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April
月夜の電話 -side?-
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――ブーッ、ブーッ
月明かりが差し込む窓辺の机の上で、着信を告げるスマホ。
「……もしもし」
『もしもし。2日間の新入生歓迎祭、お疲れ様~』
「あぁ」
『部屋に戻ってるの?』
「いや、まだだ」
『こら。今日はもう疲れたでしょ? 早く帰って休んだ方がいいよ?』
「そうだな。この後すぐに帰るよ」
他愛もない話。
一呼吸置いた後、軽い調子で相手は本題を切り出した。
『それで、この2日間のあの子の様子はどうだった?』
そう。これが本題。
「別に、変わったことは何も──」
『そんなわけないでしょ、新歓してるんだから。ケイドロ、だっけ? 楽しんでたみたいだけど、確かギリギリ逃げきれなかったんだよね? 誰とペアになったんだっけ?』
……どこからその情報を得ているんだろう。
学園にいないはずなのに。
『言えないの?』
黙っていると、答えないことに苛立ったのか、若干声が低くなった。すっと背中に汗が流れる。
「……綾瀬澪、だ」
『綾瀬澪……って、あの子か。うん、あの子なら安心だね! もしかして、何か手を回してくれたの?』
「何もしてない」
『偶然そうなったの? それならよかった~! 安心したよ! 僕が外から操作してもいいけど、学園に手を出すのは色々と面倒だからね。できるだけしたくないし』
「……」
『何だか蒼葉の話してたら、会いたくなってきちゃったなぁ。確か、ゴールデンウィークは実家に帰るらしいんだよね。この際だから、会いに行っ――』
「やめろ!」
思わず、言葉を遮って叫んだ。
水を打ったように静まり返る電話口。
……やってしまった。
『“やめろ”って、どういうこと?』
やがて聞こえてきたのは、氷のように冷たい静かな声。
あぁ、怒っている。
「実家でゆっくりしてるのを邪魔するのは、……やめた方がいいんじゃないかと」
『ねぇ』
まるで子どもに言い聞かせるように、一音一音をゆっくりと発音する。
『僕が、僕のモノに会いに行って、何が悪いのかな?』
反論しようにも、喉が張り付いて声が出ない。
『それとも、また言うの? “蒼葉はお前のモノじゃない”なんて戯言』
「…………戯言じゃ――」
『戯言だよ』
やっと絞り出した蚊の鳴くような声は、吐き捨てるような冷たい声に遮られた。
『“悪い子”』
低く響いたその一言に、ひゅっと喉が鳴った。取り落としそうになるスマホを必死に握りしめる。
電話相手は怒りを隠さず、苛立たしげに息を吐く。
『やっぱり離れているとダメだね。あんなに僕の言うことを聞く従順な“良い子”だったのに、聞き分けのない“悪い子”になっちゃって。……無理にでも連れていくべきだった』
独り言のように早口で呟かれるセリフに、目を伏せる。
『蒼葉に会うのはまた今度にするよ。それよりも先にやらなきゃいけないことが出来たから。何のことか、わかるよね?』
こちらに向けて投げられた言葉。
張り付いた喉から漏れ出た声は、情けなく震えていた。
「……しつけ、だろ……?」
『よく分かってるねその通りだよ。僕の言うことを聞けない“悪い子”をそのままにしておくわけにはいかないからね。明日、学園まで迎えを寄越すから』
言いたいことを言って一方的に切れた電話。
通話が切れたことを悟った瞬間、身体中から力が抜け、崩れ落ちた。スマホが床に落ち、鈍い音を鳴らす。
どうやら思っていたよりも緊張していたらしい。
今更、身体が震えていたことに気づく。
震えが治まった頃、スマホを拾って立ち上がり、明るく輝く月を見上げた。
雲ひとつない空。今日が闇夜じゃなくて本当に良かった。
ふぅ……と息を吐き、スマホのライトをつける。今日は月が明るいけれど、念の為。
ライトで道を照らし、イヤホンでアップテンポの音楽を聴きながら、ゆっくりと寮へ向けて歩き出した。
月明かりが差し込む窓辺の机の上で、着信を告げるスマホ。
「……もしもし」
『もしもし。2日間の新入生歓迎祭、お疲れ様~』
「あぁ」
『部屋に戻ってるの?』
「いや、まだだ」
『こら。今日はもう疲れたでしょ? 早く帰って休んだ方がいいよ?』
「そうだな。この後すぐに帰るよ」
他愛もない話。
一呼吸置いた後、軽い調子で相手は本題を切り出した。
『それで、この2日間のあの子の様子はどうだった?』
そう。これが本題。
「別に、変わったことは何も──」
『そんなわけないでしょ、新歓してるんだから。ケイドロ、だっけ? 楽しんでたみたいだけど、確かギリギリ逃げきれなかったんだよね? 誰とペアになったんだっけ?』
……どこからその情報を得ているんだろう。
学園にいないはずなのに。
『言えないの?』
黙っていると、答えないことに苛立ったのか、若干声が低くなった。すっと背中に汗が流れる。
「……綾瀬澪、だ」
『綾瀬澪……って、あの子か。うん、あの子なら安心だね! もしかして、何か手を回してくれたの?』
「何もしてない」
『偶然そうなったの? それならよかった~! 安心したよ! 僕が外から操作してもいいけど、学園に手を出すのは色々と面倒だからね。できるだけしたくないし』
「……」
『何だか蒼葉の話してたら、会いたくなってきちゃったなぁ。確か、ゴールデンウィークは実家に帰るらしいんだよね。この際だから、会いに行っ――』
「やめろ!」
思わず、言葉を遮って叫んだ。
水を打ったように静まり返る電話口。
……やってしまった。
『“やめろ”って、どういうこと?』
やがて聞こえてきたのは、氷のように冷たい静かな声。
あぁ、怒っている。
「実家でゆっくりしてるのを邪魔するのは、……やめた方がいいんじゃないかと」
『ねぇ』
まるで子どもに言い聞かせるように、一音一音をゆっくりと発音する。
『僕が、僕のモノに会いに行って、何が悪いのかな?』
反論しようにも、喉が張り付いて声が出ない。
『それとも、また言うの? “蒼葉はお前のモノじゃない”なんて戯言』
「…………戯言じゃ――」
『戯言だよ』
やっと絞り出した蚊の鳴くような声は、吐き捨てるような冷たい声に遮られた。
『“悪い子”』
低く響いたその一言に、ひゅっと喉が鳴った。取り落としそうになるスマホを必死に握りしめる。
電話相手は怒りを隠さず、苛立たしげに息を吐く。
『やっぱり離れているとダメだね。あんなに僕の言うことを聞く従順な“良い子”だったのに、聞き分けのない“悪い子”になっちゃって。……無理にでも連れていくべきだった』
独り言のように早口で呟かれるセリフに、目を伏せる。
『蒼葉に会うのはまた今度にするよ。それよりも先にやらなきゃいけないことが出来たから。何のことか、わかるよね?』
こちらに向けて投げられた言葉。
張り付いた喉から漏れ出た声は、情けなく震えていた。
「……しつけ、だろ……?」
『よく分かってるねその通りだよ。僕の言うことを聞けない“悪い子”をそのままにしておくわけにはいかないからね。明日、学園まで迎えを寄越すから』
言いたいことを言って一方的に切れた電話。
通話が切れたことを悟った瞬間、身体中から力が抜け、崩れ落ちた。スマホが床に落ち、鈍い音を鳴らす。
どうやら思っていたよりも緊張していたらしい。
今更、身体が震えていたことに気づく。
震えが治まった頃、スマホを拾って立ち上がり、明るく輝く月を見上げた。
雲ひとつない空。今日が闇夜じゃなくて本当に良かった。
ふぅ……と息を吐き、スマホのライトをつける。今日は月が明るいけれど、念の為。
ライトで道を照らし、イヤホンでアップテンポの音楽を聴きながら、ゆっくりと寮へ向けて歩き出した。
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