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二章
飲み屋にて
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梅雨明け宣言されてからもしばらくは雨が続いた。本当に梅雨が明けたのかよってうっとうしさの中、俺はいつも以上にだらだらと仕事をしていた。さすがに発売から一ヶ月も過ぎる頃になると営業所内の雰囲気も落ち着いてくる。んでもって俺は所長に怒られる日々に戻ったわけだな。やれやれ。
工場から出荷された商品は続々と各店舗へと運ばれている。その間にも新しい注文ってのはある訳で、一時期の無茶苦茶なペースは解消されてもやっぱり仕事はなくならない。週末、所内に営業成績が張り出される時なんてみんな目の色違うもんな。
その営業成績で文句なしの最低、どんじりにいるのが俺って訳だ。今までも熱心な方じゃなかったが、最後尾ってのは初めてだな。感心しつつ営業成績を眺めてた俺を所長が鋭い声で呼ぶ。アナログな方法で紙に書いて貼ったりなんぞしなけりゃ、何で呼びつけられるか他の連中にはばれずに済むんだがな。まったく、面倒な話だ。
「ここ一番の勝負時に何してるんだ!」
はいはい、お怒りはごもっともでございますとも。俺は申し訳なさそうな顔だけ作り、所長の説教を聞き流した。どうせ他の連中が稼いでるんだ。それに俺だっていつもよりは実売数も多いんだぞ。それを不真面目だの不届きだのって怒らないで欲しいよな、本当。
「向上心はないのか、お前には! 中條を見ろ、中條を!」
そりゃあな。中條先輩の成績はちょっと普通じゃないよ。聞けば全営業所トップだって話じゃねえか。当の中條先輩が相変わらずのほほんとしてるもんだから俺も気付かなかったが、それは確かに凄いことだと思うよ。だが、何で同じ営業所にいるからって、そんな凄い成績と比べられなきゃなんねんだよ。
面白くない気分で十五分ほど説教食らって俺は席に戻った。十五分とはなかなかいい記録だ。所長もよくあんなに怒れるよな。最後には結局、同じこと言うくせによ。すみませんでしたって毎度のごとく詫びた俺に、今日はとびきり嫌そうに所長は言った。もういい。そう、所長の説教の締めの文句はいつもそれだ。いいんなら最初っから説教なんざすんなよな。
「大丈夫ですか?」
小声で隣の席から江崎が訊ねる。ああ、大丈夫だとも。何しろ俺にとっちゃ所長の説教なんざいつものことなんでな。そう言う代わりに俺はこっそり江崎に頷いてみせた。江崎も俺の言いたいことをすぐに察したのだろう。頷き返す。俺はそれを見てからちらっと所長を伺った。まだ所長は怒ってるのか俺の方を睨んでいる。まあでも、この方が俺は落ち着くかな。所長が浮かれてへらへらしてる方がよっぽど気持ち悪いっての。
「能戸先輩? 怒られたんですよね?」
っていうか、今の俺のがへらへらしてるのか。江崎が不思議そうに言ったところで初めて俺は自分がにやけてることに気付いた。いかん。まだ仕事中だっての。
「最近、能戸はやけに機嫌いいよな。もしかして」
いつの間にか中條先輩が俺たちの背後に近付いてる。中條先輩はこっそり俺と江崎に聞こえる程度の声で言った。
「女でも出来たとか?」
「えっ、そうなんですか!?」
中條先輩のいやに嬉しそうなせりふの後に江崎が素っ頓狂な声を上げる。おいおい、幾らなんでもその反応ってどうよ? それってもしかして俺に女が出来るはずがねえってことですかい。
「いや、違いますけど」
相変わらず中條先輩は仕事が速い。営業日誌はもう書き終わったらしい。クライアントの数ですら俺より一桁以上多いのにこれだもんなあ。毎日叱られてる俺とはえらい差があるよな。んでもまあ、中條先輩だしな。当り前っちゃ当り前か、なんて俺は自分を納得させた。
またまた、と笑う中條先輩の追求をかわしつつ、俺はキーボードを叩き始めた。やっぱり日誌を書く時は専用インターフェイスを使う気にならない。
「じゃあ、今日は飲みに行くか? 最近行ってないだろ? 能戸も江崎も」
要するにそれが言いたかったのかよ。俺は苦笑して中條先輩を振り返った。江崎も俺と同じようなことを思ったらしく、困ったように笑っている。この人は本当に成績トップだってのを感じさせない気さくさを持ってるよな。でも一部の奴らはそんな中條先輩が俺に声をかけるのが気に入らないようだ。ほら、今日もまた睨んでやがるよ、あの連中。
だが今日は俺も連中のうっとうしい視線を完全無視した。いつもなら少しくらいは睨み返すんだけどな。今の俺には奴らの相手をしてる暇はないんだな、これが。
「えーっと、俺はいいっす。すんません」
「え?」
ものの見事に二人の声が被る。いや、そりゃあな。俺も飲みに行くのは好きだよ。それに中條先輩や江崎の誘いは断る事の方が少ないしな。でもまあ、今日はそういう気分じゃないってことで。俺は驚いたように目を見張ってる二人に適当に言い訳をした。
「もしかしてまた」
江崎が恐る恐るといった態で言いかける。俺は慌てて床を蹴飛ばして椅子を動かしつつ江崎のわき腹を肘で小突いた。痛い、と呟いて江崎がわき腹を押さえる。
「んー?」
どこか嬉しそうに笑いながら中條先輩が俺と江崎を見比べる。何でもないっすよ、と仏頂面で答えた俺とは対照的に、江崎が焦ったように首を横に振る。いや、お前。それは中條先輩に何かあるって言ってるようなもんだから。
とは言え、俺も特に隠しておくつもりもないし。
「いや、開発にいる友達のところに行く約束してるんで」
「開発?」
声を潜めた俺に合わせて中條先輩もきっちりと声量をさげる。さすが、トップの営業マン。俺が言うまでもなく事情を察してくれたらしい。例え内容が何であれ、開発絡みの話なんぞしてたら奴らがどう言うか判りゃしねえからな。俺はちらっとうざったい連中を伺ってからこっそり頷いた。よしよし。今日は奴らも俺に構ってる暇はないらしい。とっととオフィスから出て行っちまった。
「でも開発部の人も忙しいんじゃないですか?」
江崎が困ったような顔で言う。そりゃあな。勝亦だって毎日暇にしてる訳じゃねえだろうな。でも俺は勝亦に用がある訳じゃない。……んだが、さすがにそれは言うのはまずいかな。俺はそうだな、と適当に江崎に合わせてからモニタ画面に向き直った。
「何だ。もしかして能戸、開発部に日参してるのか?」
「まあ、そうなりますね」
不思議そうな中條先輩の問いかけに答え、俺は日誌を書き始めた。いつものようにさっさと書き上げて勝亦のところに行こう。
「開発部は確か売れてない女の子はいなかったし」
「そうなんですよ」
俺の後ろで中條先輩と江崎が何か言ってるようだ。二人の会話の端っこを聞きつつも俺は機嫌よく日誌を書き進めていった。所長に怒られたのは腹立つけどな。いつもほどは気にならない。それに江崎と中條先輩はそんな大したこと話してないしな。
所長がオフィスを出る間際に中條先輩に話し掛ける。どうやら明日、また工場から商品出荷があるらしい。そのことを中條先輩に知らせた後、所長は俺を睨んでからオフィスを出て行った。けっ。相変わらずいけ好かないやつ。中條先輩には機嫌よく話すのに俺にはその態度かよ。ころっと手のひら返して嫌な顔しやがって。
ま、でもな。今日の俺は寛大だ。所長がどんな嫌な顔してようが、平気ですよ、ええ。ちょっと沈みかけた気分もすぐに浮上してくれる。俺はすぐにまた上機嫌に戻って営業日誌を書き終えた。
「ちょっと付き合え。やっぱりまずいぞ、能戸」
「は?」
いつの間にか中條先輩は難しい顔して腕組みなんかしてる。俺は不思議に思いながら中條先輩と江崎とを見比べた。江崎も見慣れない表情をしている。え、俺、そんな真剣に心配されるようなことした覚えはないぞ? それに俺は単に開発部にいる友達と会ってるって話をしただけで、それ以上のことは何も言ってない。なのに二人のこの心配振りはどうなんだ。
「いや、でも約束が」
「同じ会社でいつでも会えるんですから、明日でもいいじゃないですか」
いつも俺の言うことには気弱にはいはいと返事をしてる江崎までがそんなことを言う。俺は疑いの目で江崎と中條先輩とを見比べた。二人ともいつもならここでじゃあまたな、と笑って送り出してくれるはずなんだがな。
「なんすか、一体。江崎だけならまだしも先輩まで」
そろそろ勝亦も仕事を終える時間だ。俺は手早く画面の電源を落として席を立とうとした。そんな俺の肩を二人が両側から押さえる。……おい。
「落ち着け。いいか、能戸。確かに人の好みは自由だけどな」
「やっぱりやばいですよ、先輩。他の会社の人ならまだいいですけど、同じ会社の、しかも同じビルに勤める人なんて」
左から中條先輩が真面目くさった顔で言えば、江崎が右から気まずそうに言う。ちょっと待て。何かどうも勘違いされてる気がしてきたぞ。つい、日誌に集中しちまってたから気付かなかったが、もしかしてこの二人、俺の背後でとんでもない会話してたんじゃねえか? 嫌な予感を覚えた俺の頬は無意識のうちに引きつった。
「あ、あのですね。別に変なことは」
そこまで俺が言ったところで唐突に胸ポケットの電話が鳴る。俺は慌てて二人に断って電話を引っ張り出した。もしかして客か? そう思った俺の目に液晶画面の文字が飛び込んでくる。勝亦の名前を読み取った俺は焦って二人に背を向けて電話を受けた。
『あ、能戸? ごめん。今日は会議と打ち合わせが』
「ちょっと待て! 今朝は大丈夫だって言ってたろうが」
だから俺は今日も一日、客のわがままに笑顔を作って耐え、所長の説教を食らっても平気でいられたんだぞ。なのに土壇場でそれかよ。二人の手前、ストレートに怒れないって俺の立場をまるで理解してないんだろうな。勝亦のやつ、俺の言い分聞いてため息なんぞつきやがった。
『急に決まったんだ。仕方ないだろう』
慌ただしい口調で勝亦が言う。むかつくが、そう言われてしまうと言い返せない。仕方なく俺は判った、と言って電話を切った。くそ。これで楽しみは先送りかよ。
「能戸くぅん。さあ、今日は付き合いたまえ」
どうやら横で話を聞いていただけで俺が急に暇になっちまったって判ったらしい。付き合いたまえって、あの。何でそんな嬉しそうなんすか、中條先輩。俺のこと心配してくれてたんじゃないんすか。口の中でぼやく俺を引っ張り起こして中條先輩が江崎と頷き合う。まあ、勝亦の件が駄目になったんなら、飲みに行くのを断る理由もなくなったわけで。
いつもの居酒屋に入った俺たちは珍しく奥の座敷を借りることにした。いや、道中に何度か話を振ろうとしたんだけどな。この二人、その話は落ち着いてからなんて言ってくれて、俺の話を頑として聞こうとしなかったんだよ。で、居酒屋に入って中條先輩が率先して店員に話をつけ、江崎は俺を強引に奥の座敷に押し込んでくれた。……いや。頼む。別に俺はやましいことをしてるつもりはないんだ。そんな神妙な顔で二人して酒を勧めるな!
「よし、話を聞こうじゃないか」
とりあえずお疲れってグラスを合わせてビールを三人が飲んだ後、中條先輩がそう切り出した。ここの居酒屋はちょっと変わっていて、奥の広い座敷は個室として使えるようにもなってるんだな。宴会に使われる時には取り払われる襖が今はきっちり閉まってる。四畳半ほどのスペースにあるのは大きな机と座布団が四枚、でもって障子を開けると窓が覗き、その向こうには夜の街並みが広がってるって寸法だ。だが綺麗な夜景なんて見とれるほど整ったもんじゃねえ。単に道行く車のライトとかビルの明かりとかが見えるだけだ。でもオフィス街のど真ん中って立地の割にはましな方だろ。
「最初に言っときますけどっ。俺は別に男に気がある訳じゃないっすよ」
低い低い声で俺は真っ先にそう断った。すると中條先輩と江崎が不思議そうに顔を見合わせる。やっぱりそう思ってたのか……。
あのなあ! そりゃ、仕事ならともかく、だ。確かに理由もなく、飽きもせず毎日毎日同じ野郎のところに行くなんて奴がいたら、俺だってそいつのことをちょっと変わってると思うだろうよ。もし知り合いにそんなのがいたら、何かあったのかくらいのことは訊くかも知れない。でも断じて男相手にその気になる趣味があるからだ、なんてこたあ思わねえっ。
「何だ。そうなのか」
明らかに残念そうに中條先輩が言う。あんた、心配顔してたけど面白がってたんだろう。あ、しかも今、ビール飲みながらつまらんとかこっそり言いましたか? 言いましたね? 油断ならん人だな、もう。
「よ、よかった。心配してたんですよ、ほんとに」
こっちは心底安心したって顔で江崎が言う。そうだろう。安心したか、それは良かった。でも何でお前までそっちに思考がいっちまうんだよ。どうでもいいことだが、江崎の奴ってこういう所に入るときっちり正座しちまうのな。でかい図体してそれやるもんだから、いつも借りてきた猫みたいな感じがする。まあ、江崎の場合は普段からそれっぽいか。
「そりゃ確かに俺は彼女もいないし」
しかめっ面で言ってから俺は残ってたビールを飲み干した。するとどうぞ、と江崎がタイミングよくボトルを取り上げてグラスにビールを注いでくれる。俺は江崎からボトルを受け取って中條先輩のグラスに寄せた。おっ、と笑って中條先輩が少し残ってたビールを飲み干す。俺は差し出されたグラスを満たしてからついでに江崎にもビールを注いだ。まあね。こういう場所でもやっぱり礼儀ってもんがあってだな。先輩に酌するのは当然ってのはあるんだが、それだと江崎が手酌になっちまうからな。ついでだよ、ついで。
「だろ? だから疑ってたんだけどな。まあ、違ってほっとしたな」
「とか言いながら、先輩はからかう気だったんしょ?」
何て、些細な会話を続けて三十分ほどもした頃には、運ばれてきた料理をつついていた俺たちの腹も満たされた。程よく酔いも回って一息ついたところで俺は切り出したわけだ。
俺は何も勝亦に会いたくて開発部を訪ねてた訳じゃない。必然的に勝亦には会うがそれが目的じゃないんだ。俺が説明をし始めると、それまでいい気分でばか話を続けていた二人も神妙な面持ちになった。
「……別のI 3604 Twins?」
「何ですか? それ」
二人それぞれに言うのを聞いて、俺は説明した。今売れている新商品は実は開発段階の候補作の一つだったこと。そして候補として別のシステマがあったこと。つまり俺は二人にRC1の話をし始めた。RC1って何ですかという江崎の質問には俺の代わりに中條先輩が答えてくれた。あれ? 中條先輩、RCって単語を知ってるんだなあ。俺なんて勝亦に聞いてもよく判らんのに。
そこはさすが営業マン。中條先輩って本当に説明も上手いなあ。しかも聞き取り易いんだよな、中條先輩の話し方って。江崎も中條先輩の説明で一発で理解出来たようだ。この人ってやっぱ、すげえわ。こんな風に説明されれば客たちも納得し易いんだろうなあ。
「それで? そのRC1がどうしたんだ?」
なるほど、と納得して江崎が頷くのを余所に中條先輩が言う。おっと、忘れてた。俺が話をしてたんだったな。のんびりとビールを飲んでた俺は慌てて話を続けた。今現在、売りに出されているI 3604 Twinsと、RC1の違いを説明する。案の定、2wayの説明のところで江崎が首を捻った。
「え? I 3604 Twinsって2wayなんでしょ? だってお客さんもそう言ってますし、所長だって」
「違うぞ」
俺が否定するより早く、またまた中條先輩が言う。こ、この人って一体何者なんだ? いや、判るよ。知識量が生半可じゃないってことはな。現に俺は中條先輩が教えてくれる情報にこれまでに随分と助けられてきた。江崎だってそんな一人だ。でもだな。あっさり否定するなんてまさか思わねえだろ。何しろ所長だって2wayだっての否定しねえんだぞ。
俺の驚きを余所に中條先輩が2wayの説明を始めちまう。それを聞く内に江崎の顔色は悪くなってった。うわ、こいつ真面目だもんな。客を騙してたって思ってるんじゃないか? 俺はちょっと前までの自分のことを思い出して居たたまれない気分になった。恥ずかしいってのかな。照れくさいっていうか……。あー、まあ要するに江崎の態度にちょっと前の自分を重ねちまったわけだ。
俺が思った通り、中條先輩の説明を聞く江崎の表情が次第に険しくなる。だが江崎は俺と違ってすぐに文句は言わなかった。一応は中條先輩の話を最後まで聞いて、一呼吸。そうなんだよな。こいつって鈍くさいようでいて、実際は間の取り方が絶妙なんだよ。
「要するにお客さんは本当のことを知らないんですね?」
「そういうことになるかな。でも、その方が売りやすいからって理由だけで説明しないんじゃないぞ」
客は安心も一緒に買っているのだと中條先輩が言う。やっぱり営業の人だからだろうな。勝亦の説明より中條先輩の説明の方が聞いていて俺も納得しやすい。江崎は複雑な面持ちをして腕組みをした。だがそうしていても江崎は足を崩そうとしない。どうでもいいが、何でこの体格で正座してて足が痺れないんだ? 足に体重がもろに乗るだろうに。俺も中條先輩も適当に足を崩してるのに、江崎だけがきっちり正座って……。かと言ってこいつ、この中で一番の後輩だからそうしてるって風でもないんだよなあ。江崎と同期の奴と飲んでてもこんなことないし。もしかして学生時代に剣道だのやってたのかね。なんて、くだらないことを俺が考えている間にも二人の話は進んでいく。
結局、江崎は中條先輩の言葉に納得したらしい。要するに客は騙されたくて騙されているのだと。でもっていちいち説明したところで理解なんぞしてくれやしないのだと。次いで、システマが万が一壊れた場合のこと。システマってのはその性質から実は深刻なトラブルってのは発生しにくいんだ。客がシステマが壊れたって騒いで店に駆け込んでもだな。大抵は客側の操作ミスだったりするんだな。だもんで、一台こけたら二台ともアウトってやばい状況には、当分陥らないだろうってのが中條先輩の見解らしい。なるほどね。俺も中條先輩の説明に納得して頷いたもんな。その辺りのことは残念ながら勝亦の説明には含まれてなかったんだよ。
それにもしも深刻なトラブルが発生したとしても、その頃には客は別の機種に乗り換えるだろう。中條先輩は淡々とそう言った。それを聞いたところで俺はさすがに驚いた。え、じゃあいま売り出されてるあれって……。
「何だ? そんなに驚くことか? システマは使い捨てが基本だぞ?」
だからこれだけ市場が盛り上がってるんじゃないか。あっけらかんと中條先輩が言う。俺は慌てて江崎と顔を見合わせた。江崎も相当、驚いてるらしい。目を丸くしている。
「江崎が驚くのは判るけど、何で能戸まで驚くんだ?」
営業してれば判るだろう、と中條先輩が呆れたように付け足す。そりゃあこれだけ新商品がばんばん出てるんだし、俺もそうかも知れない程度には思ったことはある。
「そりゃ判りますけど、中條先輩が言うと重みが違うなって」
俺は力なく笑ってそう言ってみた。すると中條先輩が困ったような顔をする。もしかして呆れられちまったかな。そんな俺の不安を読んだように中條先輩がもっと自信を持てよ、なんて励ましてくれる。
確かになあ。中條先輩の契約件数を考えると当り前の話なんだよな。いくら新しい客を開拓するのが営業目的っつってもだ。誰もが気軽に持てるってほどにはシステマは普及していない。俺らがいい例だろ? 売り側である俺たち営業だって全員が個人でシステマを持ってるって訳じゃねえ。所長が時々、オフィスに持って来てはいるが、使いこなせてるのかどうかはさっぱり判らん。所長の場合は俺たちに見せびらかしてるって感じだしな。
多分、中條先輩は他社の契約からうちの商品に客を乗り換えさせてるんだ。しかも俺なんか目じゃない件数を、だ。そうでないと中條先輩の成績は説明つかないんだよ。改めて考えた俺は思わずため息をついた。無理無理。中條先輩を見習えって所長は言ってたが、絶対無理だって。
「話が逸れたな」
中條先輩がそう言ったところで俺は頷いて話の続きをした。要するにRC1の説明な。俺はずらっと勝亦にしてもらった説明を並べてから言った。
「試作機のRC1はどっちみち廃棄処分だろうって。だからそれまでなら好きに遊んでいいって言われて」
それが今回のお前の働きに対する報酬だ。勝亦はふざけてそう言った。要するに捨てるまでの間、RC1を好きに使っていいってことだ。最初それを聞いた俺は冗談じゃないと断ろうとした。だが考えたら俺って大した趣味がある訳じゃないし、仕事が終わって家にストレートに戻ったところでせいぜいがビール飲むくらいだ。それなら勧めに従ってちょっと遊んでみるか。そう考えて、俺は勝亦の案に乗ることにした。
最初の日は触り方からだった。実は俺、システマの扱い方って基礎的なことはクリアしちゃいるが、実際にインターフェイスを通して使ったことがなかったんだな。で、呆れる勝亦にご教示賜って覚えるとこから始めたって訳だ。
勝亦にしてみりゃ、ど素人がどういう風にシステマを使うかを知りたいってのがあったらしい。システマには俺の指示や動きのログが逐一、残る。後で勝亦はそれを分析するってわけ。要するに俺は実験台になってるってことだ。その話をした時の江崎の顔はちょっとした見物だった。最初は俺に同情したんだろな。勝亦が俺を実験台にしてるって、俺自身が言う前に話の流れから見当がついたんだろ。明らかに同情してますって顔してやがった。可哀想っていうか、気の毒にって感じの顔。でもその後で俺がきっちり判ってるんだって言った時の江崎の顔が。
うわあ、勘違いして恥ずかしい。……とでも思ったんだろうな。一気に真っ赤になりやんの。酒飲んでもあんまり変化のない江崎の顔が赤くなる様は見ていて面白かった。おまけに俺から目を逸らしやがるし。
「何だ。要するに女に会いに行ってた訳じゃなくて、遊びに行ってたのか」
やれやれと苦笑して中條先輩が頭をかく。だから最初っから俺は女はいねえっつったじゃねえか。なんて、そのまんま中條先輩に言えるはずもなく、俺はそうっすよとだけ答えた。江崎は江崎で納得したらしい。良かった、と嬉しそうに言ってビールを飲み干す。
「でも能戸先輩の気持ちも判るなあ。ぼくもこの間、お客さんにちょっと遊んでみろって言われて」
システマって面白いですよね、と江崎は客とのやり取りの話をひとしきりしてからそう言った。俺は素直に江崎の話に頷いた。そうなんだよな、システマって触ってみるとなかなか楽しかったりするんだな、これが。と気軽に合鎚打って話をしつつビール飲んでるうちに、俺のささくれた気分も大分落ち着いた。
でも何故か江崎と俺の会話に中條先輩は割って入らなかった。妙に気難しい顔をして考え込んでいる。それに気付いた俺は不思議に思いながら中條先輩に声をかけた。
「どうしたんすか? 先輩。何か気になることでもあるとか?」
特に考えて質問した訳じゃない。俺は軽い気持ちで中條先輩にそう訊ねた。すると中條先輩がしばらく俺を見てからため息をつく。
「やっぱり能戸は当分、開発部に行かない方がいいんじゃないかな」
「は?」
唐突に言われた意味が理解出来ず、俺は我ながら間の抜けた声を返しちまった。江崎と顔を見合わせて何でですか、と訊いてみる。中條先輩は冗談を言っている風じゃない。かと言って、言われた俺も何でそんなことを言われるのかさっぱり判らねえ。俺の質問に中條先輩は少し考えるような素振りをしてから答えた。
「いや……勘違いかも知れないが」
言いにくそうに中條先輩が口を濁す。何だ、一体。俺は自分の顔が強張っているのを感じて慌てて表情を普通に戻した。幾らなんでも先輩を睨むのはまずいだろ。
「能戸はシステマをどう思う?」
「は? なんすか、急に」
いきなりの質問に俺はそう言い返した。いかん。ちょっと気が立ってるかも知れん。自分で出しといてなんだが、今の俺の声ってかなり険がある気がする。
「便利な道具でしょ? それ以外の何なんすか」
営業所に入る時にも同じことを試験官に訊ねられた。俺はその時と同じ答えを自然と口にした。するとそうだよな、と中條先輩が頷く。何なんだよ、ほんとに。半ば呆れた俺に中條先輩がごめんごめん、と笑って詫びる。
「ちょっと引っかかったから訊いただけだ。それならいいんだ。気にするな」
そう言って中條先輩は全く別の話を振った。話している間に俺の機嫌もすっかり直り、いつの間にか不快感を覚えたことも忘れちまった。
不快感を覚えたってのがどういう意味か、俺自身、気付くことも出来ないまま。
工場から出荷された商品は続々と各店舗へと運ばれている。その間にも新しい注文ってのはある訳で、一時期の無茶苦茶なペースは解消されてもやっぱり仕事はなくならない。週末、所内に営業成績が張り出される時なんてみんな目の色違うもんな。
その営業成績で文句なしの最低、どんじりにいるのが俺って訳だ。今までも熱心な方じゃなかったが、最後尾ってのは初めてだな。感心しつつ営業成績を眺めてた俺を所長が鋭い声で呼ぶ。アナログな方法で紙に書いて貼ったりなんぞしなけりゃ、何で呼びつけられるか他の連中にはばれずに済むんだがな。まったく、面倒な話だ。
「ここ一番の勝負時に何してるんだ!」
はいはい、お怒りはごもっともでございますとも。俺は申し訳なさそうな顔だけ作り、所長の説教を聞き流した。どうせ他の連中が稼いでるんだ。それに俺だっていつもよりは実売数も多いんだぞ。それを不真面目だの不届きだのって怒らないで欲しいよな、本当。
「向上心はないのか、お前には! 中條を見ろ、中條を!」
そりゃあな。中條先輩の成績はちょっと普通じゃないよ。聞けば全営業所トップだって話じゃねえか。当の中條先輩が相変わらずのほほんとしてるもんだから俺も気付かなかったが、それは確かに凄いことだと思うよ。だが、何で同じ営業所にいるからって、そんな凄い成績と比べられなきゃなんねんだよ。
面白くない気分で十五分ほど説教食らって俺は席に戻った。十五分とはなかなかいい記録だ。所長もよくあんなに怒れるよな。最後には結局、同じこと言うくせによ。すみませんでしたって毎度のごとく詫びた俺に、今日はとびきり嫌そうに所長は言った。もういい。そう、所長の説教の締めの文句はいつもそれだ。いいんなら最初っから説教なんざすんなよな。
「大丈夫ですか?」
小声で隣の席から江崎が訊ねる。ああ、大丈夫だとも。何しろ俺にとっちゃ所長の説教なんざいつものことなんでな。そう言う代わりに俺はこっそり江崎に頷いてみせた。江崎も俺の言いたいことをすぐに察したのだろう。頷き返す。俺はそれを見てからちらっと所長を伺った。まだ所長は怒ってるのか俺の方を睨んでいる。まあでも、この方が俺は落ち着くかな。所長が浮かれてへらへらしてる方がよっぽど気持ち悪いっての。
「能戸先輩? 怒られたんですよね?」
っていうか、今の俺のがへらへらしてるのか。江崎が不思議そうに言ったところで初めて俺は自分がにやけてることに気付いた。いかん。まだ仕事中だっての。
「最近、能戸はやけに機嫌いいよな。もしかして」
いつの間にか中條先輩が俺たちの背後に近付いてる。中條先輩はこっそり俺と江崎に聞こえる程度の声で言った。
「女でも出来たとか?」
「えっ、そうなんですか!?」
中條先輩のいやに嬉しそうなせりふの後に江崎が素っ頓狂な声を上げる。おいおい、幾らなんでもその反応ってどうよ? それってもしかして俺に女が出来るはずがねえってことですかい。
「いや、違いますけど」
相変わらず中條先輩は仕事が速い。営業日誌はもう書き終わったらしい。クライアントの数ですら俺より一桁以上多いのにこれだもんなあ。毎日叱られてる俺とはえらい差があるよな。んでもまあ、中條先輩だしな。当り前っちゃ当り前か、なんて俺は自分を納得させた。
またまた、と笑う中條先輩の追求をかわしつつ、俺はキーボードを叩き始めた。やっぱり日誌を書く時は専用インターフェイスを使う気にならない。
「じゃあ、今日は飲みに行くか? 最近行ってないだろ? 能戸も江崎も」
要するにそれが言いたかったのかよ。俺は苦笑して中條先輩を振り返った。江崎も俺と同じようなことを思ったらしく、困ったように笑っている。この人は本当に成績トップだってのを感じさせない気さくさを持ってるよな。でも一部の奴らはそんな中條先輩が俺に声をかけるのが気に入らないようだ。ほら、今日もまた睨んでやがるよ、あの連中。
だが今日は俺も連中のうっとうしい視線を完全無視した。いつもなら少しくらいは睨み返すんだけどな。今の俺には奴らの相手をしてる暇はないんだな、これが。
「えーっと、俺はいいっす。すんません」
「え?」
ものの見事に二人の声が被る。いや、そりゃあな。俺も飲みに行くのは好きだよ。それに中條先輩や江崎の誘いは断る事の方が少ないしな。でもまあ、今日はそういう気分じゃないってことで。俺は驚いたように目を見張ってる二人に適当に言い訳をした。
「もしかしてまた」
江崎が恐る恐るといった態で言いかける。俺は慌てて床を蹴飛ばして椅子を動かしつつ江崎のわき腹を肘で小突いた。痛い、と呟いて江崎がわき腹を押さえる。
「んー?」
どこか嬉しそうに笑いながら中條先輩が俺と江崎を見比べる。何でもないっすよ、と仏頂面で答えた俺とは対照的に、江崎が焦ったように首を横に振る。いや、お前。それは中條先輩に何かあるって言ってるようなもんだから。
とは言え、俺も特に隠しておくつもりもないし。
「いや、開発にいる友達のところに行く約束してるんで」
「開発?」
声を潜めた俺に合わせて中條先輩もきっちりと声量をさげる。さすが、トップの営業マン。俺が言うまでもなく事情を察してくれたらしい。例え内容が何であれ、開発絡みの話なんぞしてたら奴らがどう言うか判りゃしねえからな。俺はちらっとうざったい連中を伺ってからこっそり頷いた。よしよし。今日は奴らも俺に構ってる暇はないらしい。とっととオフィスから出て行っちまった。
「でも開発部の人も忙しいんじゃないですか?」
江崎が困ったような顔で言う。そりゃあな。勝亦だって毎日暇にしてる訳じゃねえだろうな。でも俺は勝亦に用がある訳じゃない。……んだが、さすがにそれは言うのはまずいかな。俺はそうだな、と適当に江崎に合わせてからモニタ画面に向き直った。
「何だ。もしかして能戸、開発部に日参してるのか?」
「まあ、そうなりますね」
不思議そうな中條先輩の問いかけに答え、俺は日誌を書き始めた。いつものようにさっさと書き上げて勝亦のところに行こう。
「開発部は確か売れてない女の子はいなかったし」
「そうなんですよ」
俺の後ろで中條先輩と江崎が何か言ってるようだ。二人の会話の端っこを聞きつつも俺は機嫌よく日誌を書き進めていった。所長に怒られたのは腹立つけどな。いつもほどは気にならない。それに江崎と中條先輩はそんな大したこと話してないしな。
所長がオフィスを出る間際に中條先輩に話し掛ける。どうやら明日、また工場から商品出荷があるらしい。そのことを中條先輩に知らせた後、所長は俺を睨んでからオフィスを出て行った。けっ。相変わらずいけ好かないやつ。中條先輩には機嫌よく話すのに俺にはその態度かよ。ころっと手のひら返して嫌な顔しやがって。
ま、でもな。今日の俺は寛大だ。所長がどんな嫌な顔してようが、平気ですよ、ええ。ちょっと沈みかけた気分もすぐに浮上してくれる。俺はすぐにまた上機嫌に戻って営業日誌を書き終えた。
「ちょっと付き合え。やっぱりまずいぞ、能戸」
「は?」
いつの間にか中條先輩は難しい顔して腕組みなんかしてる。俺は不思議に思いながら中條先輩と江崎とを見比べた。江崎も見慣れない表情をしている。え、俺、そんな真剣に心配されるようなことした覚えはないぞ? それに俺は単に開発部にいる友達と会ってるって話をしただけで、それ以上のことは何も言ってない。なのに二人のこの心配振りはどうなんだ。
「いや、でも約束が」
「同じ会社でいつでも会えるんですから、明日でもいいじゃないですか」
いつも俺の言うことには気弱にはいはいと返事をしてる江崎までがそんなことを言う。俺は疑いの目で江崎と中條先輩とを見比べた。二人ともいつもならここでじゃあまたな、と笑って送り出してくれるはずなんだがな。
「なんすか、一体。江崎だけならまだしも先輩まで」
そろそろ勝亦も仕事を終える時間だ。俺は手早く画面の電源を落として席を立とうとした。そんな俺の肩を二人が両側から押さえる。……おい。
「落ち着け。いいか、能戸。確かに人の好みは自由だけどな」
「やっぱりやばいですよ、先輩。他の会社の人ならまだいいですけど、同じ会社の、しかも同じビルに勤める人なんて」
左から中條先輩が真面目くさった顔で言えば、江崎が右から気まずそうに言う。ちょっと待て。何かどうも勘違いされてる気がしてきたぞ。つい、日誌に集中しちまってたから気付かなかったが、もしかしてこの二人、俺の背後でとんでもない会話してたんじゃねえか? 嫌な予感を覚えた俺の頬は無意識のうちに引きつった。
「あ、あのですね。別に変なことは」
そこまで俺が言ったところで唐突に胸ポケットの電話が鳴る。俺は慌てて二人に断って電話を引っ張り出した。もしかして客か? そう思った俺の目に液晶画面の文字が飛び込んでくる。勝亦の名前を読み取った俺は焦って二人に背を向けて電話を受けた。
『あ、能戸? ごめん。今日は会議と打ち合わせが』
「ちょっと待て! 今朝は大丈夫だって言ってたろうが」
だから俺は今日も一日、客のわがままに笑顔を作って耐え、所長の説教を食らっても平気でいられたんだぞ。なのに土壇場でそれかよ。二人の手前、ストレートに怒れないって俺の立場をまるで理解してないんだろうな。勝亦のやつ、俺の言い分聞いてため息なんぞつきやがった。
『急に決まったんだ。仕方ないだろう』
慌ただしい口調で勝亦が言う。むかつくが、そう言われてしまうと言い返せない。仕方なく俺は判った、と言って電話を切った。くそ。これで楽しみは先送りかよ。
「能戸くぅん。さあ、今日は付き合いたまえ」
どうやら横で話を聞いていただけで俺が急に暇になっちまったって判ったらしい。付き合いたまえって、あの。何でそんな嬉しそうなんすか、中條先輩。俺のこと心配してくれてたんじゃないんすか。口の中でぼやく俺を引っ張り起こして中條先輩が江崎と頷き合う。まあ、勝亦の件が駄目になったんなら、飲みに行くのを断る理由もなくなったわけで。
いつもの居酒屋に入った俺たちは珍しく奥の座敷を借りることにした。いや、道中に何度か話を振ろうとしたんだけどな。この二人、その話は落ち着いてからなんて言ってくれて、俺の話を頑として聞こうとしなかったんだよ。で、居酒屋に入って中條先輩が率先して店員に話をつけ、江崎は俺を強引に奥の座敷に押し込んでくれた。……いや。頼む。別に俺はやましいことをしてるつもりはないんだ。そんな神妙な顔で二人して酒を勧めるな!
「よし、話を聞こうじゃないか」
とりあえずお疲れってグラスを合わせてビールを三人が飲んだ後、中條先輩がそう切り出した。ここの居酒屋はちょっと変わっていて、奥の広い座敷は個室として使えるようにもなってるんだな。宴会に使われる時には取り払われる襖が今はきっちり閉まってる。四畳半ほどのスペースにあるのは大きな机と座布団が四枚、でもって障子を開けると窓が覗き、その向こうには夜の街並みが広がってるって寸法だ。だが綺麗な夜景なんて見とれるほど整ったもんじゃねえ。単に道行く車のライトとかビルの明かりとかが見えるだけだ。でもオフィス街のど真ん中って立地の割にはましな方だろ。
「最初に言っときますけどっ。俺は別に男に気がある訳じゃないっすよ」
低い低い声で俺は真っ先にそう断った。すると中條先輩と江崎が不思議そうに顔を見合わせる。やっぱりそう思ってたのか……。
あのなあ! そりゃ、仕事ならともかく、だ。確かに理由もなく、飽きもせず毎日毎日同じ野郎のところに行くなんて奴がいたら、俺だってそいつのことをちょっと変わってると思うだろうよ。もし知り合いにそんなのがいたら、何かあったのかくらいのことは訊くかも知れない。でも断じて男相手にその気になる趣味があるからだ、なんてこたあ思わねえっ。
「何だ。そうなのか」
明らかに残念そうに中條先輩が言う。あんた、心配顔してたけど面白がってたんだろう。あ、しかも今、ビール飲みながらつまらんとかこっそり言いましたか? 言いましたね? 油断ならん人だな、もう。
「よ、よかった。心配してたんですよ、ほんとに」
こっちは心底安心したって顔で江崎が言う。そうだろう。安心したか、それは良かった。でも何でお前までそっちに思考がいっちまうんだよ。どうでもいいことだが、江崎の奴ってこういう所に入るときっちり正座しちまうのな。でかい図体してそれやるもんだから、いつも借りてきた猫みたいな感じがする。まあ、江崎の場合は普段からそれっぽいか。
「そりゃ確かに俺は彼女もいないし」
しかめっ面で言ってから俺は残ってたビールを飲み干した。するとどうぞ、と江崎がタイミングよくボトルを取り上げてグラスにビールを注いでくれる。俺は江崎からボトルを受け取って中條先輩のグラスに寄せた。おっ、と笑って中條先輩が少し残ってたビールを飲み干す。俺は差し出されたグラスを満たしてからついでに江崎にもビールを注いだ。まあね。こういう場所でもやっぱり礼儀ってもんがあってだな。先輩に酌するのは当然ってのはあるんだが、それだと江崎が手酌になっちまうからな。ついでだよ、ついで。
「だろ? だから疑ってたんだけどな。まあ、違ってほっとしたな」
「とか言いながら、先輩はからかう気だったんしょ?」
何て、些細な会話を続けて三十分ほどもした頃には、運ばれてきた料理をつついていた俺たちの腹も満たされた。程よく酔いも回って一息ついたところで俺は切り出したわけだ。
俺は何も勝亦に会いたくて開発部を訪ねてた訳じゃない。必然的に勝亦には会うがそれが目的じゃないんだ。俺が説明をし始めると、それまでいい気分でばか話を続けていた二人も神妙な面持ちになった。
「……別のI 3604 Twins?」
「何ですか? それ」
二人それぞれに言うのを聞いて、俺は説明した。今売れている新商品は実は開発段階の候補作の一つだったこと。そして候補として別のシステマがあったこと。つまり俺は二人にRC1の話をし始めた。RC1って何ですかという江崎の質問には俺の代わりに中條先輩が答えてくれた。あれ? 中條先輩、RCって単語を知ってるんだなあ。俺なんて勝亦に聞いてもよく判らんのに。
そこはさすが営業マン。中條先輩って本当に説明も上手いなあ。しかも聞き取り易いんだよな、中條先輩の話し方って。江崎も中條先輩の説明で一発で理解出来たようだ。この人ってやっぱ、すげえわ。こんな風に説明されれば客たちも納得し易いんだろうなあ。
「それで? そのRC1がどうしたんだ?」
なるほど、と納得して江崎が頷くのを余所に中條先輩が言う。おっと、忘れてた。俺が話をしてたんだったな。のんびりとビールを飲んでた俺は慌てて話を続けた。今現在、売りに出されているI 3604 Twinsと、RC1の違いを説明する。案の定、2wayの説明のところで江崎が首を捻った。
「え? I 3604 Twinsって2wayなんでしょ? だってお客さんもそう言ってますし、所長だって」
「違うぞ」
俺が否定するより早く、またまた中條先輩が言う。こ、この人って一体何者なんだ? いや、判るよ。知識量が生半可じゃないってことはな。現に俺は中條先輩が教えてくれる情報にこれまでに随分と助けられてきた。江崎だってそんな一人だ。でもだな。あっさり否定するなんてまさか思わねえだろ。何しろ所長だって2wayだっての否定しねえんだぞ。
俺の驚きを余所に中條先輩が2wayの説明を始めちまう。それを聞く内に江崎の顔色は悪くなってった。うわ、こいつ真面目だもんな。客を騙してたって思ってるんじゃないか? 俺はちょっと前までの自分のことを思い出して居たたまれない気分になった。恥ずかしいってのかな。照れくさいっていうか……。あー、まあ要するに江崎の態度にちょっと前の自分を重ねちまったわけだ。
俺が思った通り、中條先輩の説明を聞く江崎の表情が次第に険しくなる。だが江崎は俺と違ってすぐに文句は言わなかった。一応は中條先輩の話を最後まで聞いて、一呼吸。そうなんだよな。こいつって鈍くさいようでいて、実際は間の取り方が絶妙なんだよ。
「要するにお客さんは本当のことを知らないんですね?」
「そういうことになるかな。でも、その方が売りやすいからって理由だけで説明しないんじゃないぞ」
客は安心も一緒に買っているのだと中條先輩が言う。やっぱり営業の人だからだろうな。勝亦の説明より中條先輩の説明の方が聞いていて俺も納得しやすい。江崎は複雑な面持ちをして腕組みをした。だがそうしていても江崎は足を崩そうとしない。どうでもいいが、何でこの体格で正座してて足が痺れないんだ? 足に体重がもろに乗るだろうに。俺も中條先輩も適当に足を崩してるのに、江崎だけがきっちり正座って……。かと言ってこいつ、この中で一番の後輩だからそうしてるって風でもないんだよなあ。江崎と同期の奴と飲んでてもこんなことないし。もしかして学生時代に剣道だのやってたのかね。なんて、くだらないことを俺が考えている間にも二人の話は進んでいく。
結局、江崎は中條先輩の言葉に納得したらしい。要するに客は騙されたくて騙されているのだと。でもっていちいち説明したところで理解なんぞしてくれやしないのだと。次いで、システマが万が一壊れた場合のこと。システマってのはその性質から実は深刻なトラブルってのは発生しにくいんだ。客がシステマが壊れたって騒いで店に駆け込んでもだな。大抵は客側の操作ミスだったりするんだな。だもんで、一台こけたら二台ともアウトってやばい状況には、当分陥らないだろうってのが中條先輩の見解らしい。なるほどね。俺も中條先輩の説明に納得して頷いたもんな。その辺りのことは残念ながら勝亦の説明には含まれてなかったんだよ。
それにもしも深刻なトラブルが発生したとしても、その頃には客は別の機種に乗り換えるだろう。中條先輩は淡々とそう言った。それを聞いたところで俺はさすがに驚いた。え、じゃあいま売り出されてるあれって……。
「何だ? そんなに驚くことか? システマは使い捨てが基本だぞ?」
だからこれだけ市場が盛り上がってるんじゃないか。あっけらかんと中條先輩が言う。俺は慌てて江崎と顔を見合わせた。江崎も相当、驚いてるらしい。目を丸くしている。
「江崎が驚くのは判るけど、何で能戸まで驚くんだ?」
営業してれば判るだろう、と中條先輩が呆れたように付け足す。そりゃあこれだけ新商品がばんばん出てるんだし、俺もそうかも知れない程度には思ったことはある。
「そりゃ判りますけど、中條先輩が言うと重みが違うなって」
俺は力なく笑ってそう言ってみた。すると中條先輩が困ったような顔をする。もしかして呆れられちまったかな。そんな俺の不安を読んだように中條先輩がもっと自信を持てよ、なんて励ましてくれる。
確かになあ。中條先輩の契約件数を考えると当り前の話なんだよな。いくら新しい客を開拓するのが営業目的っつってもだ。誰もが気軽に持てるってほどにはシステマは普及していない。俺らがいい例だろ? 売り側である俺たち営業だって全員が個人でシステマを持ってるって訳じゃねえ。所長が時々、オフィスに持って来てはいるが、使いこなせてるのかどうかはさっぱり判らん。所長の場合は俺たちに見せびらかしてるって感じだしな。
多分、中條先輩は他社の契約からうちの商品に客を乗り換えさせてるんだ。しかも俺なんか目じゃない件数を、だ。そうでないと中條先輩の成績は説明つかないんだよ。改めて考えた俺は思わずため息をついた。無理無理。中條先輩を見習えって所長は言ってたが、絶対無理だって。
「話が逸れたな」
中條先輩がそう言ったところで俺は頷いて話の続きをした。要するにRC1の説明な。俺はずらっと勝亦にしてもらった説明を並べてから言った。
「試作機のRC1はどっちみち廃棄処分だろうって。だからそれまでなら好きに遊んでいいって言われて」
それが今回のお前の働きに対する報酬だ。勝亦はふざけてそう言った。要するに捨てるまでの間、RC1を好きに使っていいってことだ。最初それを聞いた俺は冗談じゃないと断ろうとした。だが考えたら俺って大した趣味がある訳じゃないし、仕事が終わって家にストレートに戻ったところでせいぜいがビール飲むくらいだ。それなら勧めに従ってちょっと遊んでみるか。そう考えて、俺は勝亦の案に乗ることにした。
最初の日は触り方からだった。実は俺、システマの扱い方って基礎的なことはクリアしちゃいるが、実際にインターフェイスを通して使ったことがなかったんだな。で、呆れる勝亦にご教示賜って覚えるとこから始めたって訳だ。
勝亦にしてみりゃ、ど素人がどういう風にシステマを使うかを知りたいってのがあったらしい。システマには俺の指示や動きのログが逐一、残る。後で勝亦はそれを分析するってわけ。要するに俺は実験台になってるってことだ。その話をした時の江崎の顔はちょっとした見物だった。最初は俺に同情したんだろな。勝亦が俺を実験台にしてるって、俺自身が言う前に話の流れから見当がついたんだろ。明らかに同情してますって顔してやがった。可哀想っていうか、気の毒にって感じの顔。でもその後で俺がきっちり判ってるんだって言った時の江崎の顔が。
うわあ、勘違いして恥ずかしい。……とでも思ったんだろうな。一気に真っ赤になりやんの。酒飲んでもあんまり変化のない江崎の顔が赤くなる様は見ていて面白かった。おまけに俺から目を逸らしやがるし。
「何だ。要するに女に会いに行ってた訳じゃなくて、遊びに行ってたのか」
やれやれと苦笑して中條先輩が頭をかく。だから最初っから俺は女はいねえっつったじゃねえか。なんて、そのまんま中條先輩に言えるはずもなく、俺はそうっすよとだけ答えた。江崎は江崎で納得したらしい。良かった、と嬉しそうに言ってビールを飲み干す。
「でも能戸先輩の気持ちも判るなあ。ぼくもこの間、お客さんにちょっと遊んでみろって言われて」
システマって面白いですよね、と江崎は客とのやり取りの話をひとしきりしてからそう言った。俺は素直に江崎の話に頷いた。そうなんだよな、システマって触ってみるとなかなか楽しかったりするんだな、これが。と気軽に合鎚打って話をしつつビール飲んでるうちに、俺のささくれた気分も大分落ち着いた。
でも何故か江崎と俺の会話に中條先輩は割って入らなかった。妙に気難しい顔をして考え込んでいる。それに気付いた俺は不思議に思いながら中條先輩に声をかけた。
「どうしたんすか? 先輩。何か気になることでもあるとか?」
特に考えて質問した訳じゃない。俺は軽い気持ちで中條先輩にそう訊ねた。すると中條先輩がしばらく俺を見てからため息をつく。
「やっぱり能戸は当分、開発部に行かない方がいいんじゃないかな」
「は?」
唐突に言われた意味が理解出来ず、俺は我ながら間の抜けた声を返しちまった。江崎と顔を見合わせて何でですか、と訊いてみる。中條先輩は冗談を言っている風じゃない。かと言って、言われた俺も何でそんなことを言われるのかさっぱり判らねえ。俺の質問に中條先輩は少し考えるような素振りをしてから答えた。
「いや……勘違いかも知れないが」
言いにくそうに中條先輩が口を濁す。何だ、一体。俺は自分の顔が強張っているのを感じて慌てて表情を普通に戻した。幾らなんでも先輩を睨むのはまずいだろ。
「能戸はシステマをどう思う?」
「は? なんすか、急に」
いきなりの質問に俺はそう言い返した。いかん。ちょっと気が立ってるかも知れん。自分で出しといてなんだが、今の俺の声ってかなり険がある気がする。
「便利な道具でしょ? それ以外の何なんすか」
営業所に入る時にも同じことを試験官に訊ねられた。俺はその時と同じ答えを自然と口にした。するとそうだよな、と中條先輩が頷く。何なんだよ、ほんとに。半ば呆れた俺に中條先輩がごめんごめん、と笑って詫びる。
「ちょっと引っかかったから訊いただけだ。それならいいんだ。気にするな」
そう言って中條先輩は全く別の話を振った。話している間に俺の機嫌もすっかり直り、いつの間にか不快感を覚えたことも忘れちまった。
不快感を覚えたってのがどういう意味か、俺自身、気付くことも出来ないまま。
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