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無を以て追跡と
9.
しおりを挟む「女の子みたいってのは、男だったけれどそうじゃないということですか」
菊壽は僚稀に尋ねる。
「ちょっと混乱してません? あのね、女装しているっていう感じはしなかったんだけれど、うーん、おっぱいはあったのね」
「おっぱいはあった」
「出てましたからね、こう」
「出てた」
釆原と菊壽は顔を見合わせる。
「おっぱいというか、胸のようだったという可能性はないのか」
「うーんなんか、可能性の話ばっかりしてもしょうがないけれど、その子と男の他に、女の子がいっぱい来ていましたよ。今あんまりいないけれど。ついて行ったのかなあ」
「なんで?」
「それは僕が訊きたいですよ」
僚稀が言った。
釆原は辺りを見回す。
女性のような男。沢山いた女性。
白と黒ではなくて、判然としない何か。
おっぱいは明確なものだが、しかし僚稀の見たのは男だと言う。
なかなか、ピンとくるものも来ない状況だ。
「ドームに居たときさ」
菊壽が言った。
「多いと思わなかった? 女の子」
どうだったか、葬儀屋と例の美野川一族と報道陣の黒い集団は多かった。
偲ぶ会に相応しくないことのオンパレードで女性の数まで気が回らなかった。
釆原はかぶりを振る。
最初に戻ろう。自分の追っているのはレブラだと。
「女性の数より、レブラだろう」
「そらそうだけれど。いや、女の子が何故ドームに居たのかも大事だと思った、単純に」
釆原は少しずつ記憶をたどる。
青いブレスレットが頭をよぎる。
「追っかけか」
釆原が言って、菊壽はハッとしたように眼を丸くした。
「それだよ! ねえ、あの、その女の子たち追っかけだったっていう可能性はありませんか?」
僚稀まで眼を丸くした。
となればピンと来たも同然。
釆原の『ピン』もだが、追っかけの嗅覚もばかにならない。
そうか。そうだったのか。
だとすれば、数登に一杯食わされたことになる。
「レブラが葬儀屋に化けている可能性があるっていうことか。お前の考えでいけば」
走りながら菊壽が言う。
僚稀も走っている。
視界に観覧車が入る。
「乗っていないよね」
僚稀が見上げて言った。釆原は言った。
「レブラは観覧車とかそういうの怖いらしい」
「そう」
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