203 / 214
無を以て追跡と
13.
しおりを挟む
浅黒い肌。
それも、ドームに入って最初に見た。
というか、接触していたのだ。
今思うと、手掛かりをと思って尋ねた誰も彼も、『浅黒い』というワードを口に出さず、しかし他の特徴は述べていたということだった。それを今、イブが言った。
自分の欲しい情報がここになって出てきたと同時に「今かよ」という思い。
特徴というのは見る人によって変わるということなのかもしれない。
ようやく自分にとって、『偲ぶ会に相応しくない』かつ自分に『相応しいもの』が得られた。
だがベンチから腰を上げられずにいる。
おそらく数登は、手に金の香炉を持って自分の前にやって来た時から、ずっと香炉と共に移動していて、そして自分たちが追って来ることも分かっていたということなのだろう。
だが目的はなんだ?
レブラと盗みを共にする意味は? 共謀している?
「その葬儀屋は、何か持っていませんでしたか?」
釆原は尋ねた。
ルイスとイブはきょとんとする。
「何かって言うと……」
「レブラが懇意にしていた師の美野川嵐道を偲ぶ会が、いま瀬戸宇治ドームで行われているということは、あなた方もあらかじめご存知ですよね」
ルイスとイブは顔を見合わせる。
「その、何か持っていたというと……」
そうルイスが言った。
「ドームの中で金の香炉が盗まれましてね、おそらくそれが今ドーム外を移動中なんですよ」
「盗まれた」
「釆原さんは、その、それをレブラが持っているって言いたいんですか? 確かに、レブラは派手なものに眼がなかったけれど……。でも……」
「どちらかと言えば、自分が考えるに、数登の方が持っている可能性が高いように思えましてね」
釆原が言って、ルイスは考え込んだ。
イブが言う。
「何か持っていたといえば持っていたかもしれないけれど、私たちにも香炉かどうかは分からなかったです。何だか小さい包みだったかもしれません」
ルイスとイブと別れ、釆原と僚稀は移動。
土地といっても開発途中のような?
捜査員が追ってきているのも分かるが、だいぶ距離はあった。
ルイスとイブは方向転換。
釆原と僚稀はひたすら追う。
人物の影。
あまり距離を詰めないように進む。
十月の午後。辺りのオレンジが強い色彩。
前方に二人。並んで歩いている。
ドームで見た奴だ。
釆原は思った。
それも、ドームに入って最初に見た。
というか、接触していたのだ。
今思うと、手掛かりをと思って尋ねた誰も彼も、『浅黒い』というワードを口に出さず、しかし他の特徴は述べていたということだった。それを今、イブが言った。
自分の欲しい情報がここになって出てきたと同時に「今かよ」という思い。
特徴というのは見る人によって変わるということなのかもしれない。
ようやく自分にとって、『偲ぶ会に相応しくない』かつ自分に『相応しいもの』が得られた。
だがベンチから腰を上げられずにいる。
おそらく数登は、手に金の香炉を持って自分の前にやって来た時から、ずっと香炉と共に移動していて、そして自分たちが追って来ることも分かっていたということなのだろう。
だが目的はなんだ?
レブラと盗みを共にする意味は? 共謀している?
「その葬儀屋は、何か持っていませんでしたか?」
釆原は尋ねた。
ルイスとイブはきょとんとする。
「何かって言うと……」
「レブラが懇意にしていた師の美野川嵐道を偲ぶ会が、いま瀬戸宇治ドームで行われているということは、あなた方もあらかじめご存知ですよね」
ルイスとイブは顔を見合わせる。
「その、何か持っていたというと……」
そうルイスが言った。
「ドームの中で金の香炉が盗まれましてね、おそらくそれが今ドーム外を移動中なんですよ」
「盗まれた」
「釆原さんは、その、それをレブラが持っているって言いたいんですか? 確かに、レブラは派手なものに眼がなかったけれど……。でも……」
「どちらかと言えば、自分が考えるに、数登の方が持っている可能性が高いように思えましてね」
釆原が言って、ルイスは考え込んだ。
イブが言う。
「何か持っていたといえば持っていたかもしれないけれど、私たちにも香炉かどうかは分からなかったです。何だか小さい包みだったかもしれません」
ルイスとイブと別れ、釆原と僚稀は移動。
土地といっても開発途中のような?
捜査員が追ってきているのも分かるが、だいぶ距離はあった。
ルイスとイブは方向転換。
釆原と僚稀はひたすら追う。
人物の影。
あまり距離を詰めないように進む。
十月の午後。辺りのオレンジが強い色彩。
前方に二人。並んで歩いている。
ドームで見た奴だ。
釆原は思った。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる