リトルアルト

まぁさとう

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商人と村人

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 護衛の対象は商人の男だった。
 最近は盗賊が増えているそうなので、商人が護衛をつけることも珍しくない。ギルドでは、このように個人の依頼も引き受けているのだ。
 商人の男は中年で、目的の村の出身だそうだ。
 その村は、小さな村で、最近は高齢化が進んでいるらしい。
 さらに、村には馬を扱えるものもおらず、少ない若者で街に出て買い物をしようにも、村人全員分となると何往復もしなければならない。
 そうなると、農作業にも遅れがでてしまい、収穫量、つまり収入に関わる問題になる。
 そのため、商人は小さな村なので収入は少ないが、定期的に生活必需品を売りに行っているとのことだった。

 アルト達は2頭の馬が引く荷車の横を歩き、何事もなく目的の村に到着した。
「また来てくれたのか。いつもありがとな」
 商人の男は知り合いであろう同年代の男に出迎えられた。周りにも数人の村人が集まり、感謝を述べる。
「よしてくれよ。こんぐらいなんてことないさ。それで、早速だが、」
 商人は荷車の中を見せる。そこには農具、食器、衣類などが並べられており、その下には大量の火石があった。
「農具とかは多めに持ってきた。いる分だけ買ってくれ。それと、すまんな。火石はこれだけしか集められなかったんだ。今ちっょと値段が上がっててな」
 商人は申し訳なさそうな顔をしている。
「お前のせいじゃないだろ?謝んなって。で、この量でいくらなんだ?」
「・・・金貨20枚だ」
 商人は小さくいう。
「えっ!?」
 村人は揃って目を見開いた。とても信じられないようだ。
「おいおい、商人さん。そりゃねぇだろ。値段が上がってるったって、この前俺が買った時はその半額くらいだったぜ」
 バルカスが口をはさんだ。確かにそのくらいだったように覚えている。
 しかし、アルトはここに来るまでのの話から、商人が善人にしか思えなかった。
「バルカスさん、前回火石を買ったのっていつですか?」
 意外なところから声が上がった。マリーだ。
「えー、前の依頼の前だから、2週間くらい前だな」
「じゃあ知らないかもしれませんね。実は10日ほど前から、ベス付近の火石鉱山の火石がマギドに火石が届いていないんです」
 マリーは深刻な口調で言った。
「マリーの言う通りだよ。確かに火石は届いてない。ベスは王国で最も火石が取れる場所。王国の火石の9割以上はベス産だ。それで商人たちは火石が希少になると考えて、値段を一気に上げたんだ」
 ダッシュがマリーを肯定する。
 その瞬間、村人たちの間でざわめきが起こった。ざわめきは次第に大きくなり、やがて村人の1人が決心したようにダッシュに問いかけた。
「いま、、、マリーって言ったか?」
 村人は半信半疑の様子だ。ダッシュは何かを察した様で、黙り込んだ。
 アルトは訳がわからず周りを見渡すと、バルカスもマリーも俯いている。商人は驚いた様な顔だ。
「マリーってあの鮮血だよな?お前、俺たちを脅して金を巻き上げるつもりか?」
 村人は商人に問いただす。ダッシュの様子を見て、村人の言葉は確信に変わっていた。
「ち、ちがう!俺はこいつが鮮血だったなんて知らなかったんだ!俺は今までだってお前らのために!」
 商人は必死な様子で弁解しようとする。
「俺らは騙されねぇ。それも全部布石だったんだろ?ほら、殺すなら殺せよ。死ぬまで搾り取られるなら死んだ方がましだ」
 アルトはそれを聞いて、マリーはおそらくこの村にとっての脅威なんだろうと察した。しかし、ずっとこの村のために頑張ってきた商人を、悪人と決めつけられるほどの脅威など思いつかない。
「なんで信じてくれねぇんだよ。お前のせいだ!お前なんかが来たから!いや、お前みたいな奴、生まれてきたのがいけないんだ!」
 商人はマリーを怒鳴りつける。マリーは俯いたままだ。

 ーマリーは商人のために、村人に火石のことを話したのに、生まれてきたのがいけないってなんだ?
 アルトは激しい怒りに燃えた。
 黙っていたバルカスとダッシュもものすごい殺気で商人を睨む。
「おいお前」
 声をあげたのはアルトだった。
「ひっ!」
 商人は全身に浴びせられた殺気に震え上がる。
「それ以上言ったら殺す。お前らもだ」
 アルトは村人の方を振り向きながら言った。
 息の詰まるような沈黙が続く。
 しばらくしてドサッと何かが落ちるような音が沈黙をやぶった。見るとそこには気を失った商人がいた。
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