召喚勇者の俺が剣聖かラスボスを敵に回した時の生還法を述べよ。ただし俺はレベル1とする!

えいちだ

文字の大きさ
14 / 29
第二章

14:リリ

しおりを挟む
「リリさんが四天王グラミー……?」
 衝撃の発言に俺は目を剥いた。
 それは言われた当人であるリリも同じなようだ。
「な、何を言ってるんですか……? 私はこの街の住人で……」
「いいえ、それは違います。あなたにゾンビにされたとゾンビ達も言っています!」
「ゾンビが……? どういう事です?」
「ラーティは死者の霊と会話ができるんだとさ」
 俺が補足すると、リリは憤慨した様子で声を荒らげた。
「そんなのいくらでも嘘をつけるじゃないですか!」
 まぁそうだな。リリの言う通り嘘はいくらでもつける。
 しかし言われてみればいくらかの不自然さを感じられるのも確かだ。
 何の荷物も持たず一人で森の中を逃げていたというのも変だし、ゾンビに襲われたのも俺達が通りがかったまさにその時。
 しかも俺はすぐに助けに行かず、ラーティと会話していたほどなのに、リリは囲まれていたゾンビに傷ひとつ付けられてなかった。
 そういう事もあるかもしれないが、演出と言われたら納得してしまうほどの完璧なタイミングだ。
 ラーティは犯人を追い詰める名探偵のごとく睨みを利かせ、聖杖を地に打ち付けた。
「確かに死霊も嘘はつけます。ですが、これだけ多くの者達が口を揃えて一斉に訴えているのですよ」
「だったらラーティさんが嘘をついてるんじゃないですか!?」
「ただの村娘であるあなたにそんな事をする意味は?」
「それは……っ」
 リリの表情が苦々しげに歪んだ。
 思えば俺達がこの世界に召喚された時、レイマール王国を襲撃していたのは死霊だった。
 であれば死霊使いグラミーは、俺と邪帝王が交わした取引について知っていてもおかしくない。そういえばリリはこの街には行くなと必死に引き留めようとしてたな。
「もしかして襲撃中のロドニスの街から俺達を遠ざけるために、ゾンビに襲われている振りをして接触し、ロドニス出身と嘘をついて引き留めようとしたのか?」
「……はぁ、バレちゃしょうがねぇ」
 リリ――改めグラミーはフードを払って顔を晒した。
 そしてゾンビから骨でできた大鎌を生成し、肩に担いで見せる。さながら死神のようだ。
「そうだよ。アタシが邪帝王軍四天王の一人、死霊使いグラミー様だ!」
「口調が変わったな。今までの仕草は全部演技だったって事か」
「そういうこった。かよわい薄幸の美少女の演技はなかなかのもんだったろ?」
「美少女って自分で言っちゃうんだ……」
 いやまぁ顔だけは可愛いけどさぁ。
「でもなぜだ? どうして人間の君が人間を滅ぼそうとする?」
「はぁ~? 魔人も知らねぇのか……ってそうか。異世界の勇者なら知るわけねぇな。アタシは人間じゃねぇ。魔に与する亜人種とでも思っとけ」
 面倒さそうにガシガシと髪をかき乱すグラミー。
「本当はてめぇらを監視しろって邪帝王様に言われてたんだけど、台無しだぜ。どうしてくれんだ」
「別に台無しでもないだろ。今からでも監視すればいい」
「そうはいかねぇ。邪帝王様にはこうも言われてんだ。『この街にいる人間を一人残らず滅ぼせ。例外はない』ってなぁ!」
 グラミーが大鎌を振り上げた瞬間、地面が隆起した。
「うおぉぉぉなんだ!?」
 飛び退いた俺の足元から腐乱したゾンビが石畳を押し退けて姿を現す。
 それだけじゃない。周囲も同じように手が生え頭が生えの地獄絵図だった。その総数、ざっと見て万に届くかもしれない。
「この街の住民の大半がゾンビになったっつー事はよぉ、そいつらを感染させた兵隊がいるって事だよなぁ? せっかくアタシが助けてやろうとしたってのに、バカな奴らだぜ!」
 ゾンビの神輿に乗り、グラミーは高らかに笑う。
「まぁ安心しろ、てめぇらの死は無駄にしねぇ。アタシのコレクションに加えて遊んでやっからよォ!」
 黒い津波のようにゾンビ軍団が押し寄せる。
「う、うわぁぁぁぁっ!? この数は無理無理無理だって!」
「聖なる守護神アルデム様、不浄なる敵から我らをお守りください――ホーリーシェル!」
 ラーティの神聖術が発動したのとまさに同時にゾンビどもが結界に貼り付いた。
「何とか間に合いましたね」
「し、死ぬかと思った……!」
 とはいえ別に状況が好転したわけでもない。四方すべての結界表面にゾンビが貼り付いており、逃げ道などまったくない。
「……どうしましょう?」
「どうって、何か使えそうな魔法ないの?」
「使えそうな神聖術が結界だったのです。それに神聖力も残りわずか。使えば使うほどイサム様のゾンビ化も近付きますが……」
 八方塞がりか。でも諦めるわけにはいかない!
「しょうがない。千里の道も一歩から、だ。結界越しに斬りまくってやる!」
 前列のゾンビどもを聖剣で八つ裂きにする。
 くそったれ、斬っても斬っても後ろからゾンビが湧いてきて終わる気がしねぇ!
「はぁっ……はぁっ……! 体力が保たないぞこれ! どうすりゃいいんだ!?」
 疲労困憊で聖剣を振るっていた、その時。
「グオォォォォッ!!」
 一際大きな鳴き声を上げ、一体のベルベルゾンビが駆け寄ってきた。
 体格差で他のゾンビを蹴散らし、一直線に俺達のもとへ走ってくる。
「アレクサンダー! 生きてたのか!?」
「イサム様、ゾンビは死んでます」
「いやそうだけどさぁ! そういう事じゃなくてさぁ!」
 ゾンビを踏み潰しながら結界のすぐそばまで駆け寄るアレクサンダー。
 モフモフだった体は毛が毟られ、右の目玉はこぼれ落ち、肋骨が見えている。
「変わり果てた姿になってかわいそうに……」
 俺が伸ばそうとした手を、けれどアレクサンダーの牙がガチンとかすめた。
「グオォォォォ!」
「ふぁっ!?」
 結界表面に必死に噛みつき、よだれを撒き散らす。
「アレクサンダー!? よせ、俺だ! ストップ! どうどう! ハウス!」
「グルォォォォォォ!!」
「ひぇぇっ!?」
 全然言う事聞かねぇ! どうしてしまったんだアレクサンダー!
 それを見てグラミーが口角を持ち上げた。
「あぁ、さっきのベルベルゾンビか。そいつならアタシのコレクションに加えてやったぜ?」
 助けに来たのかと思ったら敵かよ!?
 いや……違う! これはまさか、そういう事なのか!?
 突如として舞い降りた閃きに俺は震えた。
「ラーティ、回復魔法は使えるな?」
「癒やしの神聖術なら使えますが、しかし使えばゾンビ化が……」
「それはもういい! 今が使い時だ、いくぞ!」
 俺は聖剣を手放し――結界越しにアレクサンダーへ噛み付いた。
「イサム様!?」
「グオォォォ!!」
「いってぇ! こんにゃろっ!」
 アレクサンダーも俺の右肩に噛み付いたが、戦闘不能になるほどじゃない。
「ギャハッ! ゾンビに噛み付くとかおもしれぇなお前! そのまま食いちぎられちまえ!」
 グラミーの嘲笑が遠くから聞こえる。
 だがその直後、アレクサンダーは俺から離れた。
「あん? アタシは離れろなんて命令してねぇぞ? さっさと食い殺せ!」
「敵ゾンビどもに一噛みして回れ!」
 命令を受けてアレクサンダーが動いた。
 俺を背にして結界の周りにいるゾンビを一噛みして回る。
 すると噛まれたゾンビもまた周りのゾンビに噛み付く。それが連鎖的に広がっていった。
「どうなってやがる!? なんでゾンビどもがアタシに逆らう!?」
「わからないなら教えてやるよ」
 俺は精一杯かっこいいポーズを決めてやった。
「これが俺の死霊術感染スキルだ。こいつは将棋みたいなもんなんだよ!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...