エンジニア転生 ~転生先もブラックだったので現代知識を駆使して最強賢者に上り詰めて奴隷制度をぶっ潰します~

えいちだ

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第四章

77:月下無双の最強賢者(1)

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 地下牢を出た先は砦のような建物の敷地内だった。

 月明かりに照らされた石壁が四方をぐるりと覆い、外部からの侵入者を阻んでいる。夜の涼しい風が頬を撫で、人々の話し声が遠く耳に届いている。

 扉の外には衛兵が二人立っており、錬と目が合った。

「なっ……大賢者が外に!?」

「貴様、一体どうやって――ぐあっ!?」

 杖剣を向けられ、とっさに魔光石銃で反撃する。

 すると魔法の石つぶてが連射され、衛兵が二人まとめて吹っ飛んだ。

「連射機能がないのに連射された……?」

 想定外の動作に驚き、錬は木のスプーンで作った即席の魔光石銃に目を落とす。

 魔光石が蓄えられる魔力量はクズ魔石程度である。たとえ発振器を付けても連射は本来できないはずだし、今し方魔法を撃って魔力を消費したばかりだ。なのに魔光石は白く強い輝きを帯びていた。

(……そうか! 月の光を浴びている間は常に魔力が補充されるから、使って減って補充されてを高速で繰り返す発振現象が起きてるのか)

 つまり月光の下で戦う限り、連射し放題という事だ。

 ただし無尽蔵の魔力は月夜の間だけ。ならば夜が明ける前に急いで敵地を抜けなければならない。

(こうなると建物や物陰には入れないな……。まぁ壁をぶっ壊しながら行くか)

 錬は砦の石壁に魔光石銃を連射し、破壊しながら突き進む。方角なんてわからないが、とにかく砦の外へ出る事が先決だ。

 しかしそれだけ派手に行動すれば、当然敵もすぐに気が付く。

「だ、大賢者が牢を出ているぞ!?」

「そんなバカな!? 魔法具はすべて取り上げたはずじゃなかったのかっ!?」

「と、とにかく奴を捕らえるぞっ!」

 衛兵達が錬に向かって魔法を放った。

 火球や風の衝撃波、岩石の矢に水の刃が集中砲火され、そのことごとくを魔光石シールドが自動的に弾いてゆく。

(自分で作っておいて何だが、これはもうチート級だな……)

 次々と消滅する敵の魔法を前にして錬は苦笑する。

 実際のところ、魔光石センサーは魔法しか感知できない。物理攻撃は手動で対応しないといけないため矢を一番警戒していたわけだが、なぜか誰も射ってこないのだ。

(まぁお手軽な遠距離攻撃魔法がある上に、矢は防御魔法で楽々弾かれる世界だからな。全部手作りなら製造コストもバカにならないし、あんまり使われてないのかもしれない)

 考えている間も魔法は延々と放たれている。何もせずただ立っているだけなのに、全くダメージを受ける気がしない。

 通行の邪魔になる衛兵達を魔光石銃で薙ぎ払い、散歩でもするように悠々と歩く。

 そんな錬を見て、衛兵達は震え上がっていた。

「魔法が効かねぇぞ!? 一体何枚障壁を張ってやがるッ!?」

「百か二百か……いやそれ以上なのか!?」

「ば、化け物め……っ!!」

 魔力が尽きて恐れおののく彼らの前を堂々と進み、月の光に照らされた道をゆく。

 その時、侍女のメリナが駆け寄ってきた。

 肩で息をしながら錬を睨んでくる。それは敵意というより、むしろ困惑といった表情に錬には見えた。

「レン様、これはどういう事ですか!?」

「どうって脱獄だよ。それ以外ないだろ」

「先ほどお話しした事も踏まえて、脱獄するんですか!?」

「ああ。俺はジエットのところへ戻らないといけないからな」

「……一つ、聞かせてください。テラミス様の何がいけなかったのですか?」

「何も」

 メリナの目が丸く見開かれた。

「何も……? 何も悪くないのに、あなたはテラミス様の元を去るというのですか……?」

「そうだ」

 答えた途端、メリナの目に怒りの感情が宿った。

「あぁぁぁぁぁぁ――――――ッ!!!!」

 叫び声と共に炎の円輪がフルオート掃射され、そのすべてを魔光石シールドが無効化する。

 メリナが魔石銃を撃ったのだ。

 この事態を察して、錬から没収した武装を持ち出したのだろう。

 掃射は止まない。高速で炎の魔法が放たれ、寸分違わぬタイミングで生成された障壁とぶつかり光の粒子を散らしていく。

 だが月明かりの下の魔光石とは違い、魔石の魔力は有限だ。やがて魔石銃の魔力が尽き、射撃は止まった。

「気が済んだか?」

「くっ……」

 悔しげに顔を歪め、メリナは魔石銃を下ろす。そして力なく地べたにくずおれた。

「あなたとなら……わかり合えるかもしれないと思ったのに……」

「それは期待させて悪かったな」

 夜空に浮かぶ丸い月を仰ぎ、無表情のままに錬は答える。 

「孤児院を救った話は人としても王族としても素晴らしい行為だと思うし、君がテラミス王女を慕う気持ちも理解できる。魔力なしを差別せず、能力を見て重用してくれるなら、きっとここは居心地の良い場所なんだろう。でもそれは俺がジエットを裏切る理由にはならない」

 彼女に背を向け、歩き出す。

 野太い声が聞こえたのはそんな時だ。

「――エルト・ル・ヴェア・ソディオ・フロギス・ウィンダーレッ!!」

 怒声にも似た詠唱が轟き、一人の巨漢が豪炎と暴風を宿す杖剣を抜き放つ。

 眼光鋭き紅の騎士――禿頭とくとうの騎士団長ゼノンがそこにいた。
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