにを言っているのかがわからなかった。
「つまりだ。王国もイノシシと同じに、襲いかかってきたところを斬りふせる、ということだ。そうして得た獲物は優越感というスパイスがよく効いて、実に美味い。血の一滴までものこしたくないほどにな」
 青年は皇帝の狂気に恐怖した。



 イノシシの村から戻って1週間が過ぎた。
 少しずつ猛暑もおさまりつつあり、早朝ともなれば心地よい涼しさが感じられる。
 バルカスとダッシュの怪我は、『他人の怪我を癒す』魔法を持つ医者のおかげもあって完治していた。
「よぉ、アルト」
 バルカスが宿の隣の部屋から、アルトの部屋に来て声をかける。
「おはよう、バルカス。調子はどう?」
 アルトは一応怪我の様子をたずねる。
「ああ、もう万全だ。今日からは依頼に行けるぜ」
「それは良かった。じゃあ用意するよ」
「ああ。じゃあ俺も」
 そう言ってバルカスは部屋にもどる。アルトも鎧を装着し始めた。

 準備を終えたアルトとバルカスは、ダッシュを呼びに行って、3人でギルドへ向かった。
 ギルドの中には、ちらほらと人の姿がある。
 アルトはその中に、座るマリーの姿を見つける。
「おはよう、マリー。こんなとこに座って、依頼は受けないの?」
 アルトは座り込んでいるマリーを不自然に思い声をかける。
「ああ、アルトさん達。今日は来たんですね。あの、一緒に依頼を受けてくれませんか?」
「この子ったら、アルト君達が帰ってきた日に誘い忘れちゃったからって、その次の日から毎日来てたのよ」
 カナが横から入ってきて言う。受付は他の2人で十分そうだ。
「そうなんだ。宿はわかってたでしょ?来てくればよかったのに」
「でも、失礼かと思いまして」
 ーん?前に押しかけてきたよな?
 アルトはそう思いながらも口にはしない。
「迷惑なんかじゃないよ。もっと気軽に接してよ。せっかく友達になれたんだから」
 マリーはアルトの言葉を聞き、非常に嬉しそうに笑った。
「友達、、、。そうですね!ありがとうございます!」
「で?依頼ってなんなんだ?」
 バルカスが尋ねる。
「あ、別に受けたい依頼があるわけじゃないんです。皆さんの受ける依頼についていきたいなーと思って」
「なんだそういうことか。そんなんで1週間も俺たちを待ってたのか?変わりもんだな、おめぇも」
「え!?そうでしょうか?」
 マリーは少し不安そうな顔になる。
 アルトは別にそうは思わなかった。マリーが必死で僕達と仲良くなろうと思っているのがわかったからだ。
 アルト達は結局、歩いて2、3時間ほどの所にある村への往復の護衛任務を受けることにした。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

予言姫は最後に微笑む

あんど もあ
ファンタジー
ラズロ伯爵家の娘リリアは、幼い頃に伯爵家の危機を次々と予言し『ラズロの予言姫』と呼ばれているが、実は一度殺されて死に戻りをしていた。 二度目の人生では無事に家の危機を避けて、リリアも16歳。今宵はデビュタントなのだが、そこには……。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

〈完結〉貴女を母親に持ったことは私の最大の不幸でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」ミュゼットは初潮が来た時に母から「唯一のこの家の女は自分」という理由で使用人の地位に落とされる。 そこで異母姉(と思っていた)アリサや他の使用人達から仕事を学びつつ、母への復讐を心に秘めることとなる。 二年後にアリサの乳母マルティーヌのもとに逃がされた彼女は、父の正体を知りたいアリサに応える形であちこち飛び回り、情報を渡していく。 やがて本当の父親もわかり、暖かい家庭を手に入れることもできる見込みも立つ。 そんな彼女にとっての母の最期は。 「この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。」のミュゼットのスピンオフ。 番外編にするとまた本編より長くなったりややこしくなりそうなんでもう分けることに。

処理中です...