エンジニア転生 ~転生先もブラックだったので現代知識を駆使して最強賢者に上り詰めて奴隷制度をぶっ潰します~

えいちだ

文字の大きさ
49 / 105
第三章

49:アルバイトを募集しよう(1)

しおりを挟む
 魔石エンジンが火花を散らし、牧歌的な草原を駆ける。

 ガタガタと車両に揺られる中、錬は満面の笑みを浮かべていた。

「大収穫だったな……!」

 荷台に大量に積み上げられているのはイラクサの束である。

 あれから荷車に魔石エンジンを搭載した軽トラックのような乗り物を作り、魔樹の森へ向かったのだが、まさしくそこはイラクサの宝庫だったのだ。

「森の入り口付近だけでも山ほど生えてたねぇ」

「時間をおけばまた生えてくるだろうし、これならしばらく困らないぞ」

 錬とジエットが喜び勇んで王都の貧民街へ向かうと、パム達が唖然とした顔で出迎えた。

「あんちゃん、こりゃまたすげーな……。どっから採ってきたんだ?」

「魔樹の森だよ。これだけあれば糸が作り放題だな」

「いや作り放題ではあるけど、さすがに多くねーか……?」

「こんなの序の口だぞ。外周部だけでもたくさん生えてたから、毎日でもこの量を採って来られる」

「これが毎日って、どうすんだ? アタイらだけじゃ手に負えないぞ」

 パムはジトッとした目でイラクサの束を見つめている。さすがに採りすぎたようだ。

「じゃあ人手を募集するか」

「あ、それならここの人達に募集をかけたらどうかな?」

 ジエットが手を挙げてそんな事を言い出した。

「貧民街で募集するのか?」

「うん。ここにはお金に困ってろくにご飯が食べられない人達も大勢いると思うからね」

「その人達を雇うのか。まぁ、悪くはない手だな」

 日々の食にさえありつけない人々に仕事をしてもらい、報酬を渡す。まさにウィンウィンの関係だ。

 しかしそう思わない者もいた。

 パム達だ。

「無理じゃない?」

「だよねー……」

「やめといた方がいいんじゃねーか……?」

 口々に否定的な声が上がる。

 反対しているというよりは、現実的じゃないと言っているようだ。

「どうしてだ?」

「だってあいつらが手伝うとは思えねーし」

「それはやってみないとわからないだろ」

「わかるんだよ。首輪付きのオマエらには無理だぜ」

「奴隷の首輪をしてるとだめなのか?」

 パムはため息を漏らしてうなずく。

「貧民街の連中は基本的に他人を信用しねーのさ。皆騙され、奪われ、搾取された果てに何もかも失ってここに流れ着いた奴らだからな」

「なるほど……」

 そういう事情であれば錬達はまず信用されないだろう。首輪付きは、主人の手先も同然なのだ。

「でも一人くらい応じてくれる人がいるかもしれない。今は人手が必要なんだ」

「……まぁ止めはしねーよ。おすすめもしねーけどな」





 そんなこんなで始めた募集だが、パムの言う通り成果はかんばしくなかった。

「糸作りのお仕事、手伝ってくれませんか? もちろん報酬は支払います」

「……」

「イラクサから繊維を取り出す作業員を募集してます!」

「……」

 錬やジエットの呼びかけに、しかし誰一人として返事をしない。

 皆うさんくさそうな目をしながらそそくさと去って行くだけだ。

 数十人に声をかけたところで、錬は一旦パム達のところへ戻った。

「無理だった……」

「だから言ったろ。アタイも何人か声をかけてみたけど、雇い主が首輪付きって話したら即回れ右だったぜ」

「パムちゃんも声かけしてくれたんだ。ありがとね」

「べ、別にオマエらのためじゃねーぞ! アタイらだけじゃあの量のイラクサを処理しきれねーから言っただけで……」

 髪を指でくるくるするパム。なんともわかりやすい獣人娘である。

「平民街で募集すれば人は集まると思うが、どうする?」

「う~ん……」

 ジエットはうなずかない。まだ諦めていないようだ。

「ただ声をかけるんじゃなくて、ご飯を提供すればやろうって気になる人も出てくれるんじゃないかな」

「炊き出しでもして募集するのか?」

「うん。皆お腹が減ってるからピリピリするんだよ。満腹になれば私達の話を聞いてもいいって思うんじゃない?」

「ふむ……胃袋に訴えかけるわけか」

 実際それでパム達は協力してくれるようになったのだ。可能性はあるかもしれない。

 しかしもっと簡単な方法がある中で、なぜという疑問も生じる。

「普通に平民街で募集した方が金がかからないと思うけど、貧民街にこだわる理由があるのか?」

「もちろん。心情の面でも、利害の面でもね」

「どんな利害がある?」

「貧民街の人達を味方に付ければ、今後私達にとって大きな後ろ盾になり得るからだよ。錬の魔石銃があればね」

「……なるほど。魔力なしでも魔法が使える技術を持つ俺達だからこそ、か」

 ここヴァールハイト王国において、能力の大小はあれど平民以上は皆魔法使いである。

 それに対して貧民街の者達は魔力を持たないか、あっても平均未満の落伍者が大多数を占める。

 だがそんな貧民達でも、魔石銃を持てば魔法使いと互角以上に渡り合えるのだ。

「あとは心情だけど、これもレンならわかるんじゃない?」

「そりゃまぁ……俺達だって底辺の生活を強いられてきたしな」

 貧民達と錬の違いは、這い上がれるだけの知識を持っていたかどうかの一点だけだ。もしそれがなければ錬は今も鉱山奴隷をしていたか、あるいは骸を晒していたに違いない。

 苦境の中にいる彼らを助けられるものなら助けたいという気持ちは錬にだってある。そしてそれはジエットも同じなのだ。

「……わかった。じゃあまずは大鍋と食材と薪を買って来よう。集まった人達全員に行き渡るよう多めにな」

「うん!」

「アタイらは?」

「もちろん君らの分も用意するぞ」

「そ、そうじゃねーよ! いや食べて良いなら食べるけど! じゃなくて手伝う事はあるかって言ってんだよ!」

「はは……悪い悪い。じゃあパム達は貧民街の人達に炊き出しがある事を伝えてもらえるか?」

「それくらいお安いご用だぜ!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...