エンジニア転生 ~転生先もブラックだったので現代知識を駆使して最強賢者に上り詰めて奴隷制度をぶっ潰します~

えいちだ

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第五章

97:究極兵器

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 魔石鉱山の制圧からおよそ二週間。

 テラミスやエスリに軍を動かしてもらい、トランシーバーで連携しながら王都への街道をすべて封鎖した。

 王都へ向かう隊商については、こちらの指示に従うなら商品をすべて相場の倍額で買い上げる事にしている。歯向かえば捕縛だ。

 これにより王都では食糧が不足し、治安が悪化しているらしい。王都から出ていく場合のみ通行を許した事で、王都を脱出する人々が日に日に増えていっている。

 だがハーヴィンは当然これを座視せず、黒竜を従えた魔獣部隊を繰り出す事で街道の支配権を巡り小競り合いが起きているようだ。

「――報告は以上だよ、レン」

 ジエットが言い、後ろに立つローズベル公爵軍の兵達が敬礼する。

「なるほど、大体想定通りだな」

 広げられた地図を見ながら錬は首肯した。

 その背後ではギコギコと木材を切る音や、出力を絞った魔石銃の火花の音が絶え間なく響いている。作業をしているのはスロウ爺さんやベルドら解放奴隷で、数十人が忙しなく動いていた。

 ここはハストン城の一画である。

 兵舎の一つを改装し、魔石銃や狙撃銃、自動車などを量産するための工場に仕立てたのだ。

「これからどうする? 今のところハーヴィンお兄様は王都から出て来てないけど」

「街道を封鎖し続ければいずれは出て来ざるを得ないよ。ここは我慢比べになるな」

「でも……ハーヴィンお兄様自身が動いた場合、大丈夫かな……?」

 ジエットは不安げにうつむいた。

 ハーヴィンが動けばファラガの笛を使われる可能性がある。

 その前に狙撃部隊で仕留めてもらう算段だが、狙撃の経験者などもちろんいないし、訓練する時間もほとんどなかった。

 ぶっつけ本番でどこまでやれるかは未知数である以上、失敗した場合を想定すべきだろう。だから直接戦闘する部隊も用意しておかなければならない。

 しかしファラガの笛への対抗手段がない以上、その部隊はほぼ決死隊になる。その事に彼女は思うところがあるようだ。

「それでしたら我らがやりましょう!」

 ローズベル公爵軍の兵士が叫んだ。

「ジエッタニア様と王国の未来のためならこの命、惜しくありません!」

「ぜひ我らにお任せを!」

 奮起する彼らをしかし、錬は制す。

「待った待った。皆さんの心意気はありがたいですが、仲間を失うのは極力避けたい」

 テラミスと手を組んだとはいえ、頭数はハーヴィン側の方が圧倒的に多い。それなのに人的資源を無駄遣いしていては敗戦まっしぐらだ。

「しかし誰かがやらねばならぬのであれば……」

「そう、誰かがやらないといけない。だから俺は今こいつを作ってるんです」

 錬は今しがた作っていたものに手を乗せた。

 四つの車輪で車体を支え、改良した魔石砲を一門備えている。

「魔石砲を積んだ自動車?」

「そうだけど、少し違う。こいつは無人機だ」

「ムジンキ……?」

 結晶貨による風魔法を使えばトランシーバーを作る事ができる。

 ゾルダート伯爵領の砦からこの魔石鉱山まではかなりの距離があるが、それでも通話ができる程度の強度で風魔法による信号が届いている。

 ならば可能なはずだ。遠隔操作できる無人機が。

「まぁ無人機って言ってもラジコンカーみたいなもんだけどな。とにかく有視界から遠隔操作して、移動と攻撃ができる無人の兵隊だ」

「……よくわからないけど、伝承にあるゴーレムみたいなもの?」

「そんなもんかな。ひとまず動かせるところまできたから実演してみよう」

 錬は基板剥き出しのリモコンを取り、レバーを倒す。すると無人機の魔石エンジンが火花を散らして車輪を回した。

「なんと……! 大賢者殿はゴーレムを作る英知までお持ちとは!?」

「まさに究極の兵器ですな!」

 兵士達は歓声を上げた。

「良ければ操縦してみます?」

「よ、よろしいので……?」

「誰かがやらないといけない事ですから」

 にっこり笑って言うと、兵士達は我こそはと手を挙げた。

「私がやりましょう!」

「いやオレだ! ぜひオレにやらせてください!」

「ずるいぞお前ら!」

「仲良くやってくださいね……?」

 苦笑する錬など気にも留めず、彼らはリモコンを奪い合いながら無人機を走らせる。まるで新しいおもちゃを奪い合う兄弟のようである。

(ゴーレムか……。そういやテラミスが持ってた宝玉も似たようなものなのかもな)

 エムトハの魔術師なる王家の秘宝は、その辺の岩を操っていた。人や竜を形作る仕組みはよくわからないが、遠隔操作という点だけを見れば同じような構造かもしれない。

 ともあれこの無人機と魔光石センサーによるトラップを駆使すれば、戦死する者を極力抑えつつ戦う事ができるだろう。

 あるいはあえて撃たせる事で、ファラガの笛の弱点などを探る事もできるかもしれない。

 そんな事を考えていると、不意にジエットのトランシーバーがノイズを放った。一言二言受け答えをし、ジエットの表情に緊張が走る。

「ジエット? どうした?」

「……エスリ先生からだよ。ハーヴィンお兄様が動いたって」



 ***



 その少し前の時間。

 エスリは三十騎ほどの竜騎兵を率いて王都へ続く街道の一つを封鎖していた。

「騎士様、何とか通しちゃくれんですかねぇ?」

「ダメだ。何人なんぴとたりとも王都へ行かせぬようにとの命だからな」

「どうすりゃあええんじゃ……果物が腐っちまうよ」

 行商の男が竜車の荷を見て嘆息する。

「安心なさい。荷物はすべて買い取らせていただくわ。相場の倍の値でね」

「……あんたは?」

「わたくしはローズベル公爵家のエスリという者よ」

「公爵家……ってぇと大貴族様でねぇか!? こりゃあ大変な失礼を……へへ」

 行商は目玉が飛び出るほど驚き、急に揉み手を始めた。調子の良い男である。

 そうして買い取り契約の手形を渡し、行商をローズベル公爵領へ向かわせる。

 伝令が来たのはそんな時だ。

「エスリ様! 敵が動きました!」

「また変異種の地竜かしら? 飽きないわね」

「いえ! 敵はハーヴィン王太子殿下です!」

「!」

 これまで魔獣部隊との小競り合いばかりだったが、ついに本腰を入れて潰しにかかったようだ。

「狙撃部隊に通達! 各員、作戦通り一撃離脱しながらハーヴィン王太子殿下を狙撃なさい!」

「そ、それが……敵の進軍速度が予想外に速く、狙撃はすでに始まっておりまして……」

「どういう事?」

 狙撃が始まったのなら、ハーヴィンは倒れていなければならないはずだ。なのに終わったという報告がない。

(……まさか失敗したというの?)

 狙撃部隊は十名もいる。何度かミスをする前提で作戦を立案しているし、エスリの率いる部隊に支給された狙撃銃はすべて二属性や三属性のもの。少々外れても魔法障壁ごと吹き飛ばす威力があるはずだ。

 伝令は歯切れ悪く口ごもり、震える声で告げた。

「さ、三属性の魔法が……ハーヴィン王太子殿下にはまったく効かないようです……!」
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