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April
バ会長と喧嘩したことがバレました①
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久しぶりに朝から土砂降り。バケツの水をひっくり返したみたいとはよく言ったもので。
寮から校舎までのそんなに長くない距離ですら、雨に打たれてしまう。まったくもって憂鬱だ。
この憂鬱を加速させているのが、昨日の電話。
篠原くんにあんなこと言われたので、陽希に夜電話をしたのだが、事情を聞いたあの残念王子は一切何も話しちゃくれなかった。
「こんなとこで俺に聞かんでも、明日にはわかると思うで~」とか楽しげな声で言いやがって。篠原くんも似たようなこと言ってたけど、一体昨日今日で何が変わるってんだ。
あとあれだよ。
生徒会室で生徒会役員たちのことばっかり気にしてたけど、結局部屋の中ではマリモに会わなかった。お陰で、マリモと生徒会役員たちの関係性は不明なままだ。
マリモのやつ、食堂イベではバ会長のことぶん殴ってたけど、昨日ご飯食べてた時には普通に“秀吉”とか言ってたし、本当どういうことなんだか。脳内お花畑すぎて理解できない。
陽希からも生徒会関連の萌え情報を根掘り葉掘りしつっこく聞かれたが、こっちが欲しい情報何にももらえねぇのに俺だけ話すとかどう考えてもフェアじゃないから黙秘した。
それでも話してくれなかったあたり、何かヤバい感じの話なのだろうか? あの陽希が目の前の萌えを耐えてまで教えてくれないだなんて思わなかった。そう思うと、ちょっと怖いかもしれない。
「あ、あの! 《女神様》…!」
「……ん?」
通学路の並木道をぼーっと歩いていると、珍しいことが起こった。
普段は遠巻きに見ているだけのチワワくん達が、話しかけてきたのだ。
「どうかした?」
「えっと…。き、昨日のことをお伺いしたくて…」
「昨日のこと?」
意を決したように顔を上げるチワワくん。
「《女神様》は、あの転入生とどういったご関係なのでしょうか!?」
「………びっくりするほど何も無いから安心して」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。ただのクラスメートだから。心配かけたならごめんね?」
「そ、そんな! こちらこそ、おかしなことを聞いてすみませんでした…! 失礼しますっ!」
チワワくんは顔を赤らめて去っていく。
なんか疲れた。まさかあんなこと聞かれるとは。昨日、盛大に食堂でマリモと会話したからか?
あー。俺、なんか順調に巻き込まれていってる気がする……。
「おはよ、里緒」
「おはよう、藤咲くん」
「はよっす」
「お、悠真じゃん。おはよ」
「とってつけたような言い方すんなよー。ひっでぇな」
教室ドア横の里緒の前の席にいたのは、森久保悠真。入学当初から普通に話しかけてくれる、貴重なクラスメートの1人で、ノリが良くカッコいいやつだ。タチランクで篠原くんを抑えて10位にランクインしたのはこの悠真だ。
そう言えば、なんか会うの久しぶりな気がする。
「悠真、ここ最近姿見てなかったけど、どっか行ってたのか?」
「んー、まぁな。おうち事情ってやつ」
「ほー。金持ちは大変だな」
「小金持ちだから大変なんだよ」
「金持ちは否定しないのな」
「一応、工場いくつか経営してる社長子息なんでねー」
ニカッと人良さそうに笑う。
体育会系とさっき言った通り、体育委員でサッカー部員というバリバリのサッカー少年。その良く焼けた健康的な肌に似合う明るい笑顔のイケメンで、サッカーの腕前もかなりのものらしい。同じサッカー部員でスポーツ特待の里中くんとは、よくつるんでいるのを見かける。
ちなみに、里緒と悠真も結構仲が良い。席が近いからとか、幼馴染みだからとか、色々と腐男子の妄想を捗らせる設定は聞いている。
だが俺としては、これが恋ゆえのものであれば万々歳なんですよね!
今もほら見て。見つめ合いながら会話を交わしているじゃないか。
「それで、工場の方は立て直せたの?」
「とりあえず大丈夫そうなところまでは。まだまだ油断は禁物って感じだな」
「無理せずにねって、おじ様にも伝えといて。悠真くんもちゃんとお手伝いするんだよ」
「分かってるって。でもま、4月っから休んでばかりもいられないだろ? せっかく通わせてもらってるわけだしさ」
「だねぇ」
……ダメだ。会話が超絶重い。
もっとラフで楽しい会話をしてくれ。じゃないと萌えようにも萌えていられないじゃないか。
ただ、今の会話で家族ぐるみの付き合いなのかもしれないことがわかった。それは大きな収穫だ。
俺は2人の幸せを祈るぞ!
いつか2人のイチャラブシーンをカメラに収めて、直接話を聞かせてもらえれば…!!
「あーでも下手すりゃ2学期にはBに落ちてるかも…」
「それは流石にないだろ? 悠真人気者だし」
「残念だけど、ないとは言いきれないのがこの天照学園の怖いところなんだよ。家柄は、大切なクラス分けの指標。ランクが落ちれば、容赦なく落とされちゃうよ。僕らはそんな人を何人も見てきた」
「……なんか背筋がゾッとしたわ…」
あの演技達者な里緒が全く冗談を混ぜずに、ただただ真剣な表情かつ低い声色で淡々と話した内容が、なかなかに怖かった。
家柄は大切な指標、か。学園らしいけどな。
「そゆこと。あー、後ろ盾いるやつはいいよなぁ」
そう言って、俺を見る悠真。
そんな恨めしそうに見られても、これは俺が頼んだわけでは無いのでなんとも言えない。俺の後ろ盾とは、桜花ちゃんのことだったりする。
自称小金持ちだという悠真の家とも比べ物にならないくらい一般ピープルであろう俺が、安心してAクラスに在籍できるのは、ひとえに春風財閥の後ろ盾と、それを頼んでくれた幼馴染みのお陰なわけで。
俺にはどうしようもない。すまん、悠真。
そして、頑張れ、悠真。
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久しぶりに朝から土砂降り。バケツの水をひっくり返したみたいとはよく言ったもので。
寮から校舎までのそんなに長くない距離ですら、雨に打たれてしまう。まったくもって憂鬱だ。
この憂鬱を加速させているのが、昨日の電話。
篠原くんにあんなこと言われたので、陽希に夜電話をしたのだが、事情を聞いたあの残念王子は一切何も話しちゃくれなかった。
「こんなとこで俺に聞かんでも、明日にはわかると思うで~」とか楽しげな声で言いやがって。篠原くんも似たようなこと言ってたけど、一体昨日今日で何が変わるってんだ。
あとあれだよ。
生徒会室で生徒会役員たちのことばっかり気にしてたけど、結局部屋の中ではマリモに会わなかった。お陰で、マリモと生徒会役員たちの関係性は不明なままだ。
マリモのやつ、食堂イベではバ会長のことぶん殴ってたけど、昨日ご飯食べてた時には普通に“秀吉”とか言ってたし、本当どういうことなんだか。脳内お花畑すぎて理解できない。
陽希からも生徒会関連の萌え情報を根掘り葉掘りしつっこく聞かれたが、こっちが欲しい情報何にももらえねぇのに俺だけ話すとかどう考えてもフェアじゃないから黙秘した。
それでも話してくれなかったあたり、何かヤバい感じの話なのだろうか? あの陽希が目の前の萌えを耐えてまで教えてくれないだなんて思わなかった。そう思うと、ちょっと怖いかもしれない。
「あ、あの! 《女神様》…!」
「……ん?」
通学路の並木道をぼーっと歩いていると、珍しいことが起こった。
普段は遠巻きに見ているだけのチワワくん達が、話しかけてきたのだ。
「どうかした?」
「えっと…。き、昨日のことをお伺いしたくて…」
「昨日のこと?」
意を決したように顔を上げるチワワくん。
「《女神様》は、あの転入生とどういったご関係なのでしょうか!?」
「………びっくりするほど何も無いから安心して」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。ただのクラスメートだから。心配かけたならごめんね?」
「そ、そんな! こちらこそ、おかしなことを聞いてすみませんでした…! 失礼しますっ!」
チワワくんは顔を赤らめて去っていく。
なんか疲れた。まさかあんなこと聞かれるとは。昨日、盛大に食堂でマリモと会話したからか?
あー。俺、なんか順調に巻き込まれていってる気がする……。
「おはよ、里緒」
「おはよう、藤咲くん」
「はよっす」
「お、悠真じゃん。おはよ」
「とってつけたような言い方すんなよー。ひっでぇな」
教室ドア横の里緒の前の席にいたのは、森久保悠真。入学当初から普通に話しかけてくれる、貴重なクラスメートの1人で、ノリが良くカッコいいやつだ。タチランクで篠原くんを抑えて10位にランクインしたのはこの悠真だ。
そう言えば、なんか会うの久しぶりな気がする。
「悠真、ここ最近姿見てなかったけど、どっか行ってたのか?」
「んー、まぁな。おうち事情ってやつ」
「ほー。金持ちは大変だな」
「小金持ちだから大変なんだよ」
「金持ちは否定しないのな」
「一応、工場いくつか経営してる社長子息なんでねー」
ニカッと人良さそうに笑う。
体育会系とさっき言った通り、体育委員でサッカー部員というバリバリのサッカー少年。その良く焼けた健康的な肌に似合う明るい笑顔のイケメンで、サッカーの腕前もかなりのものらしい。同じサッカー部員でスポーツ特待の里中くんとは、よくつるんでいるのを見かける。
ちなみに、里緒と悠真も結構仲が良い。席が近いからとか、幼馴染みだからとか、色々と腐男子の妄想を捗らせる設定は聞いている。
だが俺としては、これが恋ゆえのものであれば万々歳なんですよね!
今もほら見て。見つめ合いながら会話を交わしているじゃないか。
「それで、工場の方は立て直せたの?」
「とりあえず大丈夫そうなところまでは。まだまだ油断は禁物って感じだな」
「無理せずにねって、おじ様にも伝えといて。悠真くんもちゃんとお手伝いするんだよ」
「分かってるって。でもま、4月っから休んでばかりもいられないだろ? せっかく通わせてもらってるわけだしさ」
「だねぇ」
……ダメだ。会話が超絶重い。
もっとラフで楽しい会話をしてくれ。じゃないと萌えようにも萌えていられないじゃないか。
ただ、今の会話で家族ぐるみの付き合いなのかもしれないことがわかった。それは大きな収穫だ。
俺は2人の幸せを祈るぞ!
いつか2人のイチャラブシーンをカメラに収めて、直接話を聞かせてもらえれば…!!
「あーでも下手すりゃ2学期にはBに落ちてるかも…」
「それは流石にないだろ? 悠真人気者だし」
「残念だけど、ないとは言いきれないのがこの天照学園の怖いところなんだよ。家柄は、大切なクラス分けの指標。ランクが落ちれば、容赦なく落とされちゃうよ。僕らはそんな人を何人も見てきた」
「……なんか背筋がゾッとしたわ…」
あの演技達者な里緒が全く冗談を混ぜずに、ただただ真剣な表情かつ低い声色で淡々と話した内容が、なかなかに怖かった。
家柄は大切な指標、か。学園らしいけどな。
「そゆこと。あー、後ろ盾いるやつはいいよなぁ」
そう言って、俺を見る悠真。
そんな恨めしそうに見られても、これは俺が頼んだわけでは無いのでなんとも言えない。俺の後ろ盾とは、桜花ちゃんのことだったりする。
自称小金持ちだという悠真の家とも比べ物にならないくらい一般ピープルであろう俺が、安心してAクラスに在籍できるのは、ひとえに春風財閥の後ろ盾と、それを頼んでくれた幼馴染みのお陰なわけで。
俺にはどうしようもない。すまん、悠真。
そして、頑張れ、悠真。
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