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April
〔チーム2-A〕腐男子たちの使命①
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「そういや、どこまで聞いてたんや? 俺の話」
「ん? あ、全く聞いてねーよ」
「お前……、そんな酷いことをさらっとゆうなや。俺が傷つくとか思わんのか」
「うん」
「ほんまに酷いな!?」
真顔で告げる俺に、陽希は大袈裟な仕草でため息をつく。髪をくしゃりと鷲掴み、「まったく蒼葉は……」と呟かれた。
どこか憐れまれている気がする。陽希にそんなふうに思われるだなんて、なんて屈辱。
「ま、この話はお終いや。ほんなら気ぃ取り直して、4つ目のグループの話すんで~!」
「あいよ」
今度こそさっきまでの情報の続きを聞こうと、姿勢を正したその時。
──ガシャン!!!
激しい金属音が鳴り響く。
音の鳴った方に目を向けると、ドアが破壊されそうな勢いで何度も押し開かれていた。バリケードである机や椅子たちが、悲鳴をあげるように大きく揺れている。
「ほー……。なかなかアグレッシブやな~」
「過激派じゃんか。もしかして大軍か?」
目を離さないよう後退りながら、ドアとの距離を確保する。
転落防止の柵が背中に当たると、陽希と視線を交わらせる。
「陽希は逃げ道あんの?」
「あったり前田のクラッカーやん!」
「なにそれおもんね」
「うるさいわ! まぁ、ここは俺にとって庭みたいなもんやで。逃げ道の1つや2つ、もちろん用意してあるわ」
「そりゃよかった。俺が放って行ったせいで捕まったーみたいな、後味悪い思いはしたくなかったんでね」
「なるほど? 俺のこと甘く見んといてや。伊達にこの学園で生きてないで。飛び抜けた能力はあらへんけど、俺かてそれなりに動けるんやから」
横に並ぶと少しだけ高い位置にある陽希の顔。長いまつ毛の奥にある、茶色の瞳が心底楽しそうに燃えていた。
さすがお祭り男だな。
そう思ったのと同時に、轟音を撒き散らしながらバリケードが崩れた。
立ち込める煙の中から、複数人の生徒がこちらに向かってくる。
「やっぱりここだったんっすね、陽希さま!! って、うお!? 《女神様》もいるなんて超ラッキーっ!」
「え!? 《女神様》!?」
「嘘だろ、もう《女神様》見つけたのかよ!?」
「巴山、お前すげーな!!」
「っていうか、《女神様》と陽希様、こんな場所でこの1時間ちょっと、何をされていたのでしょう……っ!?」
「お邪魔してほんっとーに申し訳ありません!!!! ナニかされるなら、俺たちのことは気にせずに続けてくださいね! あ、逃げるのだけは勘弁です!」
バリケードを崩した時の轟音に負けないくらいのうるささで現れたのは、陽希曰く〔チーム2-A〕。6人組らしい。
どうやら会話の内容から鑑みると、陽希目当てで、巴山くんがここを提案したらしい。マジかよ。俺、巻き込まれ損じゃん。
見覚えしかない6人は、逃げ道を塞ぐように横に広がって俺たちと対峙する。
結構絶体絶命な状況。にも関わらず、隣から聞こえてきたのは、心底楽しそうな笑い声だった。
「あはは! やっぱ光くんらか~。この短時間でわざわざここに目ぇつけるやなんて、同類やろうと思ったで!」
「へへ! 伊達に腐男子やってませんからね!」
「っす!」
得意げに笑う巴山くんたちが、あまりにも年相応のDKで可愛く感じるんですけど。陽希に褒められて嬉しかったんだな。あぁ、またもや新たな可能性が。
腐男子×腐男子もいいよな。いいんだけど、それはまた後で考えることにして、今はこの状況から逃れる方法を考えないと。
妄想の世界に行きそうになる思考を理性で何とか押し留め、状況を俯瞰する。
巴山くんたちはそれぞれに目配せすると、大きく頷く。何か仕掛けてくるようだ。
「それではお2人とも。ここであったが100年目! 神妙にお縄についてください!」
「って、なんで時代劇風やねん!!」
関西人の血が騒いだのか、陽希が大声で突っ込んだと同時に、巴山くんたちがタックルしてくる。なるほど、これは確かに賢い方法だ。
俺はともかく、明らかに反応の遅れた陽希。かなりギリギリで躱すことになったみたいで、軽く焦りの色を浮かべている。
「っぶな~!! やめてやもー!! 関西人たるもん、あんなんされたら突っ込まざるをえやんねん! でも残念やったな! 俺はこんなところで捕まる男と違うんやで! ほんなら!」
どこかダサい捨て台詞を残して、屋上の反対側に走っていった陽希。あっちには飛び降りれそうなベランダや、非常階段なんかがある。それらで逃げるのだろう。
陽希を追っていったのは3人。
巴山くん含む残り3人は、改めて俺と対峙してくる。
「割とガチで、《女神様》がいらっしゃるなんて驚きでした! 嬉しいです!」
「本来なら、俺たちみたいなのが貴方様に触れるだなんて烏滸がましいかもしれませんが、今の俺たちの最大の目的は貴方様を捕まえること。ここで捕まえさせてもらいます!」
「お願いです、捕まってください《女神様》!」
「……ごめんね。そんな簡単に捕まるわけにはいかないよ」
手を横に広げ、逃げ道を塞ぎながら徐々に徐々に近づいてくる。陽希のような逃げ方は、流石にもう無理だろう。
俺が眉を下げながら告げた声は、届いているのかいないのか。3人の会話は突然横道に逸れた。
「いやさ、でもここで簡単に捕まえちまっていいのか……? このゲーム的に。というか、俺たちの萌え的に!」
「巴山。邪念は捨てろ。全ては明日最高の萌えを堪能するためだ。今この時は、心を鬼にしなければならないんだよ」
「その通り。このゲームで僕らの目の届かないところで絡まれるよりも、望みを明日へ繋げるべきだ! ここで《女神様》を捕まえることこそ、2-A腐男子たる僕たちがすべき使命だよ!」
「使命、か。なるほどな、確かに!」
「これもし捕まえれたら、学園中のヒーローじゃね!?」
「いや、どっちかって言うと勇者だよ!!」
どっちでもいい。どっちでもいいし、何その不穏すぎるやりとり……。ってか君たちみんな腐男子だったんだね。知らなかったよ。
妄想のネタにされることに慣れないといけないと思った矢先にこれとは。ガッツリ声に出されている。まぁいいけどさ。今はまだ実害はないし。今はね?
兎にも角にも、捕まるわけにはいかない。
ジリジリと間合いを詰めてくる3人。
その手がこちらに向かって伸びてきた瞬間、俺はひょいっと後ろの柵へ飛び乗った。
「「「え?」」」
突然の俺の奇行に、目を見開いて固まる3人。
「ちょっ……あ、危ないですよ《女神様》!?」
「降りてください!!」
「早まらないでください! もしもの事があったらどうするんですか!?」
一時の後、止めようと慌てふためく3人に、俺は涼やかに微笑みかける。
そして──
「それでは皆様、ごきげんよう」
ひらひらと手を振りながら。
そのまま落ちるように後ろへと倒れ込んだ。
「「「《女神様》あああああああああぁぁぁ!!??」」」
「ん? あ、全く聞いてねーよ」
「お前……、そんな酷いことをさらっとゆうなや。俺が傷つくとか思わんのか」
「うん」
「ほんまに酷いな!?」
真顔で告げる俺に、陽希は大袈裟な仕草でため息をつく。髪をくしゃりと鷲掴み、「まったく蒼葉は……」と呟かれた。
どこか憐れまれている気がする。陽希にそんなふうに思われるだなんて、なんて屈辱。
「ま、この話はお終いや。ほんなら気ぃ取り直して、4つ目のグループの話すんで~!」
「あいよ」
今度こそさっきまでの情報の続きを聞こうと、姿勢を正したその時。
──ガシャン!!!
激しい金属音が鳴り響く。
音の鳴った方に目を向けると、ドアが破壊されそうな勢いで何度も押し開かれていた。バリケードである机や椅子たちが、悲鳴をあげるように大きく揺れている。
「ほー……。なかなかアグレッシブやな~」
「過激派じゃんか。もしかして大軍か?」
目を離さないよう後退りながら、ドアとの距離を確保する。
転落防止の柵が背中に当たると、陽希と視線を交わらせる。
「陽希は逃げ道あんの?」
「あったり前田のクラッカーやん!」
「なにそれおもんね」
「うるさいわ! まぁ、ここは俺にとって庭みたいなもんやで。逃げ道の1つや2つ、もちろん用意してあるわ」
「そりゃよかった。俺が放って行ったせいで捕まったーみたいな、後味悪い思いはしたくなかったんでね」
「なるほど? 俺のこと甘く見んといてや。伊達にこの学園で生きてないで。飛び抜けた能力はあらへんけど、俺かてそれなりに動けるんやから」
横に並ぶと少しだけ高い位置にある陽希の顔。長いまつ毛の奥にある、茶色の瞳が心底楽しそうに燃えていた。
さすがお祭り男だな。
そう思ったのと同時に、轟音を撒き散らしながらバリケードが崩れた。
立ち込める煙の中から、複数人の生徒がこちらに向かってくる。
「やっぱりここだったんっすね、陽希さま!! って、うお!? 《女神様》もいるなんて超ラッキーっ!」
「え!? 《女神様》!?」
「嘘だろ、もう《女神様》見つけたのかよ!?」
「巴山、お前すげーな!!」
「っていうか、《女神様》と陽希様、こんな場所でこの1時間ちょっと、何をされていたのでしょう……っ!?」
「お邪魔してほんっとーに申し訳ありません!!!! ナニかされるなら、俺たちのことは気にせずに続けてくださいね! あ、逃げるのだけは勘弁です!」
バリケードを崩した時の轟音に負けないくらいのうるささで現れたのは、陽希曰く〔チーム2-A〕。6人組らしい。
どうやら会話の内容から鑑みると、陽希目当てで、巴山くんがここを提案したらしい。マジかよ。俺、巻き込まれ損じゃん。
見覚えしかない6人は、逃げ道を塞ぐように横に広がって俺たちと対峙する。
結構絶体絶命な状況。にも関わらず、隣から聞こえてきたのは、心底楽しそうな笑い声だった。
「あはは! やっぱ光くんらか~。この短時間でわざわざここに目ぇつけるやなんて、同類やろうと思ったで!」
「へへ! 伊達に腐男子やってませんからね!」
「っす!」
得意げに笑う巴山くんたちが、あまりにも年相応のDKで可愛く感じるんですけど。陽希に褒められて嬉しかったんだな。あぁ、またもや新たな可能性が。
腐男子×腐男子もいいよな。いいんだけど、それはまた後で考えることにして、今はこの状況から逃れる方法を考えないと。
妄想の世界に行きそうになる思考を理性で何とか押し留め、状況を俯瞰する。
巴山くんたちはそれぞれに目配せすると、大きく頷く。何か仕掛けてくるようだ。
「それではお2人とも。ここであったが100年目! 神妙にお縄についてください!」
「って、なんで時代劇風やねん!!」
関西人の血が騒いだのか、陽希が大声で突っ込んだと同時に、巴山くんたちがタックルしてくる。なるほど、これは確かに賢い方法だ。
俺はともかく、明らかに反応の遅れた陽希。かなりギリギリで躱すことになったみたいで、軽く焦りの色を浮かべている。
「っぶな~!! やめてやもー!! 関西人たるもん、あんなんされたら突っ込まざるをえやんねん! でも残念やったな! 俺はこんなところで捕まる男と違うんやで! ほんなら!」
どこかダサい捨て台詞を残して、屋上の反対側に走っていった陽希。あっちには飛び降りれそうなベランダや、非常階段なんかがある。それらで逃げるのだろう。
陽希を追っていったのは3人。
巴山くん含む残り3人は、改めて俺と対峙してくる。
「割とガチで、《女神様》がいらっしゃるなんて驚きでした! 嬉しいです!」
「本来なら、俺たちみたいなのが貴方様に触れるだなんて烏滸がましいかもしれませんが、今の俺たちの最大の目的は貴方様を捕まえること。ここで捕まえさせてもらいます!」
「お願いです、捕まってください《女神様》!」
「……ごめんね。そんな簡単に捕まるわけにはいかないよ」
手を横に広げ、逃げ道を塞ぎながら徐々に徐々に近づいてくる。陽希のような逃げ方は、流石にもう無理だろう。
俺が眉を下げながら告げた声は、届いているのかいないのか。3人の会話は突然横道に逸れた。
「いやさ、でもここで簡単に捕まえちまっていいのか……? このゲーム的に。というか、俺たちの萌え的に!」
「巴山。邪念は捨てろ。全ては明日最高の萌えを堪能するためだ。今この時は、心を鬼にしなければならないんだよ」
「その通り。このゲームで僕らの目の届かないところで絡まれるよりも、望みを明日へ繋げるべきだ! ここで《女神様》を捕まえることこそ、2-A腐男子たる僕たちがすべき使命だよ!」
「使命、か。なるほどな、確かに!」
「これもし捕まえれたら、学園中のヒーローじゃね!?」
「いや、どっちかって言うと勇者だよ!!」
どっちでもいい。どっちでもいいし、何その不穏すぎるやりとり……。ってか君たちみんな腐男子だったんだね。知らなかったよ。
妄想のネタにされることに慣れないといけないと思った矢先にこれとは。ガッツリ声に出されている。まぁいいけどさ。今はまだ実害はないし。今はね?
兎にも角にも、捕まるわけにはいかない。
ジリジリと間合いを詰めてくる3人。
その手がこちらに向かって伸びてきた瞬間、俺はひょいっと後ろの柵へ飛び乗った。
「「「え?」」」
突然の俺の奇行に、目を見開いて固まる3人。
「ちょっ……あ、危ないですよ《女神様》!?」
「降りてください!!」
「早まらないでください! もしもの事があったらどうするんですか!?」
一時の後、止めようと慌てふためく3人に、俺は涼やかに微笑みかける。
そして──
「それでは皆様、ごきげんよう」
ひらひらと手を振りながら。
そのまま落ちるように後ろへと倒れ込んだ。
「「「《女神様》あああああああああぁぁぁ!!??」」」
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