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第五章
95:因縁
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(なぜだ? なぜ魔石砲が効かぬ!?)
ルード=バエナルド伯爵は取り乱していた。
魔石エンジンを解析し、錬が開発した魔石銃が魔石と火炎石で起きる爆発を兵器に応用したものと気付いて量産に成功したのが魔石砲である。
その威力は凄まじく、少々の障壁魔法なら一撃で粉砕する破壊力を誇っていたはずだ。
ならばその魔石砲を雨あられのように撃ち込まれて平然としている錬は、一体何者なのか?
考えている間も錬は歩いてくる。土の魔弾で兵士どもを蹴散らし、吹き飛ばす。
「ええい、とにかく撃て! 魔石がカラになるまで撃ちまくれぃ!」
伯爵の掛け声で兵士達が砲門のレバーを引いた。
指向性の爆炎が怒涛のごとく降り注ぐが、魔法障壁によりことごとく消滅していく。
「いくら撃っても効かないぞ!?」
「一体何枚障壁を張っているんだ!?」
「も、もしやあやつには火属性魔法への耐性のようなものがあるのやもしれぬ! 他の属性で攻めよ!」
「はっ!」
魔法兵が詠唱し、風や土、水の槍やつぶて、衝撃波などが飛ばされる。
それだけではない。様々な属性が付与された剣で兵士達が一斉に斬りかかった。袈裟斬り、両断、横薙ぎ、ありとあらゆる角度から斬り、突き刺し、果ては魔法剣を投擲する。
だがそれらもまた光となって散り、剣は弾かれて転がり落ちる。
「終わりか?」
錬は冷徹につぶやいた。
一歩を踏み出すごとに兵士達がたじろぎ、後ずさる。攻撃がまったく効かない事に思考が追い付かず、恐怖は瞬く間に伝播していった。
「ありえん……! 一体どうなっておるのだ!?」
「答える義理はないな。それより皆、人質を救出しに行ってくれ」
「了解!」
錬の仲間達が駆け出した。
場所は教えていないはずだが、まるで事前に知っていたかのように迷わず地下牢を目指していく。
その中に熊獣人や猫獣人が混じっていた事に伯爵は戦慄した。
「そ、そうか……! 獣人どもは匂いや音に鋭敏で! お前達、あの獣人どもを殺せ! 何としてでもあやつらを止めよ!」
「かしこまりまし――ぐあっ!」
追いかけようとした兵士がばたばたと倒れた。
錬が魔弾をばら撒いたのだ。
「邪魔はさせないぞ?」
「くっ……エルト・ル・グローア・ウォーレス・ウィンダーレ!」
魔法兵二十人がかりで合唱し、百枚以上の防御障壁を展開する。
だが無尽蔵に撃ち込まれる魔弾はそれらすべてを紙くずのように打ち砕いていく。
「レン、大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫。こいつらは俺が相手するから早く皆を助けてやってくれ」
気楽そうに手をひらひらさせる錬。
伯爵はそれを目にして青筋を浮かべた。
「一人で我らを相手する……だと……!?」
「そうだよ。お前らじゃ俺は倒せない。悔しかったらやり返してみせろ」
「ぐ……ぬ……ッ!! あまり舐めた口を叩くでないぞ小僧!」
伯爵は腰の剣を抜き放った。
ただの剣ではない。刀身は短く、柄と同程度の長さしかない。
けれど伯爵が魔力を込めた途端、刀身が伸びた。石の刀身が鋭き風と炎をまとい、刃を成す。
「それは?」
「ハーヴィン国王陛下より賜りし魔剣『グラマトの刃』である! 古の賢者グラマトの生み出せしこの三属性をまとう魔法具、さしもの貴様とて防げまいッ!」
「なるほど、三属性の魔剣か。見た目からすると火と風と土かな? 面白いけど水属性がないのは残念だな」
「ほざけぇぇぇ!!!!」
伯爵は魔剣を一閃、横薙ぎに振り抜いた。
けれど錬は倒れない。豪炎と竜巻をまとう石の刀身は光を散らして砕けたのだ。
一瞬呆気に取られたが、攻撃力を失ったわけではないと己を奮い立たせる。
「お、おのれぇぇ!!」
魔力を流して砕けた刀身を再生し、伯爵は再び斬撃を見舞う。幾度となく繰り出される剣閃はしかし、振るうごとに砂塵と化した。
錬はそれをただひたすら静観するのみで、回避どころか防御すらしない。
やがて魔剣の魔石が枯渇したのか炎と風は霧散し、刃は砂となった。
「そんな……ありえぬ……ッ」
「気が済んだか?」
錬は冷たい眼差しで伯爵を見下ろす。
その時、配下の一人が息せき切って兵舎より現れた。
「そこまでだ! 伯爵様から離れて武器を捨てよ!」
配下の男は犬獣人の女の首に刃をあてがい恫喝する。
それを見て、伯爵は笑みをこぼした。
「はーっはっは! どうやら形成は逆転したようであるな、小僧!」
「人質か。それを言うならあんたの息子もこっちの手にあるんだけど?」
「虚勢を張っても無駄だ。如何にノランがそちらの手にあろうと、今すぐどうこうできはしまい?」
「それができるんだけど……まぁいいや」
錬はため息を一つ、月夜の空を仰ぎ見た。
「ノーラさん。見張り台の下付近、兵舎前だ。頼む」
「かはっ……」
配下の男が前触れもなく倒れた。
人質の犬獣人は慌てて物陰に隠れる。目の前で起きた事が信じられず、伯爵は瞠目した。
「何だ!? 小僧、何をした!?」
「俺は何もしてないよ。まぁ、空から降ってきたとでも言っておこうかな」
錬は山の方を眺めて意味不明な事をのたまう。
そんな中、どこからか大勢の足音が聞こえてきた。
味方の兵士が来たのかと期待したが、姿を現したのはボロをまとった奴隷達。その中心に立つ白銀の王女を目にして、伯爵は敗北を悟った。
「レン、全員助けたよ!」
「だそうだ。大人しく降参しろ。あんたの負けだ」
「ぐ……ぅ……」
射殺さんばかりに錬を睨み付け、歯噛みする。
ダメ押しに銃口を突き付けられ、伯爵はついに膝を屈したのだった。
ルード=バエナルド伯爵は取り乱していた。
魔石エンジンを解析し、錬が開発した魔石銃が魔石と火炎石で起きる爆発を兵器に応用したものと気付いて量産に成功したのが魔石砲である。
その威力は凄まじく、少々の障壁魔法なら一撃で粉砕する破壊力を誇っていたはずだ。
ならばその魔石砲を雨あられのように撃ち込まれて平然としている錬は、一体何者なのか?
考えている間も錬は歩いてくる。土の魔弾で兵士どもを蹴散らし、吹き飛ばす。
「ええい、とにかく撃て! 魔石がカラになるまで撃ちまくれぃ!」
伯爵の掛け声で兵士達が砲門のレバーを引いた。
指向性の爆炎が怒涛のごとく降り注ぐが、魔法障壁によりことごとく消滅していく。
「いくら撃っても効かないぞ!?」
「一体何枚障壁を張っているんだ!?」
「も、もしやあやつには火属性魔法への耐性のようなものがあるのやもしれぬ! 他の属性で攻めよ!」
「はっ!」
魔法兵が詠唱し、風や土、水の槍やつぶて、衝撃波などが飛ばされる。
それだけではない。様々な属性が付与された剣で兵士達が一斉に斬りかかった。袈裟斬り、両断、横薙ぎ、ありとあらゆる角度から斬り、突き刺し、果ては魔法剣を投擲する。
だがそれらもまた光となって散り、剣は弾かれて転がり落ちる。
「終わりか?」
錬は冷徹につぶやいた。
一歩を踏み出すごとに兵士達がたじろぎ、後ずさる。攻撃がまったく効かない事に思考が追い付かず、恐怖は瞬く間に伝播していった。
「ありえん……! 一体どうなっておるのだ!?」
「答える義理はないな。それより皆、人質を救出しに行ってくれ」
「了解!」
錬の仲間達が駆け出した。
場所は教えていないはずだが、まるで事前に知っていたかのように迷わず地下牢を目指していく。
その中に熊獣人や猫獣人が混じっていた事に伯爵は戦慄した。
「そ、そうか……! 獣人どもは匂いや音に鋭敏で! お前達、あの獣人どもを殺せ! 何としてでもあやつらを止めよ!」
「かしこまりまし――ぐあっ!」
追いかけようとした兵士がばたばたと倒れた。
錬が魔弾をばら撒いたのだ。
「邪魔はさせないぞ?」
「くっ……エルト・ル・グローア・ウォーレス・ウィンダーレ!」
魔法兵二十人がかりで合唱し、百枚以上の防御障壁を展開する。
だが無尽蔵に撃ち込まれる魔弾はそれらすべてを紙くずのように打ち砕いていく。
「レン、大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫。こいつらは俺が相手するから早く皆を助けてやってくれ」
気楽そうに手をひらひらさせる錬。
伯爵はそれを目にして青筋を浮かべた。
「一人で我らを相手する……だと……!?」
「そうだよ。お前らじゃ俺は倒せない。悔しかったらやり返してみせろ」
「ぐ……ぬ……ッ!! あまり舐めた口を叩くでないぞ小僧!」
伯爵は腰の剣を抜き放った。
ただの剣ではない。刀身は短く、柄と同程度の長さしかない。
けれど伯爵が魔力を込めた途端、刀身が伸びた。石の刀身が鋭き風と炎をまとい、刃を成す。
「それは?」
「ハーヴィン国王陛下より賜りし魔剣『グラマトの刃』である! 古の賢者グラマトの生み出せしこの三属性をまとう魔法具、さしもの貴様とて防げまいッ!」
「なるほど、三属性の魔剣か。見た目からすると火と風と土かな? 面白いけど水属性がないのは残念だな」
「ほざけぇぇぇ!!!!」
伯爵は魔剣を一閃、横薙ぎに振り抜いた。
けれど錬は倒れない。豪炎と竜巻をまとう石の刀身は光を散らして砕けたのだ。
一瞬呆気に取られたが、攻撃力を失ったわけではないと己を奮い立たせる。
「お、おのれぇぇ!!」
魔力を流して砕けた刀身を再生し、伯爵は再び斬撃を見舞う。幾度となく繰り出される剣閃はしかし、振るうごとに砂塵と化した。
錬はそれをただひたすら静観するのみで、回避どころか防御すらしない。
やがて魔剣の魔石が枯渇したのか炎と風は霧散し、刃は砂となった。
「そんな……ありえぬ……ッ」
「気が済んだか?」
錬は冷たい眼差しで伯爵を見下ろす。
その時、配下の一人が息せき切って兵舎より現れた。
「そこまでだ! 伯爵様から離れて武器を捨てよ!」
配下の男は犬獣人の女の首に刃をあてがい恫喝する。
それを見て、伯爵は笑みをこぼした。
「はーっはっは! どうやら形成は逆転したようであるな、小僧!」
「人質か。それを言うならあんたの息子もこっちの手にあるんだけど?」
「虚勢を張っても無駄だ。如何にノランがそちらの手にあろうと、今すぐどうこうできはしまい?」
「それができるんだけど……まぁいいや」
錬はため息を一つ、月夜の空を仰ぎ見た。
「ノーラさん。見張り台の下付近、兵舎前だ。頼む」
「かはっ……」
配下の男が前触れもなく倒れた。
人質の犬獣人は慌てて物陰に隠れる。目の前で起きた事が信じられず、伯爵は瞠目した。
「何だ!? 小僧、何をした!?」
「俺は何もしてないよ。まぁ、空から降ってきたとでも言っておこうかな」
錬は山の方を眺めて意味不明な事をのたまう。
そんな中、どこからか大勢の足音が聞こえてきた。
味方の兵士が来たのかと期待したが、姿を現したのはボロをまとった奴隷達。その中心に立つ白銀の王女を目にして、伯爵は敗北を悟った。
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