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一章 真紅の王冠(レグルス編)
13.恐ろしい企み
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***
薔薇園に着くなり、レグルスは俺に手を差し出した。
「足元が少し歩きづらいから」
確かに歩道は石畳になっていて整備されているが、ヒールの高いこの靴では歩きにくそうだ。
俺はレグルスの手を取り、薔薇園を散策した。
薔薇園の薔薇はそれはそれは綺麗だった。薔薇のアーチが長く続いていたり、俺の背丈より高い薔薇の生垣が幾つもあったりと、まるで薔薇でできた迷路に迷い込んだようだ。
暫く歩いて、護衛の姿が視界から消えていることに気付く。
俺は、庭園までの道のりでレグルスは何かをランブロスに頼んでいたことを思い出す。あの時、ランブロスはレグルスのお願いごとを聞くなり、小さく噴き出し、ニヤニヤと笑っていた。
くだらないことをお願いしているのだろうと思っていたが、まさかこれのことだろうか。
どんだけ二人きりになりたいんだよ。エロガキか。
そう思う反面、俺にも身に覚えのあるお願いだったので俺は気付かないふりをすることにした。男の沽券にかかわる問題だもんな。
見えないだけで、きっと視界の外では護衛が見守っているに違いない。
「今年の薔薇は一段と香りが良いな」
レグルスは満足気に呟く。
レグルスの言う通り、秋咲きの薔薇は春の薔薇とは違い、小ぶりであるが、少し離れていても濃厚な香りを感じる。
「ええ、とてもいい香りがしますね」
オブシディアン家の薔薇も今年のものは特にとても良い香りがしていた。
先日、使用人に教えてもらってモイストポプリなるものを作ってみたことを思い出す。
塩と薔薇の花びらを使って作るポプリで、その名の通り、乾燥させないポプリだ。入浴剤にしてもいいし、お部屋にポプリとして置いてもよいというから、お母様やメリーナにあげようと思って、たくさんの小瓶に作ったのだ。
上手くいったらレグルスに分けてやってもいいかもしれない。
「ん? こんなところに何故、人が……」
レグルスが何かに気付いたように目を細めた。
確かに男女の声がする。
レグルスの言う、こんなときに何故、ここに人がいるのだろうというのは当然すぎる疑問だ。
パーティーの真っ最中に男女が二人きり――逢い引きか何かだろうか。下世話だが、俺はそんなことを考えて突っ立っていた。
「あれは……」
レグルスはさっと物陰に身を隠した。俺もレグルスに倣って物陰に隠れる。
俺たちは耳を澄ませた。
「誘拐するなら今日だわ、テオ」
女性は男性に向かって迫るように言った。
女性は金髪碧眼の美女だった。アルキオーネにはない柔らかそうな胸のふくらみを強調するようなデザインのドレスを着ていた。彼女は妖艶に微笑む。
「無理だよ、デネボラ」
テオと呼ばれた男性は困ったような顔をして首を振った。女性と同じく金髪の碧眼。くすんだ金の髪が首を振るたびに揺れる。
「あら、あの時と一緒よ? 人がいればいるほど、警備は手薄になる。分かっているでしょう?」
「確かに城の警備は手薄……いやいや、やっぱりダメだよ」
「大丈夫よ! ね?」
デネボラはテオにすり寄るようにして囁く。
おいおい、なんて物騒な話をしているんだ。冗談だろう。
誘拐するとか、しないとか、こんな綺麗な薔薇園で犯罪の話なんかすることじゃないだろう。
俺の背中に冷たいものが走った。
「でも……無理だってば」
「だから、ごろつきを雇ったんでしょう? やることなんて、そのごろつきにレグルスを渡すことだけ。ちょっと一人でいるときを狙って連れ出すだけよ。簡単だわ」
俺は驚いてレグルスの方を見た。レグルスは真っ青な顔をして唇を震わせていた。
俺は慌ててレグルスの耳を塞ぐ。
しかし、時既に遅し。レグルスの表情は凍りついたままだ。自分の誘拐計画をばっちり聞いちゃったのだから当然の反応とも言える。
こういうときはどうしたらいいんだ。俺は困ったまま、レグルスの耳を塞ぎ続けた。
「母上……」
レグルスの震える唇から辛うじて漏れ出たのはその一言だった。
俺は女性をじっくりと眺めた。あの写真のレグルスのお母様とは似ても似つかない。これはもしかしなくても、レグルスの義理の母というやつだろう。
そう言えば、ご令嬢たちの噂で「レグルス王子に弟ができる」と言っていたな。まさか、血の繋がった息子ができたことでレグルスが邪魔になったとか言うんじゃないだろうな。
あり得る。前世のときだって、「義母や義父が自分の子どもができたと同時にそれまで可愛がっていたはずの義理の子どもを虐待したり、殺したりする話」がニュースになっていたじゃないか。
その瞬間、記憶が蘇る。
『レグルスは信頼していた義理の母親に裏切られて殺されかけるの。だから女性が信じられなくなるのよ』
妹の声が頭の中に響く。
『勿論、実行犯と黒幕である義理の母親はすぐに捕まってしまうわ。レグルスは自分の弟になるはずのお腹の子だけは助けて欲しいと懇願するの。でもね、弟ごと義理の母親は処刑されてしまう。それで大切な人はつくらないとレグルスは決めるわけ』
おいおい、なんでこんな大切なこと今頃になって思い出すんだよ。分かっていたらもっと早く色々阻止するための行動が出来ただろうに。
俺はレグルスの手を掴んだ。レグルスの手は冷え切っていた。
「あ、あれは……母上とその弟だ……」
レグルスはそう苦しそうに呟いた。
「分かってます。レグルス様、早く、護衛のところへ行きましょう」
俺は小さく、レグルスに耳打ちした。急いでここを逃げ出さなければ、レグルスは大変な目に遭ってしまう。
もしも、本当にこの世界があのゲームに繋がっているなら、ここで俺たちは死ぬことはないはずだ。でも、このまま、誘拐され、殺されかけて、ゲームの設定通りにことが進めば、レグルス王子は暴君俺様DVクソ野郎になってしまう。
それは避けたい。だって、俺はコイツにまだ勝ってないんだから。DVクソ野郎に勝ったって、俺は全然嬉しくない。
「あら?」
デネボラと呼ばれていた女性が何かに気付いたようにこちらを向く。
「ウェントゥス、激しく吹け!」
咄嗟に小さな声で呪文を唱える。
激しい風が薔薇の枝を揺らす。薔薇の花弁が辺りに激しく舞った。風に舞う花弁はとても綺麗だったが、それを見ている余裕などない。
デネボラとテオは激しい風に腕で顔を隠した。
「レグルス様、この隙に」
俺は慌ててレグルスの手を引く。そして、音を立てないように走り出す。
目の前に黒い影が現れる。俺はぶつかりそうになって急に立ち止まった。
「おい!」
黒い影は男だった。大きな男が威嚇するように声を上げて、立ち塞がる。なんだこのスライムみたいな腹をした男は。
俺はレグルスを庇うようにして、大男とレグルスの間に立つ。そして、いつでも魔法で応戦できるように頭の中で攻撃に使えそうな魔法はないかと考えながら、男を睨んだ。
嗚呼、ダメだ。俺の使える魔法はとても弱く、攻撃力もほとんどない。しかし、怯ませて、隙をつくることくらいはできるかもしれない。なんとかやってみるしかない。
「あら? やっぱりレグルスじゃない」
背後で妙に色気のあるデネボラの声がした。
振り返ると、背後には金の髪を掻きあげるデネボラと、おどおどと辺りを見回すテオがいた。
前後を挟まれて、俺たちは逃げる方向を失った。
こうなったら、この方法しかない。俺は息を吸った。ここで叫べば、すぐに護衛か警備兵が来るはずだ。
「きゃー!」
信じられないことに俺よりの先にデネボラが叫ぶ。
俺とレグルスは茫然としてデネボラを見つめた。
なんで自分の首を絞めるような行動を?
「どうしました?」
すぐにランブロスの大きな声が返ってきた。
やっぱり近くにいたんだ。俺はほっとして声を返そうとする。しかし、それよりも大きい声でデネボラが叫んだ。
「ごめんなさい! 虫がいて驚いてしまっただけなの!」
やられた! 俺の顔から血の気が引いていくのが分かった。コイツはこれを狙っていたんだ。
「ち、違……」
俺は慌てて声を出そうとするが、恐怖と緊張のせいか思った声量が出ない。
「その声は王妃! 大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。本当に小さな虫だったから何の問題もないわ」
にやりと片方の口角を上げ、デネボラは悪そうな笑みを浮かべた。
「そうですか。虫ならよかったです」
ランブロスは安心したように叫ぶ。
「本当に小さなお邪魔虫……」
デネボラは俺を見てそう呟く。
はいはい。どうせ、俺はお前らからすれば、レグルス王子の誘拐を邪魔する小さな小蠅みたいなもんだよ。
それにしても、今の状況は非常にまずい。これでは、もう一度叫んだところでどうせ虫だろうと思われるだけに違いない。ここは自分たちの力で切り抜けなければならないようだ。
もっと実践的な魔法の使い方を勉強しておけばよかったと思うが、今更すぎる。
レグルスはと言えば、さっきのショックからまだ立ち直れていない様子だった。顔色が悪く、カタカタと震えている。
今、レグルスを頼ろうというのは酷な話だ。
俺は覚悟を決めた。
「ルークス……!」
「ドルミーレ、ゆっくりおやすみ、おちびさんたち」
俺が目眩しの魔法を使おうと口を開いた途端、デネボラがそう呟く。
瞼がだんだん重くなっていく。眠りたくないのに体から力が抜けていく。抗えない。
寝ている間に俺もレグルスも殺されませんように。俺はそう願いながら、地面に倒れこんだ。
薔薇園に着くなり、レグルスは俺に手を差し出した。
「足元が少し歩きづらいから」
確かに歩道は石畳になっていて整備されているが、ヒールの高いこの靴では歩きにくそうだ。
俺はレグルスの手を取り、薔薇園を散策した。
薔薇園の薔薇はそれはそれは綺麗だった。薔薇のアーチが長く続いていたり、俺の背丈より高い薔薇の生垣が幾つもあったりと、まるで薔薇でできた迷路に迷い込んだようだ。
暫く歩いて、護衛の姿が視界から消えていることに気付く。
俺は、庭園までの道のりでレグルスは何かをランブロスに頼んでいたことを思い出す。あの時、ランブロスはレグルスのお願いごとを聞くなり、小さく噴き出し、ニヤニヤと笑っていた。
くだらないことをお願いしているのだろうと思っていたが、まさかこれのことだろうか。
どんだけ二人きりになりたいんだよ。エロガキか。
そう思う反面、俺にも身に覚えのあるお願いだったので俺は気付かないふりをすることにした。男の沽券にかかわる問題だもんな。
見えないだけで、きっと視界の外では護衛が見守っているに違いない。
「今年の薔薇は一段と香りが良いな」
レグルスは満足気に呟く。
レグルスの言う通り、秋咲きの薔薇は春の薔薇とは違い、小ぶりであるが、少し離れていても濃厚な香りを感じる。
「ええ、とてもいい香りがしますね」
オブシディアン家の薔薇も今年のものは特にとても良い香りがしていた。
先日、使用人に教えてもらってモイストポプリなるものを作ってみたことを思い出す。
塩と薔薇の花びらを使って作るポプリで、その名の通り、乾燥させないポプリだ。入浴剤にしてもいいし、お部屋にポプリとして置いてもよいというから、お母様やメリーナにあげようと思って、たくさんの小瓶に作ったのだ。
上手くいったらレグルスに分けてやってもいいかもしれない。
「ん? こんなところに何故、人が……」
レグルスが何かに気付いたように目を細めた。
確かに男女の声がする。
レグルスの言う、こんなときに何故、ここに人がいるのだろうというのは当然すぎる疑問だ。
パーティーの真っ最中に男女が二人きり――逢い引きか何かだろうか。下世話だが、俺はそんなことを考えて突っ立っていた。
「あれは……」
レグルスはさっと物陰に身を隠した。俺もレグルスに倣って物陰に隠れる。
俺たちは耳を澄ませた。
「誘拐するなら今日だわ、テオ」
女性は男性に向かって迫るように言った。
女性は金髪碧眼の美女だった。アルキオーネにはない柔らかそうな胸のふくらみを強調するようなデザインのドレスを着ていた。彼女は妖艶に微笑む。
「無理だよ、デネボラ」
テオと呼ばれた男性は困ったような顔をして首を振った。女性と同じく金髪の碧眼。くすんだ金の髪が首を振るたびに揺れる。
「あら、あの時と一緒よ? 人がいればいるほど、警備は手薄になる。分かっているでしょう?」
「確かに城の警備は手薄……いやいや、やっぱりダメだよ」
「大丈夫よ! ね?」
デネボラはテオにすり寄るようにして囁く。
おいおい、なんて物騒な話をしているんだ。冗談だろう。
誘拐するとか、しないとか、こんな綺麗な薔薇園で犯罪の話なんかすることじゃないだろう。
俺の背中に冷たいものが走った。
「でも……無理だってば」
「だから、ごろつきを雇ったんでしょう? やることなんて、そのごろつきにレグルスを渡すことだけ。ちょっと一人でいるときを狙って連れ出すだけよ。簡単だわ」
俺は驚いてレグルスの方を見た。レグルスは真っ青な顔をして唇を震わせていた。
俺は慌ててレグルスの耳を塞ぐ。
しかし、時既に遅し。レグルスの表情は凍りついたままだ。自分の誘拐計画をばっちり聞いちゃったのだから当然の反応とも言える。
こういうときはどうしたらいいんだ。俺は困ったまま、レグルスの耳を塞ぎ続けた。
「母上……」
レグルスの震える唇から辛うじて漏れ出たのはその一言だった。
俺は女性をじっくりと眺めた。あの写真のレグルスのお母様とは似ても似つかない。これはもしかしなくても、レグルスの義理の母というやつだろう。
そう言えば、ご令嬢たちの噂で「レグルス王子に弟ができる」と言っていたな。まさか、血の繋がった息子ができたことでレグルスが邪魔になったとか言うんじゃないだろうな。
あり得る。前世のときだって、「義母や義父が自分の子どもができたと同時にそれまで可愛がっていたはずの義理の子どもを虐待したり、殺したりする話」がニュースになっていたじゃないか。
その瞬間、記憶が蘇る。
『レグルスは信頼していた義理の母親に裏切られて殺されかけるの。だから女性が信じられなくなるのよ』
妹の声が頭の中に響く。
『勿論、実行犯と黒幕である義理の母親はすぐに捕まってしまうわ。レグルスは自分の弟になるはずのお腹の子だけは助けて欲しいと懇願するの。でもね、弟ごと義理の母親は処刑されてしまう。それで大切な人はつくらないとレグルスは決めるわけ』
おいおい、なんでこんな大切なこと今頃になって思い出すんだよ。分かっていたらもっと早く色々阻止するための行動が出来ただろうに。
俺はレグルスの手を掴んだ。レグルスの手は冷え切っていた。
「あ、あれは……母上とその弟だ……」
レグルスはそう苦しそうに呟いた。
「分かってます。レグルス様、早く、護衛のところへ行きましょう」
俺は小さく、レグルスに耳打ちした。急いでここを逃げ出さなければ、レグルスは大変な目に遭ってしまう。
もしも、本当にこの世界があのゲームに繋がっているなら、ここで俺たちは死ぬことはないはずだ。でも、このまま、誘拐され、殺されかけて、ゲームの設定通りにことが進めば、レグルス王子は暴君俺様DVクソ野郎になってしまう。
それは避けたい。だって、俺はコイツにまだ勝ってないんだから。DVクソ野郎に勝ったって、俺は全然嬉しくない。
「あら?」
デネボラと呼ばれていた女性が何かに気付いたようにこちらを向く。
「ウェントゥス、激しく吹け!」
咄嗟に小さな声で呪文を唱える。
激しい風が薔薇の枝を揺らす。薔薇の花弁が辺りに激しく舞った。風に舞う花弁はとても綺麗だったが、それを見ている余裕などない。
デネボラとテオは激しい風に腕で顔を隠した。
「レグルス様、この隙に」
俺は慌ててレグルスの手を引く。そして、音を立てないように走り出す。
目の前に黒い影が現れる。俺はぶつかりそうになって急に立ち止まった。
「おい!」
黒い影は男だった。大きな男が威嚇するように声を上げて、立ち塞がる。なんだこのスライムみたいな腹をした男は。
俺はレグルスを庇うようにして、大男とレグルスの間に立つ。そして、いつでも魔法で応戦できるように頭の中で攻撃に使えそうな魔法はないかと考えながら、男を睨んだ。
嗚呼、ダメだ。俺の使える魔法はとても弱く、攻撃力もほとんどない。しかし、怯ませて、隙をつくることくらいはできるかもしれない。なんとかやってみるしかない。
「あら? やっぱりレグルスじゃない」
背後で妙に色気のあるデネボラの声がした。
振り返ると、背後には金の髪を掻きあげるデネボラと、おどおどと辺りを見回すテオがいた。
前後を挟まれて、俺たちは逃げる方向を失った。
こうなったら、この方法しかない。俺は息を吸った。ここで叫べば、すぐに護衛か警備兵が来るはずだ。
「きゃー!」
信じられないことに俺よりの先にデネボラが叫ぶ。
俺とレグルスは茫然としてデネボラを見つめた。
なんで自分の首を絞めるような行動を?
「どうしました?」
すぐにランブロスの大きな声が返ってきた。
やっぱり近くにいたんだ。俺はほっとして声を返そうとする。しかし、それよりも大きい声でデネボラが叫んだ。
「ごめんなさい! 虫がいて驚いてしまっただけなの!」
やられた! 俺の顔から血の気が引いていくのが分かった。コイツはこれを狙っていたんだ。
「ち、違……」
俺は慌てて声を出そうとするが、恐怖と緊張のせいか思った声量が出ない。
「その声は王妃! 大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫よ。本当に小さな虫だったから何の問題もないわ」
にやりと片方の口角を上げ、デネボラは悪そうな笑みを浮かべた。
「そうですか。虫ならよかったです」
ランブロスは安心したように叫ぶ。
「本当に小さなお邪魔虫……」
デネボラは俺を見てそう呟く。
はいはい。どうせ、俺はお前らからすれば、レグルス王子の誘拐を邪魔する小さな小蠅みたいなもんだよ。
それにしても、今の状況は非常にまずい。これでは、もう一度叫んだところでどうせ虫だろうと思われるだけに違いない。ここは自分たちの力で切り抜けなければならないようだ。
もっと実践的な魔法の使い方を勉強しておけばよかったと思うが、今更すぎる。
レグルスはと言えば、さっきのショックからまだ立ち直れていない様子だった。顔色が悪く、カタカタと震えている。
今、レグルスを頼ろうというのは酷な話だ。
俺は覚悟を決めた。
「ルークス……!」
「ドルミーレ、ゆっくりおやすみ、おちびさんたち」
俺が目眩しの魔法を使おうと口を開いた途端、デネボラがそう呟く。
瞼がだんだん重くなっていく。眠りたくないのに体から力が抜けていく。抗えない。
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