『桜魂の継承者』-BLOOM OF ETERNAL BONEDS-

第49話 「微かな異変と春風の予兆」

桜がまだ淡く揺れる朝、福田朋広は団地の廊下を歩きながら、20歳の身体の感覚に少しずつ慣れてきたことを実感していた。
身軽さと少しの若さに、無意識に笑みがこぼれる。

その時、スマホの画面がわずかに光った。
「…あれ？通知かな？」

画面には特別なメッセージは出ていない。
ただ、指先に感じる微細な振動が、いつもより少し強い。
朋広は首をかしげるが、周囲は普段通り。

「気のせいか…？」

そう思った瞬間、階段の上から小さな音がした。
見ると香椎天音が、手元の書類に困っている。
駆け寄ると、何気なく彼女の前で手を差し伸べる。

すると、ほんの一瞬、空気が少し揺れるような感覚があった。
花びらが舞う桜の下で、朋広自身はまだ気づかないが、身体の奥に微かな力が目覚めかけているようだった。

その後も、団地の廊下では小さな出来事が続いた。
九条つばめが忘れ物を取りに戻り、御影紫苑が店先で何かを書き留める。
朋広の周囲では、何気ない日常の中に、確かに“少しの異変”が混ざっている。

――今日の午後、誰も気づかない微かな異変が、春風とともに街角を駆け抜ける。
――そして、その波紋は、やがて少しずつ主人公の新しい力と日常を揺り動かすことになるのだった。