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無を以て追跡と
8.
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『ネタをですか』と言ってきたな。
と釆原は思って、警備員を見た。
菊壽はベンチから立って、背伸びをしている。
笑顔の警備員。と、視線を落とした。
「あ、連絡きましたよ! 騒がれている香炉の件ですね。ああー、釆原さん疑われていますよ」
『ネタ』の上に、次は名前。
「下の名前まで、出ていますか」
「出ていなくても僕分かりますよ。釆原凰介。姉と一緒の人です」
釆原は眼を丸くした。
「維鶴」
「ねえ、忘れちゃいました? 三日前会ったはずなのになー、僚稀ですよ」
率直に言って、顔が違った。
「ノーメイクなんす、今日」
言われて、少しずつ釆原の中で納得がいった。
色がだいぶ違う、例えば瞳や肌の色だ。
ノーメイクと言われれば、面影だけはどことなく、見覚えがあるような気がした。
「そんなに変わるものなのか?」
釆原は苦笑しながら言った。
「どう見せるかです、大事なのは!」
アバウトすぎる、と釆原は思った。
「で、僕、戸祢僚稀って言います」
菊壽に名刺を渡す僚稀。
菊壽も反射的に名刺を僚稀へ。
「仕事はこうですけれど、釆原さんと菊壽さんのことを疑ってはいないから、安心して。何なら、一緒に追いましょうか?」
「追うというより、接触してきた男について話して欲しい」
「うーん、そうねえ」
「数珠はしていたか」
「手元まで見なかったなあ。ただ、二人連れでしたね」
「なんかもっとこう、ありませんかね。すごく分かる特徴とか!」
菊壽が言った。
しかし『すごく分かる特徴』と言ったって、自分たちも定金から与えられた情報は虎目石と『数登』という名前だけなのだ。と釆原は思った。
とりあえず経緯を整理してみる。
・遭遇した美野川心櫻嬢は、数登から花束を受け取った
・実透宝覚は酒で潰される
・祭壇の花が足りなくなっていた
・僚稀に伝言を残して、定金春弦宛の小さなケースと花束を残していった
・今までのことに関係しているであろうは、葬儀屋の『数登』
・ただし金の香炉の盗みに関しては、関係性は不明
・連れの女と一緒らしい、五味田茅斗(後輩)いわく
「なるほどねー。随分と不可解だな」
「何か花束以外に、何か持っていたりしなかったですかね」
僚稀が言って、そこへ菊壽が尋ねた。
「そうですね、持っていたといえば持っていたかもしれないけれど、その数登さんの連れって、女の子だったんでしょう?」
釆原は眼をぱちくりする。
「何か、都合でも悪いか?」
「いや、そういうんじゃなくて、僕に接触してきた人にも連れがいたけれど、たぶん男だったと思うなー。分かんない。いや、顔が綺麗でさ、女の子みたいだったのは間違いないです」
釆原と菊壽は顔を見合わせる。
そんなことって、ある?
「お化粧の仕方とかケアとか、教えて欲しかったなあ」
僚稀が言う。
と釆原は思って、警備員を見た。
菊壽はベンチから立って、背伸びをしている。
笑顔の警備員。と、視線を落とした。
「あ、連絡きましたよ! 騒がれている香炉の件ですね。ああー、釆原さん疑われていますよ」
『ネタ』の上に、次は名前。
「下の名前まで、出ていますか」
「出ていなくても僕分かりますよ。釆原凰介。姉と一緒の人です」
釆原は眼を丸くした。
「維鶴」
「ねえ、忘れちゃいました? 三日前会ったはずなのになー、僚稀ですよ」
率直に言って、顔が違った。
「ノーメイクなんす、今日」
言われて、少しずつ釆原の中で納得がいった。
色がだいぶ違う、例えば瞳や肌の色だ。
ノーメイクと言われれば、面影だけはどことなく、見覚えがあるような気がした。
「そんなに変わるものなのか?」
釆原は苦笑しながら言った。
「どう見せるかです、大事なのは!」
アバウトすぎる、と釆原は思った。
「で、僕、戸祢僚稀って言います」
菊壽に名刺を渡す僚稀。
菊壽も反射的に名刺を僚稀へ。
「仕事はこうですけれど、釆原さんと菊壽さんのことを疑ってはいないから、安心して。何なら、一緒に追いましょうか?」
「追うというより、接触してきた男について話して欲しい」
「うーん、そうねえ」
「数珠はしていたか」
「手元まで見なかったなあ。ただ、二人連れでしたね」
「なんかもっとこう、ありませんかね。すごく分かる特徴とか!」
菊壽が言った。
しかし『すごく分かる特徴』と言ったって、自分たちも定金から与えられた情報は虎目石と『数登』という名前だけなのだ。と釆原は思った。
とりあえず経緯を整理してみる。
・遭遇した美野川心櫻嬢は、数登から花束を受け取った
・実透宝覚は酒で潰される
・祭壇の花が足りなくなっていた
・僚稀に伝言を残して、定金春弦宛の小さなケースと花束を残していった
・今までのことに関係しているであろうは、葬儀屋の『数登』
・ただし金の香炉の盗みに関しては、関係性は不明
・連れの女と一緒らしい、五味田茅斗(後輩)いわく
「なるほどねー。随分と不可解だな」
「何か花束以外に、何か持っていたりしなかったですかね」
僚稀が言って、そこへ菊壽が尋ねた。
「そうですね、持っていたといえば持っていたかもしれないけれど、その数登さんの連れって、女の子だったんでしょう?」
釆原は眼をぱちくりする。
「何か、都合でも悪いか?」
「いや、そういうんじゃなくて、僕に接触してきた人にも連れがいたけれど、たぶん男だったと思うなー。分かんない。いや、顔が綺麗でさ、女の子みたいだったのは間違いないです」
釆原と菊壽は顔を見合わせる。
そんなことって、ある?
「お化粧の仕方とかケアとか、教えて欲しかったなあ」
僚稀が言う。
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