召喚勇者の俺が剣聖かラスボスを敵に回した時の生還法を述べよ。ただし俺はレベル1とする!

えいちだ

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第三章

26:大脱出

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 脱獄した後、俺達は地上を目指す事にした。
 セリムの話によれば、ファーライト光国は統治機構である大神殿を中心に、放射状に建物が並んでいるそうだ。
 国家運営に関連する建物ほど中心に近く、また統治する者達もその辺りを住居としているらしい。
 まずはそこにいる法王へ会いに行く。
「でもそう簡単に法王さんのいる場所へ行けるでしょうか?」
 ラーティの心配はもっともだ。
 俺達はいまや脱獄囚。見つかればその場で処刑もあり得るし、それに抵抗すればするほどこちらの心象が悪くなっていく。
「こっそり行くしかないな」
 物陰から覗き込む俺。
 入り口のところには衛兵が二人立っていた。
「ここを通らないと外には出られない。どうする?」
「殺りましょう」
「待て」
「ひゃんっ!?」
 俺が襟首をつかむと、ラーティが跳ねた。
「な、何をするのですかイサム様!?」
「いきなり物騒な事を言うな。あと声がでかい」
「声は……申し訳ありません。ですが先ほどの兵士は魔物だったのです。見張りも魔物と考えるべきでは」
「その理屈だとこの国の人間を皆殺しにしなきゃなんねぇよ!?」
「僕が陽動を引き受けるというのはどうだ?」
 セリムが剣に手をかけるが、俺は首を横に振って応えた。
「あんたが行っちゃったら申し開きできなくなるだろ。俺達は偽剣聖の仲間容疑をかけられてんだぞ」
「ならばどうする?」
「何かで気を引く事ができればな……」
 考えていると、アレクサンダーが前足で肩をチョイチョイとつついてきた。
「どうした?」
「グオッ」
「自分が陽動になると言っていますね」
 ラーティの通訳で、視線の定まらない目でアレクサンダーがうなずいた。
「ここは彼女の提案に乗ってみてはどうでしょう」
「大丈夫なのか?」
「少なくともわたくし達が行くよりは良いと思います」
 ラーティのやつ、妙にグイグイ来るな。まぁそこまで言うならやってみるのも手か。
「じゃあアレクサンダー、陽動を頼む。適当なところで衛兵を撒いたら隠れててくれ」
「グオッ!」
 出口目掛けて駆け出すアレクサンダー。
「な……ベルベルゾンビっ!?」
「なぜ地下牢から!?」
 衛兵達が慌てふためく。
 よし、気を取られてるな。後は追いかけてくれたらその隙に脱出だ。
 しかし衛兵達は慌てただけで、追う気配はない。
「食い付かないな」
「もう一回やってみましょう。我らが守護神アルデム様。今一度異界の扉を開き、我らの欲するものをお与えください――サモンゲート!」
 虚空より光が集まり、目の前に再びアレクサンダーが現れた。
「グオ……?」
 混乱するアレクサンダー。
 ラーティは地下牢入り口を指差す。
「アレクサンダーさん、向かう先はあちらです。イサム様の命令はまだ有効ですよ」
「グオッ!」
 首肯を一つ、尻を振りながら走っていく。
「ま、またベルベルゾンビが……!?」
「何がどうなっている!?」
 慌てる衛兵達だが、やっぱり動かない。
「だめじゃねぇか」
「動くまでやってみましょう」
 ラーティが召喚で呼び戻しまくり、そのたびアレクサンダーを走らせる。
 まさに奇跡の大安売りだ。神様をそんなにこき使って大丈夫なんだろうか?
「なぜ地下牢から大量のベルベルゾンビが!?」
「一体何匹出て来るんだ!?」
 案の定、泡を食った様子の衛兵達。
 だが彼らがアレクサンダーを追う事はなく、むしろ不審の目は地下牢へ向いた。
「牢で何が起きているんだ……?」
「少し様子を見て来よう」
 警戒した様子で衛兵達が地下牢の入口を覗き込んでくる。
「まずいぞ、イサム殿!」
「全然だめじゃねぇか!」
「とにかく隠れましょう」
「アァ~……」
 急いで物陰の壁に張り付く俺達。
 しかし暗がりで隠れているはずなのに、なぜか俺と目が合った。
「何者だ!?」
「やばい、バレた!?」
 衛兵達は剣を抜き、入り口から睨んでくる。
「奴ら、一体どうやって脱獄した……?」
「やむを得ん、全員始末する!」
 物騒な会話の直後、衛兵達がメキメキと音を立ててカマキリ人間に変身したのだった。
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