島流し聖女はモフモフと生きていく

こまちゃも

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第十話

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第十話


「ふむ‥‥」

お昼ご飯様にいつものスープを作っていた時だった。
最近、シロさん達、ご飯の食べがあまりよくない? と気付いた。
今のところ食べ残しは無いが、微妙な顔をしている気がする。

『メェの料理は美味い。美味いが、こう毎日毎食同じと言うのは‥‥』
『そうなのよねぇ。いくら中の具材を変えていると言っても、味付けは同じなのよねぇ』

そう言えば、教会主催の炊き出しの時にもこの顔を見た気がする。あの時はシチューとパンを三日間出した時だ。
初日はとても喜んでもらえたが、二日目は困惑した顔になり、三日目には微妙な顔になっていた。
不思議に思って教会の者に聞いたら、「まぁ、三日も同じものだと‥‥ね」と言っていた。
その時は大して気にしていなかった。自分がその生活を十数年続けてきたから。
今は、シロさん達がいる。このままでは、いけない気がします。
とは言っても、私はこのスープとパン以外に作れる料理がありません。
あ、あの本! トウドウさんが残した本があります!

「ダシ‥‥ショウユ‥‥?」

暗号でしょうか。しかし、どこかで見たような?
とにかく、料理なのですから、先ずは書いてある物を揃えましょう。
台所裏にある倉庫には、様々な調味料も置いてある。
トウドウさんの料理本に書いてある料理は、聞いた事の無い名ばかり。彼女の故郷である異世界の料理なのでしょうか。

「ふむ?」

倉庫に向かうと、トウドウさんの残した魔道具が目に入った。そしてそこに、ダシやショウユと書かれていた。
彼女のいた世界の「どりんくさーばー」と言う物を参考に作ったらしい。
これは、調味料だったのか。

「こちらは‥‥海の香りがします。そしてこちらは‥‥しょっぱい」

どちらも食べた事の無い味ですが、美味しいと思える。
トウドウさんの故郷は海が近かったのでしょうか。

「さて、レシピ通りに作れば‥‥」

書かれていた調味料と食材を揃えたまでは良かったのですが、作り方を読み進めていく目が止まった。

「ダシを鍋半分。食材を切ってドバっと入れ、ショウユをシャッと一回し‥‥シャッと?」

難解です。
もしかしたら、上級者向けなのかもしれません。

「ふ~」

袖をまくり、気合を入れます。これも、シロさん達の為です! 少しだけ折れかけた心を奮い立たせます。
奮闘する事一時間。トウドウさんの本を解読しつつ、なんとか形になりました。

「料理名は「肉じゃが」らしいです」
「ピヨ~『わぁ! 美味しそうな匂い』!」
「ニャニャ『まぁ、匂いは良さそうだな』」
「ピピヨ~『いただきま~す』!」

あ。お皿から少し目を離した隙に、ピヨさんが肉じゃがの肉(キノコ)を突いて食べてしまいました。

「ピヨさん。それは人用の味付けです。ぺ、してください」
「ピヨ~『美味しいわ』!」
「ニャニャ、ニャ~『メェ、我等は人の物と同じでも大丈夫だ。ん、美味い』」
「「キュ~キュ『『なに~? わぁ、美味しい!』』」

止める間もなく、お皿が空になってしまいました。これは、少し様子見が必要ですね。





フレス王国 王都

「さあさあ、新鮮な野菜だよ!」
「お、そこのお兄さん! こっちは隣国から仕入れた織物だ!」

メルリアが国を追われてから数週間が経ったフレス王国では、平和な日々が続いていた。
魔獣の被害は減り、天候も落ち着いて来たと喜ぶ人々。

「なぁ、あの噂聞いたか?」

平和な日々は、生活に追われていた人々に安寧と少しの余裕を生み出す。
それは、良くも悪くも、自分以外に目が行くと言う事にもなる。

「以前は日照りや魔獣の被害を聞かない日は無かったが、ここ最近‥‥というか、メルリア様がその‥‥」
「ああ、俺もその噂は聞いた。本当に偽物で、追い出したから良くなったんじゃないかってな」
「ちょいと!」

口さがない噂をする男達の話に割り込んだのは、かっぷくの良い女性だった。
彼女は腕組をし、鼻息荒く男達を𠮟りつけた。

「あんた、街道で魔獣に襲われていた所を助けて頂いたんだろう! そっちのあんたも、仕事中に怪我をしたのを治してもらったって喜んでいたじゃないか! さんっざんメルリア様にお世話になっておきながら、どの口が言うんだい!」
「い、いや、でも」
「それは‥‥」
「助けてもらった事を忘れちまうような阿呆に売る野菜は無いよ! 帰っとくれ!」

男達がそそくさと去っていくと、女性は「フン!」と鼻を鳴し、空を見上げて一つため息を吐いた。
その光景を、串焼き肉を頬張りながら見つめる一つの影。

「ふ~ん‥‥王都にいないと思ったら、そんな面白い事になってたんだねぇ」

口の端についたタレを親指で拭うと、ニヤリと笑い雑踏の中へと消えて行った。





経過観察の結果、シロさん達はお腹を壊した様子はありません。
クッションの上でスヤスヤと眠る皆さんを見ていますが、呼吸に問題も無く、表情も穏やか。
薄々感じてはいましたが‥‥もしかして、この子達は普通の動物ではないのでは?
この島に生きる動物や植物は、見た事もない程の大きさをしています。
まるで、自分が縮んだ様な錯覚をしてしまいそうな程です。
その中でもこの子達は大きさを変えられ、私の言っている事を理解しているような仕草もします。
黒いモヤモヤの影響も考えましたが、検証しようにもノルさんとノアさん以来、あのモヤモヤを見ていません。

「やはり、世界樹の影響が出ているのでしょうか」

私がここに来てから、数枚の枯れ葉を発見しています。
世界樹の為の薬を作る方法はトウドウさんが残してくださっているので、問題はありません。後は材料を集めるだけです。
必要な材料は、再生の実、クリュの葉、そしてレイルーンの泉の水‥‥聞いた事の無い物ばかりです。
トウドウさんがそれぞれの素材のある場所を地図で残してくださっているので、見つけられるはず。いや、ちょっと難しい、かも。彼女の地図は、個性的と言うか‥‥。

「緑のモコモコが世界樹だとして、大きな岩‥‥いや、山か?」

解読するのが難しそうですが、行ってみれば分かるかもしれません。
それに、ここは島だ。まぁ、なんとかなると思いましょう。
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