冥府への案内人

伊駒辰葉

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二章

昏い夢の中-2

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 ジェル状のそれが塗られたペニスが電灯の光を鈍く照り返す。淡く色づいたペニスを順はしばらく眺めた。

「塗ったか?」
「こっちのもか?」

 そう言いながら順は左手を和也の前に差し出そうとした。

「え?」

 不意に股間が熱くなる。順は驚きに息を飲んで自分の股間を見下ろした。先ほどまで萎えていたペニスがゆっくりと頭をもたげる。それと同時に異様なほどの欲求が順の中に生まれた。戸惑いながら和也を見る。和也はのんびりとコーヒーを啜りながら目だけで笑った。

「な、何で……こんな……」

 無意識に身を屈め、順は掠れた声で呻いた。左手に残っていたジェル状のそれをぼんやりと見つめる。細かな気泡を含んだそれに何か細工がしてあったのだろうか。そうでなければこんなにいきなり昂奮する筈がない。

「こらこら。隠すなよ。見えねえだろが」

 面倒そうに立ち上がり、和也が順の肩を押し戻す。露になった股間ではペニスが痛いくらいに勃起している。順の呼吸は次第に速く浅くなり始めていた。

「ほーら、完璧。これでいけるだろ?」

 耳元にそう囁かれ、順は無意識に熱い息をついた。導かれるままに右手でペニスに触れる。まるでそこだけが別の生き物のようにペニスは脈打っている。指でなぞっただけで身震いするほどの快楽がこみ上げ、順は思わず呻いた。

「こ、こんなの、変だ。一体、何で」

 そう言いながら順は人差し指で静かにペニスをなぞった。付け根からゆっくりと先端に向かって指を運ぶ。熱く膨れた鈴口からはいつの間にか先走りが垂れている。あ、と小さく呟いて順は潤んだ目でペニスを見下ろした。指で触れている部分に焦れるような感覚がある。

「いいんだよ、それで。ほら、どこが気持ちいいか自分で探せ」

 和也が耳元にそっと囁く。低く甘い囁きに促され、順は何度か鈴口を指先でつついた。最初は恐る恐るだった指の動きが次第に大胆になる。先走りの垂れる鈴口を指先で擦りながら膨れた亀頭を指に包む。指に力を入れたり緩めたりを繰り返すうち、順の目には昂奮の色が浮かび始めた。

 ゆっくりと瞳の色が染まり変わる。順は空色の瞳を閉じて小さく呻いた。亀頭を捏ねていた指をずらして手にしっかりとペニスを握る。熱を帯びたペニスを根元から先端に向かってじわじわと擦る。先に塗りつけたジェル状のものは固まることなく、順の手の動きの助けになった。

 膝に乗せた左手が震える。ぎこちなくペニスを扱き始めた順を見つめながら和也がそっと身体を離す。だがそのことも判らないほどに順は初めての自慰に没頭していた。

「おお、上手い上手い。でもまだ出すなよ」

 床に座ってテーブルに片肘をつき、和也がのんびりと指示する。辛うじて声を耳で拾った順は、何故、そう言われるのかも理解出来ないまま小さく頷いた。和也が静かに腰を上げて部屋を出て行く。

 戻ってきた時、和也は手に空のコップを一つ握っていた。順は熱に浮かされた目で和也を見つめ、ふと手を止めた。だがそんな順に和也が舌打ちをして顎をしゃくる。

「やめんなよ」
「でも……それ、なに」

 飛びかけていた理性を懸命に引き戻して順は小声で訊ねた。ああ、と笑って和也が空のコップをテーブルに据える。

「出す時はちゃんとコールしろよ」

 言われた意味は何とか理解出来たが、意図が判らない。順は戸惑って手を止めたまま和也を見た。

「いいから続けろ」

 そう言って和也が順の目の前に立つ。和也は順の肩に手をかけ、耳元に口を寄せた。気配にびくりと身体を震わせた順の耳に和也が囁く。

「頭ん中でな。都子ちゃんを犯せ」
「なっ」

 思わぬことを言われ、感覚の全てが消える。だがすぐに順の身体には快楽が戻ってきた。いけないと思うのに都子の姿が思い浮かぶ。

「ぐっちゃんぐっちゃんに犯してやれよ。すっげえ気持ちいいぞ、きっと」

 甘い囁きに順は思わず小さく声を上げた。無意識のうちに手が動き始める。抑制しようとすればするほど、妄想が次々に浮かんでくる。順は意志とは正反対に和也の言うままに脳裏に都子を思い描いた。

 写真の中で笑う都子は順の目から見てもとても美しく成長していた。かつては幼さしか感じなかったその容姿もすっかり大人びていた。スカートから伸びる脚はすらりと長く、透けるように白い肌がとても魅力的に見えた。制服のジャケットに包まれた胸は膨らみ、身体の線も丸みを帯びていた。細い肩は抱いたら壊れそうだ。

「剥いちまえ。押し倒してナニをあそこに突っ込んでやるんだよ」

 まるで順の妄想を読んだように和也が囁く。順は自分でも気付かない内に強くペニスを扱き始めていた。ためらいがちだった手の動きが大胆になる。塗りたくったものが擦れる音と順の荒い息遣いが部屋に響く。

 制服を引き裂いて押し倒す。順は頭の中で泣き叫ぶ都子を組み敷いていた。傷一つない肌に唇を落とし、赤い印を幾つも刻む。悲鳴を上げる都子の口を手で塞ぎ、胸の膨らみを唇で思うままに吸う。手足を縛り付けるのも悪くない。そうすれば抵抗など出来なくなる。スカートをめくって下着を摺り下げて股間を露にする。

 順は都子を犯す場面を妄想しながら熱い息をついた。妄想の中で都子は嫌がって泣き叫んでいる。だがそれでも順は頭の中で都子を犯すのをやめなかった。怯えてかたく閉じている秘唇に強引にペニスを突き入れる。狭い膣に一気にペニスを突き入れればきっと都子は出血するだろう。が、その方がむしろいい。

 俺は本当はずっと。

「おー。完全に嵌ったな」

 感心したような和也の声も順の耳には入らなかった。熱心にペニスを扱きながら都子を呼ぶ。順はふわりと左手を持ち上げて口許に近づけた。手の中にあったジェル状のものを夢中で口に運ぶ。どうしてそうしたのか自分でも判らなかったが、口にそれを入れた瞬間、順はそれまでにない快楽を得た。口許を覆ったまま、それを嚥下する。残ったそれを舐め取りながら順は薄く目を開けた。

 空色に染まり変わった瞳は焦点が定まっていない。そして順の髪の色は根元から徐々に空色に変化しつつあった。だが熱心に自慰を続ける順は自身の変化には気付かなかった。頭の中で都子を犯しながら手の動きを速くする。

「も……う、出る……っ」
「おっと。忘れてた」

 苦しい息をつきながら告げた順のペニスを和也が手の上からつかむ。急に強く握られた順は掠れた悲鳴を上げた。

 和也は片手で空のコップを取り上げて順のペニスにあてがった。よし、と言って順のペニスから手を離す。その瞬間、順は呻きながら射精した。音を立てて精液がコップに注がれていく。

「すげえな。こりゃあ、お釣りがくるぞ」

 呟く和也の目は真っ直ぐにコップに向いている。順は荒い息をつきながら何度もコップの中に射精した。同時に頭の中で都子の膣内に射精する。

 妄想の中、順は泣き叫ぶ都子を見つめて嗤っていた。
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