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「鳴」を取る一人
57.
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飛沫を跳ねかしていた手水舎。
午後の時間帯と、全く同じ道順。
立て看板や、何か瓦のついたいろいろ。
夜での表情。
提灯の明かり。
数登珊牙はファイルに夢中になっている。
数登だけじゃなく、慈満寺には九十九社から社員が何名か来ているという、今の状況。
いずれにしろ、遺体が出たので、動きが変わった。
杵屋依杏は、変わらずリュックサック。
依杏の眼には、新しい物が映った。
数登の肩から、提げられたバッグ。
「遺体、本堂から移動したあとは?」
釆原凰介は、数登珊牙へ尋ねる。
「?」
「そのあとは、どうするの」
「一旦、僕もそちらへ。九十九社に戻って、ですね」
桶結千鉄。
「そのあとは?」
数登。
「ええ。一応。立ち会わせていただきます、検……」
「検死に立ち会う?」
怒留湯基ノ介、眼をぱちくり。
「何の許可があって」
桶結。
「提携してる葬儀屋さんです。この人。九十九社」
「え、そうなの!? イメージじゃないな、全然」
「声がでかいですよ」
数登。
「なるほど」
「なるほどじゃないの。で、そのファイルは何さ」
「頂き物です」
「情報沢山載っているようだけれど。俺らの領分へ、首突っ込んでない?」
「個人的興味です」
「興味の域が変だよ、全く……」
桶結が顎でしゃくる。
怒留湯もそっちを見た。
「ああ。なるほど。記者も居るってわけね」
「よく私を御存知で」
釆原は、不意を突かれて苦笑い。
怒留湯。
「そのファイルさあ。慈満寺のデータベースかなんかだろう」
「そんなところでしょう」
桶結千鉄は補足。
憚らずにファイルを捲る、数登珊牙は相変わらず。
依杏は、「あーあ」と思った。
岩撫衛舜。
先頭に居るのに回って来て、ファイルを覗いた。
「いやあ私の情報まで載っていますねえ、参ったな」
「いやいや。そうじゃない。問題はそこじゃない」
怒留湯はかぶりを振った。
「何で記者がここにいるんだよ」
「葬儀屋への協力で」
釆原は言う。
「葬儀屋への協力ってなんだよ」
「我々とは別の観点から、ということらしいですが」
と桶結。
「ツッコミどころがありすぎて、どこから突っ込んだらいいんだろうな」
と怒留湯。
「全部管轄外じゃないか」
「刑事さん」
と岩撫。
「少なくとも数登さんは、今、新来でここへ来られている。あなたがたよりは、うちの寺の事情に明るいと思われますよ」
ニコニコして言う。
怒留湯。
「あのさあ。さすがにね。慈満寺でこう、人が沢山死んでってなるとね。事件性もあるわけですよ。必然的に。そこんとこ、管轄外が首突っ込んでくると、俺ら困るのね」
「それでもです。数登さんは葬儀屋ですし。私、僧侶」
「そこ関係ないから」
怒留湯は改めて、釆原に。
「記者殿へ渡す情報は、俺らとしては、何もない。そこんとこ、ハッキリ認識しとけよ。場合によっちゃ、捜査めちゃめちゃになっちゃうんだから。分かったね」
釆原は苦笑。
「ええ」
午後の時間帯と、全く同じ道順。
立て看板や、何か瓦のついたいろいろ。
夜での表情。
提灯の明かり。
数登珊牙はファイルに夢中になっている。
数登だけじゃなく、慈満寺には九十九社から社員が何名か来ているという、今の状況。
いずれにしろ、遺体が出たので、動きが変わった。
杵屋依杏は、変わらずリュックサック。
依杏の眼には、新しい物が映った。
数登の肩から、提げられたバッグ。
「遺体、本堂から移動したあとは?」
釆原凰介は、数登珊牙へ尋ねる。
「?」
「そのあとは、どうするの」
「一旦、僕もそちらへ。九十九社に戻って、ですね」
桶結千鉄。
「そのあとは?」
数登。
「ええ。一応。立ち会わせていただきます、検……」
「検死に立ち会う?」
怒留湯基ノ介、眼をぱちくり。
「何の許可があって」
桶結。
「提携してる葬儀屋さんです。この人。九十九社」
「え、そうなの!? イメージじゃないな、全然」
「声がでかいですよ」
数登。
「なるほど」
「なるほどじゃないの。で、そのファイルは何さ」
「頂き物です」
「情報沢山載っているようだけれど。俺らの領分へ、首突っ込んでない?」
「個人的興味です」
「興味の域が変だよ、全く……」
桶結が顎でしゃくる。
怒留湯もそっちを見た。
「ああ。なるほど。記者も居るってわけね」
「よく私を御存知で」
釆原は、不意を突かれて苦笑い。
怒留湯。
「そのファイルさあ。慈満寺のデータベースかなんかだろう」
「そんなところでしょう」
桶結千鉄は補足。
憚らずにファイルを捲る、数登珊牙は相変わらず。
依杏は、「あーあ」と思った。
岩撫衛舜。
先頭に居るのに回って来て、ファイルを覗いた。
「いやあ私の情報まで載っていますねえ、参ったな」
「いやいや。そうじゃない。問題はそこじゃない」
怒留湯はかぶりを振った。
「何で記者がここにいるんだよ」
「葬儀屋への協力で」
釆原は言う。
「葬儀屋への協力ってなんだよ」
「我々とは別の観点から、ということらしいですが」
と桶結。
「ツッコミどころがありすぎて、どこから突っ込んだらいいんだろうな」
と怒留湯。
「全部管轄外じゃないか」
「刑事さん」
と岩撫。
「少なくとも数登さんは、今、新来でここへ来られている。あなたがたよりは、うちの寺の事情に明るいと思われますよ」
ニコニコして言う。
怒留湯。
「あのさあ。さすがにね。慈満寺でこう、人が沢山死んでってなるとね。事件性もあるわけですよ。必然的に。そこんとこ、管轄外が首突っ込んでくると、俺ら困るのね」
「それでもです。数登さんは葬儀屋ですし。私、僧侶」
「そこ関係ないから」
怒留湯は改めて、釆原に。
「記者殿へ渡す情報は、俺らとしては、何もない。そこんとこ、ハッキリ認識しとけよ。場合によっちゃ、捜査めちゃめちゃになっちゃうんだから。分かったね」
釆原は苦笑。
「ええ」
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