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無を以て追跡と
2.
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レブラを探して脚を動かす。釆原は歩いているが、手掛かりはない。
おそらくあのアイドルの追っかけたちは、『レブラが姿を現しそうだ』という情報をどこからか仕入れて駆けつけたのだろう。
まだまだ増えるに違いない。何故か、追っかけの一人が付けていた、青いブレスレットが印象に残っている。
ただ、そういう場所にレブラが好んで行くはずがないだろう。と思って、釆原はドーム内部を進む。
ドームと言っても、瀬戸宇治ドームは地上二階建てだ。
嵐道氏を偲ぶ会では会食も交えるらしいから、厨房などもあるのだろう。
実際、コック帽をかぶった人々や、葬儀屋というよりは執事風情のスーツ姿などが忙しそうである。
菊壽も奥、内部を見回っているのだろうと、釆原は思った。
手掛かりのない時に手掛かりを探すためには、どうするか。
ピンと来たものの先へ進むのが手っ取り早い。この場合、『偲ぶ』という席に相応しくないもの、そういった類のものだ。
その先に必ずレブラがいるとは限らないが。
しかし、黒い肌の葬儀屋とは。彼は名乗らなかった。
当然、釆原も名乗らなかったが。一見すると葬儀屋には見えなかった。
偲ぶ会に相応しいかもしれなかったのは、あの葬儀屋の場合、声だったかもしれない。と釆原は思った。
だが声ではレブラとは繋がらない。
白と黒が、ここでも目立つ。しばらく歩いた。
白い花。そして、白い足首。赤いベルベットの絨毯は長い。
女性がアンスリウムを持っている。視線が釆原へ向くと、彼女はそれを放ってきた。
女性の傍に後輩がいる。菊壽は同僚だが、五味田茅斗は後輩だ。
スキャンダル記事を好む記者であり、レブラの黒い面のこともよく書いていた。
レブラのことで、連絡が入りドームにいるのだということはほぼ間違いないだろうと釆原は思ったが、白い足首の淑女はレブラではない。当然だが。
淑女は泣いている。
泣いているのに白いアンスリウムとは、どういうわけだろう。
「葬儀屋が渡してきたんですよ」
「葬儀屋が?」
頷く五味田。アンスリウムは贈り物ではないらしい。
「渡したのは俺ではなくて。確か、女と一緒でした」
「何故連れの女じゃなく、彼女に渡したんだろうな」
「哀れに思われたのよ……、騙されたのよ私は! そいつに!」
泣いて怒ったこの女性は、心櫻というらしい。美野川心櫻。
スキャンダル、ここでの場合は五味田自身の、ということになるらしい。
スキャンダルを白と取るか、黒と取るか。
早速ピンときたな、と釆原は思った。
「俺と兄で、入れ替わっていたんです」
「兄って誰だ」
「実兄です。一卵性双生児なんです。俺は独身ですけれど、兄貴は嫁さんがいて」
「騙されたのよ、私は!」
「近づいてきた貴方も貴方でしょう!」
偲ぶ会の一族を巻き込みそうなスキャンダルとあっては、記事として、五味田らしいのかもしれない。
しかし、これは明らかに黒だ。留まっていても、ピンとはきたがレブラと繋がる黒ではなさそうだ。
「お前のプライベートに精通していたわけじゃないんだろう、アンスリウムを渡してきた葬儀屋は」
「ええ、もちろん。今の今まで面識はありませんでしたよ。ただ、心櫻が泣いているのを見て、アンスリウムを渡してきたんです」
泣いている女性を見たくなかったらしい、その葬儀屋は。なるほど。
「そいつも女を連れていたらしいな」
「仲良さそうでしたよ」
「どっちへ行った?」
とりあえず案内された方へ、釆原は足を向ける。
おそらくあのアイドルの追っかけたちは、『レブラが姿を現しそうだ』という情報をどこからか仕入れて駆けつけたのだろう。
まだまだ増えるに違いない。何故か、追っかけの一人が付けていた、青いブレスレットが印象に残っている。
ただ、そういう場所にレブラが好んで行くはずがないだろう。と思って、釆原はドーム内部を進む。
ドームと言っても、瀬戸宇治ドームは地上二階建てだ。
嵐道氏を偲ぶ会では会食も交えるらしいから、厨房などもあるのだろう。
実際、コック帽をかぶった人々や、葬儀屋というよりは執事風情のスーツ姿などが忙しそうである。
菊壽も奥、内部を見回っているのだろうと、釆原は思った。
手掛かりのない時に手掛かりを探すためには、どうするか。
ピンと来たものの先へ進むのが手っ取り早い。この場合、『偲ぶ』という席に相応しくないもの、そういった類のものだ。
その先に必ずレブラがいるとは限らないが。
しかし、黒い肌の葬儀屋とは。彼は名乗らなかった。
当然、釆原も名乗らなかったが。一見すると葬儀屋には見えなかった。
偲ぶ会に相応しいかもしれなかったのは、あの葬儀屋の場合、声だったかもしれない。と釆原は思った。
だが声ではレブラとは繋がらない。
白と黒が、ここでも目立つ。しばらく歩いた。
白い花。そして、白い足首。赤いベルベットの絨毯は長い。
女性がアンスリウムを持っている。視線が釆原へ向くと、彼女はそれを放ってきた。
女性の傍に後輩がいる。菊壽は同僚だが、五味田茅斗は後輩だ。
スキャンダル記事を好む記者であり、レブラの黒い面のこともよく書いていた。
レブラのことで、連絡が入りドームにいるのだということはほぼ間違いないだろうと釆原は思ったが、白い足首の淑女はレブラではない。当然だが。
淑女は泣いている。
泣いているのに白いアンスリウムとは、どういうわけだろう。
「葬儀屋が渡してきたんですよ」
「葬儀屋が?」
頷く五味田。アンスリウムは贈り物ではないらしい。
「渡したのは俺ではなくて。確か、女と一緒でした」
「何故連れの女じゃなく、彼女に渡したんだろうな」
「哀れに思われたのよ……、騙されたのよ私は! そいつに!」
泣いて怒ったこの女性は、心櫻というらしい。美野川心櫻。
スキャンダル、ここでの場合は五味田自身の、ということになるらしい。
スキャンダルを白と取るか、黒と取るか。
早速ピンときたな、と釆原は思った。
「俺と兄で、入れ替わっていたんです」
「兄って誰だ」
「実兄です。一卵性双生児なんです。俺は独身ですけれど、兄貴は嫁さんがいて」
「騙されたのよ、私は!」
「近づいてきた貴方も貴方でしょう!」
偲ぶ会の一族を巻き込みそうなスキャンダルとあっては、記事として、五味田らしいのかもしれない。
しかし、これは明らかに黒だ。留まっていても、ピンとはきたがレブラと繋がる黒ではなさそうだ。
「お前のプライベートに精通していたわけじゃないんだろう、アンスリウムを渡してきた葬儀屋は」
「ええ、もちろん。今の今まで面識はありませんでしたよ。ただ、心櫻が泣いているのを見て、アンスリウムを渡してきたんです」
泣いている女性を見たくなかったらしい、その葬儀屋は。なるほど。
「そいつも女を連れていたらしいな」
「仲良さそうでしたよ」
「どっちへ行った?」
とりあえず案内された方へ、釆原は足を向ける。
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